ジロ2025：UAEチーム・XRG、アユソ失速を予期せず
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総合3位からまさかの失速、その舞台裏
第16ステージ前、フアン・アユソは総合3位につけ、ロンド・ローザ（マリア・ローザ）を狙う若手エースとして、その走りに大きな期待が寄せられていました。彼が22歳という若さでグランツールを戦い抜く姿は、多くのファンを魅了していたはずです。しかし、この日のサン・ヴァレンティーノへと向かう203kmのコース、特に最後の難関であるサンタ・バルバラ峠（平均勾配8.3%の12.7km）が、彼にとって文字通り「ワタールー」、つまり決定的な敗北の地となってしまったのです。
サンタ・バルバラ峠の急勾配で、アユソのペダルが突如重くなり始めました。集団からずるずると後退し、最終的にはステージ優勝者から約15分もの大差をつけられてフィニッシュ。この結果、総合順位は17位へと大きく後退し、総合優勝争いから事実上脱落することになりました。現地メディアも、この突然の失速に驚きを隠せず、様々な憶測が飛び交いました。
チームが語る「予期せぬ不調」の真実
フィニッシュ後、アユソ本人からのコメントは得られませんでしたが、チーム関係者たちはその原因について口を開きました。まず、チーム監督のファビオ・バルダートは、彼の膝に抱えていた問題に言及しました。「フアンは最高の状態ではなかったのは確かだ」とバルダート監督は述べ、「シエナへのグラベルステージでの落車で負った小さな傷が膝にあり、それが彼を苦しめていた」と明かしました。
さらに、休息日明けのレースでのアユソのパフォーマンスについては、チームも懸念を抱いていたようです。「彼が休息日後に苦戦することがあるのは認識していたが、これほどまでにタイムを失うとは予想していなかった」とバルダート監督は肩をすくめました。「どうしようもない。悪い日は悪い日なんだ」――この言葉には、グランツールを戦い抜く厳しさと、エースであっても避けられない不調への諦めがにじみ出ていました。
チームマネージャーのマウロ・ジャネッティも同様のコメントをしています。「彼はステージの序盤から調子が悪かった。寒い天候にも苦しんでいたようだ。そして、サンタ・バルバラでついに集団についていけなくなった」と語り、「それが現実だ」と付け加えました。チーム全体が、アユソのこの突然の失速に困惑していた様子が窺えます。
UAEチームエミレーツ・XRGの戦略と、イサーク・デルトロ Toroへの期待
アユソの失速はチームにとって大きな痛手であることは間違いありません。しかし、UAEチームエミレーツ・XRGは、ただ手をこまねいているわけではありません。ジャネッティGMは、アユソの失速にもかかわらず、チームがまだ総合首位の座をイサーク・デルトロ Toroが守っていることを強調しました。「しかし、我々はまだイサーク・デルトロ Toroを擁して首位に立っている。今後数日で何が起こるか見てみよう」と、前向きな姿勢を見せています。
デルトロは、今大会で素晴らしいパフォーマンスを見せ、アユソの不調を補って余りある走りを見せています。総合順位表を見ても、2位のSimon Yates（チーム ヴィスマ・リースアバイク）に26秒差、3位のリチャル・カラパス（EFエデュケーション・イージーポスト）に31秒差と、依然として僅差ではあるものの、ロンド・ローザを死守しています。アユソの失速により、UAEチームエミレーツ・XRGの戦略は完全にデルトロを中心としたものに切り替わることでしょう。チームは、残りの山岳ステージで彼を全力でサポートし、栄光のロンド・ローザを守り抜こうとするはずです。
グランツールを戦い抜く難しさ：過去の事例と今後の展望
フアン・アユソの今回の失速は、グランツールにおける「バッドデイ（悪い日）」の典型とも言えるでしょう。どんなに準備を重ねた選手でも、3週間にわたる過酷なレースの中では、体調やコンディションが思わぬ形で崩れることがあります。過去にも、総合優勝候補が突然失速し、レースを去るか、あるいはアシストに回るという光景は度々見られてきました。これは、単なる肉体的な疲労だけでなく、精神的なプレッシャー、さらには天候の変化や過去の怪我の影響など、様々な要素が複雑に絡み合って起こる現象なのです。
さて、ジロ・デ・イタリアはまだ終わっていません。第17ステージは、伝説のモルティローロ峠を含む、さらに厳しい山岳ステージが待ち受けています。UAEチームエミレーツ・XRGは、イサーク・デルトロ Toroを擁してロンド・ローザを守り切れるのでしょうか。そして、フアン・アユソは今回の挫折から立ち直り、チームのために献身的な走りを見せるのか、あるいは再び輝きを取り戻すことができるのか。
RIDE Magazineの最新号では、タデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴー、それぞれのチームがツール・ド・フランスに向けてどのようにエースを準備させているかという、グランツールにおけるエースの育成と管理の深淵に迫るインタビューが掲載されています。今回のフアン・アユソの件は、まさにそのグランツールを戦い抜くことの難しさを改めて浮き彫りにしたと言えるでしょう。
残りのステージ、デルトロがロンド・ローザを守り切るのか、それともSimon Yatesやリチャル・カラパスといった経験豊富なクライマーたちが逆転を果たすのか。アユソの失速が、今後の総合争いをさらに混沌とさせることは間違いありません。引き続き、この激動のジロ・デ・イタリアから目が離せませんね！
