ミケル・ランダのもう一つの不運 ブロックハウスからアルバニアまで

ミケル・ランダ、またしても… 不運に取り憑かれたクライマーの物語

2025年のジロ・デ・イタリアが開幕しました。アルバニアのティラナを舞台とした記念すべき第一ステージ。しかし、レース終盤に起こった落車により、スペインのクライマー、ミケル・ランダ（Bahrain-Victorious）が早くも大会を去ることになりました。まさに、彼のキャリアを象徴するかのような、あまりにも痛ましい出来事でした。

ランダの才能は誰もが認めるところです。山岳での圧倒的な登坂力、観客を熱狂させる予測不能なアタック。グランツールで彼が仕掛けるたびに、「ランダ、ランダ！」と声援が飛ぶ光景は、ヨーロッパ各地で幾度となく見てきました。しかし、その輝きは常に不運という見えない壁に阻まれてきた感があります。今回のジロ開幕ステージでの落車も、その不運の連鎖の最新エピソードと言えるでしょう。一体なぜ、彼はこれほどまでに不運なのでしょうか。

才能を阻む見えない壁

バスク出身のクライマー、ミケル・ランダは、その華麗な登坂スタイルとアグレッシブな走りから、多くのファンを魅了してきました。特に、頂上フィニッシュが設定された山岳ステージでの彼のパフォーマンスは圧巻で、何度も総合優勝候補の一角に挙げられてきました。

しかし、彼のキャリアを語る上で避けて通れないのが、度重なる落車や体調不良です。あと一歩で栄光に手が届きそうになる度に、不運が襲いかかる。まるで、レースの神様が彼の才能を試しているかのようです。今回のジロでのリタイアも、チームの絶対的なエースとして臨んだ大会だけに、その無念さは想像に難くありません。彼の才能を知る者としては、「またか…」という溜息とともに、胸が締め付けられる思いです。

ブロックハウス、クラシカ、そしてアルバニア… 不運の歴史

ミケル・ランダの不運エピソードは枚挙にいとまがありません。彼のグランツール初挑戦となった2011年のジロ・デ・イタリアでは、第7ステージの下りで落車しリタイア。同年にはムルシア一周とクリテリウム・デュ・ドーフィネでも落車し、立て続けに右鎖骨を骨折しています。特にドーフィネでの落車は、放牧されていた牛がコースに侵入したという、何ともシュールで不運なものでした。

総合上位を狙えた2016年のジロでは、胃腸炎でリタイア。そして記憶に新しいファンも多いであろう2017年のジロ、ブロックハウスへの上り手前で起きた警察バイクに起因する集団落車では、ゲラント・トーマスやアダム・イェーツら有力選手と共に巻き込まれ、総合優勝の望みを絶たれています。

その後も、2018年のクラシカ・サンセバスチャンでの落車による椎骨骨折でブエルタ欠場、2019年のチャレンジ・マヨルカでの集団落車による鎖骨骨折（キャリア3度目）、同年のツール・ド・フランスでのワレン・バルギルとの接触によるタイムロスなど、主要なレースで常に不運に見舞われてきました。

そして、2021年のジロ・デ・イタリア、ゴールまで残り4km地点での落車。これも総合争いから脱落する痛恨の出来事でした。さらに、今年の春のツール・ド・バスクでは、ヴィンゲゴー、ログリッチ、エヴェネプールといったトップ選手たちが軒並み落車する大規模な事故が発生しましたが、ここでもミケル・ランダは巻き込まれ、病院送りとなっています。

そして今回の2025年ジロ・デ・イタリア、ティラナでの開幕ステージ。ゴールまでわずか5kmという地点での落車でした。チームからの発表によると、「安定型胸椎11番椎骨骨折」とのこと。深刻な怪我ではありますが、安定型であるという点が不幸中の幸いでしょうか。

不屈の魂と、再びペダルを踏む日まで

これほどまでに多くの不運に見舞われながらも、ミケル・ランダは常にトップレベルで戦い続けています。その不屈の精神力には頭が下がる思いです。バスクの熱狂的なファンに支えられ、そしてチーム（Bahrain-Victorious）のサポートを受けながら、彼は何度も怪我から立ち上がり、再びペロトンに戻ってきました。

思えば、近年はトップ選手たちが大規模な落車に巻き込まれるケースが非常に多いように感じます。今年のツール・ド・バスクもそうでしたし、他のレースでも有力選手の落車をよく見かけます。ロードレースという競技の危険性を改めて痛感させられますね。

今回の怪我で、ランダが再びレースに戻ってくるまでには、ある程度の時間が必要になるでしょう。しかし、これまでの彼のキャリアを見れば、必ずまたペダルを踏む姿を見せてくれると信じています。イタリアの山岳、フランスのピレネーやアルプス、そしてスペインの激坂で、再びあのミケル・ランダのアタックが見られる日を心待ちにしています。頑張れ、ランダ！