ニキ・テルプストラ、アンバウンド・グラベルを棄権：「不快感が耐え難く」

長きにわたる苦痛：4月の落車が引き起こした「耐え難い痛み」

アンバウンド・グラベルは、アメリカ・カンザス州のフリントヒルズを舞台に繰り広げられる、まさにサバイバルレースです。数百キロに及ぶ未舗装路は、ライダーの肉体と精神を極限まで追い詰めます。そんな過酷な舞台で、ニキ・テルプストラは無念の途中棄権（DNF）を喫しました。彼は自身のInstagramでその詳細を語っています。

「グラベル・ロコスとアンバウンドへの旅から、私たちは帰ってきた。友人たちとのツーリングを心から楽しんだし、そして何より、私たちが最も愛する、真剣に自転車でレースをして、その合間に大いに楽しむということを満喫したよ」と、テルプストラは旅の始まりを振り返ります。しかし、競技面では彼にとって苦しいものとなりました。「ここ数週間、私は自転車に乗ると首と肩にひどい痛みを抱えているんだ。4月の落車が原因でね。自転車に乗ることはできるが、快適ではない。長く乗れば乗るほど、痛みが増していくんだ」。

この言葉を聞いて、私は思わず「なるほど！」と膝を打ちました。クラシックレースで「ロンド・ファン・フラーンデレン」や「パリ～ルーベ」といった難関レースを制してきたテルプストラが、途中でレースを諦めるという選択をしたのです。その裏には、想像を絶する痛みが存在したに違いありません。フリントヒルズの荒れた路面は、首や肩への負担をさらに増幅させたことでしょう。200キロ以上を走り、耐え難い痛みが襲った時点で、彼は2番目の給水所でレースを終える決断を下しました。プロフェッショナルとしての判断、そして何よりも自身の体を守るための賢明な選択だったと言えるでしょう。

DNFのその先へ：仲間たちの活躍に喜びを見出すレジェンドの眼差し

レースを途中棄権するということは、選手にとって非常に悔しい瞬間であることは想像に難くありません。しかし、テルプストラはすぐにその失望を乗り越えました。彼の言葉からは、仲間たちの活躍を心から喜ぶ、温かい人間性が滲み出ていました。

「失望感は、オランダの旅仲間たちが素晴らしい走りを見せているのを見て、すぐに吹き飛んだよ」。彼の友人であるラモン・シンケダムとヤスパー・オッケローン（ともにレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ所属）がトップ10入りを果たし、ラウレンス・テン・ダム（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ）がXLレースで4位に食い込むなど、オランダ勢の活躍が目立ちました。そして何より、昨年の恐ろしい事故から見事に復帰し、再び競技の舞台で輝きを放ったイヴァール・スリック（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ）の姿には、テルプストラも特別な喜びを感じたことでしょう。

彼のこの言葉に、私は「へぇ～」と唸りました。自身の不調や悔しさを抱えながらも、仲間の成功を純粋に祝福できる。これこそが、長年トップレベルで戦い続けてきたベテラン選手ならではの、成熟したプロ意識と人間性の表れではないでしょうか。チームスポーツであるロードレースとは異なり、グラベルレースでは個人での戦いが色濃く出ますが、それでも彼らの間には確かな絆が存在していることが伝わってきます。

グラベルへの尽きぬ情熱：テキサスとカンザスでの「かけがえのない経験」

今回の棄権が、ニキ・テルプストラのグラベルレースへの情熱を冷ますことはありませんでした。むしろ、その逆です。彼はこう語っています。「今は回復に努め、再びレースに復帰できる日を待つ時間だ。体が許せば、もっと多くのグラベルレースに挑戦するのが待ちきれないよ。DNFという結果だったけれど、テキサスとカンザスへの旅は絶対に逃したくなかったね！」

この言葉に、私は「確かに！」と強く共感しました。近年、クラシックレースのスペシャリストたちがグラベルシーンに活躍の場を広げるケースが増えています。トム・デュムランもアンバウンド・グラベルに参戦し、「複雑な感情」を抱えて帰路についたと報じられました。また、つい先日、マリアンヌ・フォスがグラベル世界王者として初勝利を挙げたニュースも記憶に新しいですね。

テルプストラにとって、グラベルレースは単なる競技の場を超え、新たな挑戦であり、仲間との絆を深める旅でもあるのでしょう。彼の言葉からは、勝敗だけではない、自転車に乗る根源的な喜びや、新しい環境で得られる刺激への渇望が感じられます。彼のようなベテランが、これまでの輝かしいキャリアに安住せず、新たなフィールドで自分を試す姿は、私たちファンにとっても大きな感動を与えてくれます。

今後の展望：レジェンドの新たな挑戦は続く

ニキ・テルプストラの今回のアンバウンド・グラベルでの棄権は残念な結果に終わりましたが、彼のグラベルレースへの意欲は全く衰えていません。むしろ、一度味わったフリントヒルズの洗礼が、彼の挑戦心に火をつけたようにも見えます。

今後の彼のキャリアは、怪我からの回復が鍵となるでしょう。しかし、彼が「体が許せば」という条件付きながらも、次なるグラベルレースへの参戦を待ち望んでいることは明らかです。クラシックレースで培った経験と、グラベルで得た新たな視点が融合した時、ニキ・テルプストラは再び私たちを驚かせてくれるに違いありません。

皆さんは、このクラシック王者のグラベル挑戦をどう見守りますか？ 私は、彼の粘り強さと自転車への純粋な愛情が、必ずや彼を再び輝かしい舞台へと導くと信じています。彼の回復を祈りつつ、次なる報せを心待ちにしましょう。