ファン・デル・プール「ジョナタン・ミランを倒すのは不可能だ」

「不可能」とまで言わせたミランの圧倒的スプリント

クリテリウム・デュ・ドーフィネ第2ステージは、フランス中部の美しい町イソワールへと向かう平坦基調のコース。しかし、その中には細かなアップダウンが散りばめられており、純粋なスプリンターにとっては厳しい展開も予想されました。最終的には集団スプリントに持ち込まれたこのステージで、輝きを放ったのがLidl-Trekのジョナタン・ミランです。

彼は圧倒的な加速力でライバルたちをねじ伏せ、見事ステージ優勝を飾るとともに、ボーナスタイムにより総合リーダーのイエロージャージまで獲得しました。この勝利は、単なるステージ優勝以上の意味を持つと言えるでしょう。

そして、この日のレース後、衝撃的なコメントを残したのは、スプリントで3位に入ったマチュー・ファンデルプールでした。彼は「最終的に私の仕事はポジショニング争いだったが、このようなスプリントでは、ミランのような選手を倒すのは私にとって不可能だと思う」と語ったのです。「彼は世界で最も速い選手の一人だ。だから、この3位という結果には満足できる」と。

ファンデルプールといえば、シクロクロス、ロードレース、MTBとあらゆる分野で頂点を極める「怪物」であり、そのスプリント能力も世界トップクラスです。そんな彼が、特定の選手を「不可能」とまで評するのは異例中の異例。これは、ジョナタン・ミランのスプリントが、現在のロードレース界において、いかに絶対的な領域に達しているかを物語る言葉ではないでしょうか。フレッド・ライトが2位に入ったものの、ミランの抜きんでた強さが浮き彫りになった瞬間でした。

Lidl-Trekの「神アシスト」が勝利を呼んだ

ジョナタン・ミランの勝利は、彼の個人的な能力だけでなく、Lidl-Trekチーム全体の「神アシスト」なくしては語れません。ファンデルプール自身も「彼らのチーム全体が、彼をメイン集団に戻すためにペースを緩めた。彼らにとって難しい状況になることは分かっていたが、彼らは最終スプリントを不可避なものにするために、本当に素晴らしい仕事をしたと思う」と、Lidl-Trekのチームワークを称賛しています。

実は、この日のレース中盤、ミランは登りで苦しみ、一時メイン集団から遅れそうになる場面がありました。しかし、Lidl-Trekのチームメイトたちは、まるでミランを背負うかのように献身的に彼を引き戻し、最終局面まで完璧にリードアウトを行いました。まるで絵に描いたようなチームプレイ。彼らがどれだけミランに勝利を掴ませたかったか、その執念が伝わってくるようでした。

Lidl-Trekの公式X（旧Twitter）でも、「Yellow suits you, Mr. Milan!」と、イエロージャージを着たミランの姿とともに喜びを爆発させていましたね。チームの結束力と、エースへの揺るぎない信頼が、この日の勝利を確かなものにしたのです。

苦しみ抜いたミラン、そしてその先に見据えるもの

一方、勝利したジョナタン・ミランも、決して楽な道のりではなかったことを明かしています。「今日は本当に苦しんだ。ある時点で遅れそうになり、本当に限界だった。でも、チームメイトに感謝しなければならない。彼らが私を引き戻し、最後の数メートルまで導いてくれたからだ」と、疲労困憊の表情で語りました。

驚くべきことに、ミランにとってこのドーフィネは、4月のパリ～ルーベで101位に終わって以来、久々のレースでした。コンディションが万全ではない中でのこの勝利は、彼のポテンシャルの高さと、レース勘の鋭さを示しています。彼自身も「私たちの目標は、ここに来てフィジカルコンディションを改善し続け、良い結果を出すことだった」と語っており、この勝利はツール・ド・フランスへ向けての大きな弾みとなることでしょう。

次なるスプリントキングは誰だ？ ツール・ド・フランスへの序章

マチュー・ファンデルプールが「不可能」とまで言わしめたジョナタン・ミランの強さは、今年のツール・ド・フランスのスプリント戦線に大きな波紋を投じることでしょう。ドーフィネはツールの前哨戦であり、ここで見せたミランのパフォーマンスは、他のスプリンターたちにとって脅威以外の何物でもありません。

ツールでは、ワウト・ファンアールトやマーク・カヴェンディッシュ、ヤスパー・フィリプセンなど、そうそうたるスプリンターたちが覇権を争います。その中で、ジョナタン・ミランがどれほどの存在感を示すのか、そしてマチュー・ファンデルプールは、彼の言葉通り「不可能」を覆す策を見出すのか。

このクリテリウム・デュ・ドーフィネで見せた熱戦は、まさに夏のグランツールに向けた序章。今後のスプリント対決から、目が離せませんね！