主に自身の総合順位に集中？」ブランドン・マクナルティが批判に間接的に反論

チームの戦略と「個」の目標：マクナルティの真意

今大会のUAEチームエミレーツ・XRGは、強力なメンバーを揃えながらも、どこか「一枚岩ではない」という印象を与えたのは私だけではないでしょう。特に、イサーク・デルトロ Toroのアシストに徹するべきだったか、それとも自身の総合順位を追求すべきだったか、ブランドン・マクナルティ選手の役割には多くの批判の声が上がりました。彼自身も、総合9位という素晴らしい成績で初のグランツールTop10フィニッシュを果たしたにもかかわらず、その評価は複雑なものだったようです。

そんな中、マクナルティ選手は自身のInstagramで、「イサーク・デルトロ Toroのために走り、ピンクのジャージを守るために全力を尽くすのは本当に喜びだった。結果的に勝てなかったが、イサークは必ず戻ってくる！ 21日間ありがとう」と、まずはチームメイトへの感謝を表明しました。続けて、「個人的には、今回のジロをとても誇りに思っている。キャリアで初めて、3週間を通してチームに貢献できたと感じている。個人的な野望は持たずにスタートし、ただチームのリーダーたちにできるだけ近づこうと努めたんだ」と、自身の立場を説明しています。

そして、総合9位という結果については、「グランツールでトップ10に入ることは、僕にとって常に小さな目標だった。まさか達成できるとは思っていなかったよ」と、素直な喜びを語っています。このコメントが、一部の批判派からは「やはり自分の成績を意識していたではないか」と捉えられかねない。しかし、彼の言葉の裏には、プロの選手として、チームの目標達成と自身のポテンシャルを最大限に引き出すことの、絶妙なバランス感覚が見て取れます。確かに、トップ10フィニッシュは彼にとって大きな節目であり、その達成感を素直に表現したかったのでしょう。

揺れるUAEチームエミレーツ・XRG：アシストの難しさ

マクナルティ選手への批判は、UAEチームエミレーツ・XRGがジロで見せた戦術的なミスや、チームとしての連携不足に対するフラストレーションの現れでもあったと言えるでしょう。特に、第20ステージでのサイモン・イェーツの動きへの対応については、チーム監督のマウロ・ジャンネッティやファビオ・バルダートも反省の弁を述べています。バルダート監督は「最強で最も賢い者が勝った。後から分析し、判断を下すのは簡単だ」と語り、サイモン・イェーツを過小評価していたことを認めました。

また、イサーク・デルトロ Toroへの声援が不足していたという指摘も興味深い点です。リチャル・カラパスのようなグランツール覇者であれば、その経験と威厳から、チームメイトも自然と彼のために動く。しかし、まだ若いデルトロにとっては、チームからの絶対的な信頼と鼓舞が、あの極限状態ではより必要だったのかもしれません。チームの力学、ベテランと若手の関係性、そしてプレッシャー下での判断ミス。これらが複雑に絡み合い、ジロでのUAEチームエミレーツ・XRGの戦いを難しくしたのです。

アシスト選手にとって、チームの目標達成と自身のキャリアアップという二つのベクトルを両立させるのは至難の業です。特に、マクナルティ選手のように総合力が高く、自身もトップ10を狙えるほどの実力がある選手であれば、なおさらでしょう。チームの指示と、レース中の瞬時の判断、そして自身の身体能力との間で、常に葛藤があったに違いありません。

若き才能イサーク・デルトロ Toroの成長と未来

今回のジロは、イサーク・デルトロ Toroにとって、苦い経験と同時に、計り知れない成長の機会となったはずです。若くしてグランツールでピンクジャージを着用し、総合争いを繰り広げた経験は、彼を次のステージへと押し上げるでしょう。バルダート監督が「彼はまだとても若い」と語っているように、そのポテンシャルは計り知れません。

今回の経験は、デルトロだけでなく、彼を支えたチーム全体にとっても大きな教訓となったはずです。特に、プレッシャーのかかる最終盤での戦術判断や、リーダーへの精神的なサポートの重要性を再認識したことでしょう。グランツールを勝つためには、個々の選手の能力はもちろんのこと、チームが一体となって機能する「化学反応」が不可欠です。今回の「失敗」を糧に、デルトロが、そしてUAEチームエミレーツ・XRGがどのように進化していくのか、その未来が楽しみでなりませんね。

グランツールを巡るチームの力学と夏の「決戦」へ

今回のジロでの経験は、来るツール・ド・フランスに向けて、UAEチームエミレーツ・XRGに大きな影響を与えることでしょう。RIDE Magazineの「Zomergids 2025」では、マウロ・ジャンネッティ監督と、タデイ・ポガチャルやヨナス・ヴィンゲゴーを擁するチーム ヴィスマ・リースアバイクのティム・ヘームスケルク監督との対談が掲載されるとのこと。ジロでの課題をどう活かし、ツールでの「デュエル」に臨むのか、非常に興味深いですね。

ジロでのUAEチームエミレーツ・XRGの戦いは、グランツールにおけるチーム内の力学、特にアシストの役割がいかに複雑で重要かを改めて浮き彫りにしました。ワウト・ファンアールトのように、アシストとして驚異的なパフォーマンスを見せつつ、自身も記録を打ち立てる選手もいますが、それは稀有な例です。多くの選手にとって、そのバランスは常に試されるものなのです。

終わりに

ブランドン・マクナルティ選手のコメント、そしてチームの反省の言葉は、グランツールという舞台の奥深さ、そしてプロサイクリストが直面する葛藤の一端を示してくれました。彼らの言葉から、私は「なるほど！」と唸らされ、「そうだったのか！」と驚きを隠せませんでした。

ジロでの経験を糧に、UAEチームエミレーツ・XRGが夏のツール・ド・フランスでどのような戦いを見せるのか、そしてブランドン・マクナルティ選手が、サイモン・イェーツやリチャル・カラパスといった強敵との経験をどう血肉に変えていくのか。日本のサイクルロードレースファンの皆さん、今後の彼らの動向から目が離せませんね。私も引き続き、現地からの情報や、選手たちの声のトーンから、次の展開を予見できるよう努めていきたいと思います。次回の記事もどうぞお楽しみに！