ランダ、最後のジロで表彰台「戻る必要あった」

ミケル・ランダ、最後のジロにかける熱き想い

グランツール、特にジロ・デ・イタリアで何度もファンを熱狂させてきたミケル・ランダが、特別な想いを胸に再びイタリアの地へ戻ってきました。彼にとってジロは、2015年にアスタナの一員としてアルベルト・コンタドールのアシストを務めながらも、自らの力を証明し総合3位、そしてファビオ・アルの総合2位を支える活躍を見せた、まさに「グランツールライダーとしてブレイクしたレース」です。その後も彼はジロで常に存在感を示し、2022年には再び総合3位表彰台に上っています。

今回、MARCAのインタビューで彼はこう語っています。「このジロに戻ってくる時が来たんだ。何年も出ていなかったしね。最後に出た時は表彰台（2022年）に上がれた。今戻らなければ、もしかしたら2026年では遅すぎるかもしれない」。この言葉には、35歳という年齢を迎え、キャリアの終盤を意識し始めたランダの、ジロへの特別な、そして切実な感情が込められているように感じます。

ジロへの回帰、そして総合へのこだわり

なぜ、このタイミングでジロなのか？ランダは「グランツールライダーとして爆発したレースだから、戻るたびに笑顔になれる」と語っています。もちろん、そこには苦しい瞬間もあっただろうと彼は付け加えます。しかし、ジロが持つ情熱的な雰囲気や、イタリアという国のレースへの特別な感情は、彼にとって何物にも代えがたい魅力なのでしょう。

そして、スーダル・クイックステップのリーダーとしてジロに臨む彼は、ステージ優勝ではなく、あくまで総合争いにこだわると明言しています。「チームは総合を狙えるライダーを必要としている。最初から調子が良ければ、いつも通り総合を狙いに行くよ」。落車や体調不良など、何かが起きれば戦略を変える可能性はあるとしつつも、現時点では「このレースで他のことをする気にはなれない」と語る彼の言葉からは、キャリアの集大成として再びジロの表彰台に立ちたいという強い意志がひしひしと伝わってきます。

強靭なメンタルとジロの波乱

ランダをよく知る人々は、彼の最大の強みとして「頭」、つまりメンタル面の強さを挙げます。彼はこれについて「自分でもそう思う時がある。これだけ長い間、このレベルで戦い続けられているのは、誰よりも多くの『打撃』に耐えられるからかもしれない」と分析しています。確かに、グランツールで何度もエースとしての重圧や不運に見舞われながらも、常にトップクラスで戦い続けてきた彼の精神力は驚異的です。

そして、ジロといえば予測不能な展開。「サプライズがあるかもしれない」とランダも指摘しています。「ジロはいつも気まぐれだ。最初の1週間は誰かがリードしていても、2週目には別の選手が台頭し、最終週に勝負を決める選手が現れる」。特に今年のジロは序盤から難易度の高いステージが設定されており、番狂わせが起きる可能性は十分にあります。

スペインの若手エース、フアン・アユソへの期待も大きいようです。ランダはアユソについて「一歩成長した」と感じており、「責任を負い、レースを破壊する力がある」と評価しています。アユソがコンタドール以来となるスペイン勢のグランツール総合優勝を果たす可能性について問われると、「そうなれば素晴らしい。フアンにとっても、スペインの自転車界にとっても大きなチャンスだ」と語り、後輩へのエールを送っています。

過去のレジェンドと「ランダーニ」の愛称

ランダは、自身に影響を与えたイタリアのレジェンドとして、ヴィンチェンツォ・ニバリの名前を挙げています。テレビで見たパンターニや、それ以前のコッピといった伝説的な選手たちもいる中で、「ヴィンチェンツォは最も印象に残っている一人だ。最も強いわけでも、最も優れたわけでもなくとも、全く異なるタイプのレースで勝利を収めることができた。非常に特別な選手だ」と、ニバリのオールラウンドな才能と勝負強さに感銘を受けているようです。

また、ランダは自宅でローラー練習をする際に、過去のレース映像を見るのが好きだというトリビアを披露しています。特に何度も見返しているのは、インデュラインがアプリカでキアプッチに敗れた伝説的なステージだとか。「あのステージは、パンターニもいて、インデュラインとキアプッチ、そして他の多くの選手が絡むスペクタクルだった」。確かに、あの日のレースは今見ても鳥肌ものですね。そして、彼のクライミング能力と攻撃的なスタイルからつけられた「ランダーニ」という愛称については、「誇りに思っているよ。彼（パンターニ）のように飛ぶように速く登れないのは残念だけどね」と笑って答えています。この愛称には、イタリアのファンからの愛情と、彼への期待が込められているのでしょう。

ビッグネームとの共存と未来への展望

ポガチャルやヴィンゲゴーといった「ビッグシックス」と呼ばれる新世代のスターたちと同じ時代に戦うことについて、ランダは「誇りに思う」と語っています。「彼らは少し自転車競技を変えている世代だ。勝利を奪われることもあるけれど、彼らは時代を作るだろう」。強豪との戦いをポジティブに捉える姿勢は、彼が長年トップレベルで活躍できる秘訣かもしれません。

今年のジロの後、ランダはツール・ド・フランスにも出場する予定ですが、そちらではレムコ・エヴェネプールのアシストに回るとのこと。これは、彼のキャリアの優先順位が、チームへの貢献と、おそらくジロでの総合争いに集中していることを示唆しています。ラ・ブエルタ・ア・エスパーニャには今のところ出場予定はないそうで、「来年はさらに年を取るし、周りももっとプレッシャーをかけてくるだろうから、今年がグランツールで表彰台に上がる最後のチャンスかもしれない」と改めてその思いを語っています。

長年の経験と強靭なメンタル、そしてジロへの特別な愛情を胸に、ミケル・ランダは再びイタリアの難コースに挑みます。彼が「最後のチャンス」と位置づけるこのジロで、どんな走りを見せてくれるのか。そして、フアン・アユソをはじめとするライバルたちとの戦いはどうなるのか。今年のジロ・デ・イタリアから、片時も目が離せませんね！