エヴェネプール、ツールでランダ不在の不安明かす：「隣にいるだけで安心だった」

ドーフィネで露呈したチームの脆さ

先日のクリテリウム・デュ・ドーフィネでのレムコ・エヴェネプールの走りは、まさにジェットコースターのようでしたね。個人タイムトライアルでは圧倒的な強さを見せつけ、マイヨ・ジョーヌに袖を通したものの、山岳ステージに入ると状況は一変。ライバルたちのアタックについていけず、総合順位を大きく落としてしまいました。

しかし、私が注目したのは、彼自身のパフォーマンス以上に、チームAGインシュランス・スーダル チーム Quick-Stepのサポート体制でした。ベルギーの地元紙ヘット・ニーウズブラッドの取材に応じたディルク・デ・ウルフ氏の言葉は衝撃的でした。「雰囲気は最悪だ。彼は本当に怒っている」と。さらにデ・ウルフ氏は、ドーフィネの山岳ステージで「40人もの選手が先行する集団の中に、彼のチームメイトは一人もいなかった」と指摘しています。極めつけは、エヴェネプールが補給ステーションで自らボトルを受け取りに下がっていったシーン。エースが自ら補給を取りに行くというのは、グランツールを狙うチームとしてはあってはならない状況です。これは単なるアクシデントではなく、チームとしての機能不全を露呈した瞬間だったと言えるでしょう。

ミケル・ランダの「存在感」がもたらす安心感

AGインシュランス・スーダル チーム Quick-Stepが抱える問題の核心には、ミケル・ランダの負傷離脱が大きく影響していると私は見ています。デ・ウルフ氏も「昨年はランダがいた。彼のそばにいるだけで安心できた」と語るように、ランダは単なるアシスト以上の存在でした。彼は山岳での経験と、エースを支える献身性、そして何よりもその「存在感」でチームに安心感をもたらしていました。

グランツールを戦う上で、エースの隣に信頼できるアシストがいるかいないかは、精神的な支えとして非常に大きいものです。特にレムコ・エヴェネプールのような若きエースにとっては、経験豊富なランダの存在は計り知れないほど大きかったはずです。デ・ウルフ氏がイラン・ファンウィルデルには期待を寄せつつも、パレ・パントルに対して「フランス人選手がドーフィネで結果を出せないなら、悪い兆候だ」と手厳しい評価を下していることからも、チームの山岳アシスト陣への不安が伺えます。ランダの穴は、想像以上に深いのかもしれません。

ツール・ド・フランス2025への不安と期待

ツール・ド・フランス2025の開幕地リールまで、残すところ2週間を切りました。この短期間で、AGインシュランス・スーダル チーム Quick-Stepがドーフィネで露呈した課題をどこまで克服できるのか。レムコ・エヴェネプールの個人能力は疑いようがありませんが、グランツールはエース一人で勝てるほど甘くはありません。

ディルク・デ・ウルフ氏が「ドーフィネの再現は許されない」と語った言葉は、チーム全体への強いメッセージだと受け止めるべきでしょう。チームはエヴェネプールを真のエースとしてツールに送り出すために、残された時間で戦略を練り直し、彼の精神的な負担を軽減する体制を整える必要があります。ミケル・ランダの不在という大きなハンデを背負いながら、AGインシュランス・スーダル チーム Quick-Stepは今年のグラン・ブークルでどのような戦いを見せてくれるのでしょうか。レムコ・エヴェネプールが「孤独」を乗り越え、ツールで輝くことができるのか、日本のファンの皆さん、このドラマから目が離せませんね！