モルティローロが試すデル・トロの首位

モルティローロが示す「ピンク」の行方：デルトロの疲労、そしてライバルたちの牙

ジロ・デ・イタリアの総合争いは、まさに混沌の極みへと突入しました。前日の第16ステージ、サン・ヴァレンティーノの地獄のような激坂が、ピンクジャージの行方を大きく揺るがしたのです。あの日の興奮と緊張は、現地にいた私でさえ鳥肌が立つほどでした。何より印象的だったのは、若きリーダー、イサーク・デルトロが示した明らかな疲労と、それとは対照的にリチャル・カラパスが見せつけた圧倒的な力強さ。そして、総合上位の選手たちが次々とその牙を剥き出しにしたことです。

イサーク・デルトロは、確かにピンクジャージを守り切りました。しかし、その表情からは深い疲労感が読み取れました。ゴールラインを越えた直後の彼の眼差しは、勝利の喜びよりも、むしろ安堵と、そしてこれから待ち受ける戦いへの不安が入り混じっているように見えたのです。一方、フアン・アユソはまさかの失速。スペインの期待を背負う彼にとっては、非常に厳しい一日となりました。さらに、プリモシュ・ログラックは3度目の落車に見舞われ、無念のリタイア。これには多くのファンが「そうだったのか！」と驚きと悲しみを覚えたことでしょう。彼の不運は、今大会の総合争いをさらに複雑にしましたね。

伝説の山、モルティローロの再来：優しき顔と隠された牙

そして、本日。ジロの歴史を語る上で欠かせない伝説の峠、モルティローロが再び選手たちの行く手を阻みます。今回は「最も優しき」と称される北側からのアプローチとはいえ、その牙は決して侮れません。12.6kmにわたる平均勾配7.6%、最大勾配16%の道は、疲弊した選手たちの脚に容赦なく襲いかかります。

モルティローロの頂上はゴールまで50km以上も残されています。通常であれば、ここでのアタックは時期尚早と判断されがちです。しかし、前日のリチャル・カラパスやアダム・イェーツ、そしてエガン・ベルナルといったクライマーたちの「攻めの姿勢」を目の当たりにした今、彼らがこの象徴的な峠で何もしないはずがありません。「へぇ～、頂上から遠いのに、それでもアタックするのか！」と、日本のファンもきっと驚くはずです。彼らは、イサーク・デルトロのわずかな弱みを見逃すまいと、虎視眈々とチャンスを狙っている。そんな気迫が、現地メディアの報道からもひしひしと伝わってきます。

リーダー、イサーク・デルトロの胸中：守り抜く覚悟と戦略

「精神状態はいつも同じだ。守りに入ることがあるかもしれないし、攻撃的になることもあるだろう。ピンクジャージを守るために、全力を尽くすつもりだ。当然、ローマまで戦い続ける。素晴らしいチームがあるし、脚があろうとなかろうと、リードを守るためにすべてを出し切る」

これは、サン・ヴァレンティーノでの激闘後、イサーク・デルトロが語った言葉です。彼の声のトーンは、疲労を隠しきれないものの、確固たる決意に満ちていました。「疲れているけれど、持てるエネルギーを考えれば、これ以上はできなかった」と正直に吐露するあたりに、彼の若さと、そして並々ならぬ覚悟が感じられます。

「トップ4の選手たちは皆、非常に危険だ。それぞれ異なるスタイルを持つ選手ばかりだからね。気をつけなければならない。彼らは本当に危険だ」

この言葉は、彼がどれだけライバルたちの動向を警戒しているかを示しています。彼のチーム、UAEチームエミレーツ・XRGは、この状況をどう乗り切るのか。デルトロが「偉大なチーム」と語る彼らの戦術が、今日のステージの鍵を握るでしょう。なるほど、このコメントの裏には、チームへの絶大な信頼と、自身の役割を全うしようとする強い意志が隠されているのです。

モルティローロだけじゃない！隠れた難所と総合争いの行方

今日のステージは、モルティローロだけが注目されるわけではありません。その前に待ち受けるトナーレ峠（15.2km、平均勾配6%）もまた、選手たちの体力を確実に削り取るでしょう。そして、ステージの終盤には3級山岳のル・モッテ（12.6km、平均勾配7.6%）が待ち構えています。ボルミオのスキーリゾートへと続くフィニッシュラインまで、155kmという比較的短い距離ながら、その凝縮された山岳プロフィールは、まさに「ミニ・グランツール」と言えるほどです。

過去のジロ・デ・イタリアでは、このような短くも厳しい山岳ステージで、総合争いが一気に動くことが多々ありました。今日のステージも、クリスティアン・スカローニがフィリッポ・フォルトゥナートから勝利を奪ったサン・ヴァレンティーノのように、ドラマチックな展開が期待されます。デルトロがピンクジャージを守り切れるのか、それともリチャル・カラパスやアダム・イェーツ、あるいは他のダークホースが動くのか。

今日の戦いが、ジロの終盤を決定づける

このモルティローロを含む山岳ステージは、ジロ・デ・イタリアの総合優勝争いを決定づける重要な一日となるでしょう。疲労困憊の選手たちにとって、精神力とチームのサポートが何よりも試される日です。私は、彼らの表情や走りから、次の展開を予見しようと努めています。

この戦いを終えた時、ピンクジャージの持ち主は誰になっているのか？そして、そのジャージの色は、最終日のローマまで守り切られるのか？今日のステージを制する者が、最終的な勝者へと一歩近づくのは間違いありません。さあ、日本のサイクリングファンの皆さん、息をのむような今日の戦いから目を離さないでください！次もまた、最新の現場の空気をお伝えします。