ポガチャル

ポガチャルの「復讐劇」とコンブルーの因縁

今回のクリテリウム・デュ・ドーフィネ第6ステージは、タデイ・ポガチャルにとって特別な意味を持つコースでした。フィニッシュ地点のコンブルーは、2023年のツール・ド・フランスでヨナス・ヴィンゲゴーとの個人タイムトライアルで大差をつけられ、総合優勝への望みが打ち砕かれた因縁の地。ドーフィネの個人タイムトライアルでもタイムを失い、決して良い感触ではなかったと伝えられていましたが、彼は「自分の得意な地形」のために力を温存していたのでしょう。まさにその通り、モン・サクソネックス、そして最後のドマンシーへの登りに入ると、ポガチャルはシートから立ち上がることなく、ライバルたちを置き去りにし始めました。この冷静かつ圧倒的なパワー。これこそが、彼が「サイクリング界の至宝」と呼ばれる所以です。初日から手放していたマイヨ・ジョーヌを、クイーンステージを前にして奪還するとは、まさに絵に描いたようなシナリオでした。

序盤の動きと有力チームの駆け引き

ステージ序盤からレースは活発に動きました。総合優勝を狙う選手たちが、タイムトライアルでの遅れを取り戻したいタデイ・ポガチャル、マイヨ・ジョーヌを維持したいレムコ・エヴェネプール、そして初めてのマイヨ・ジョーヌ獲得を目指すヨナス・ヴィンゲゴーと、それぞれの思惑が交錯していました。ロマン・バルデやアレックス・ボーダンといった選手たちが序盤から逃げを試みると宣言していた通り、レース開始からわずか2kmでマティュー・ファンデルプールがアタックを仕掛け、早くも集団を動かします。彼の積極性は、まさに「マイヨ・ヴェールの所有者」としての証でしょう。その後、ロマン・バルデ、アントニー・テュルジス、ブリュノ・アルミライユらを含む本格的な逃げ集団が形成されましたが、チーム ヴィスマ・リースアバイクとUAEチームエミレーツ・XRGは、その差を2分以内にコントロールし続け、有力選手たちの動きを警戒していました。

モン・サクソネックスでの激震

レースが大きく動いたのは、この日唯一のカテゴリー1級山岳であるモン・サクソネックスの登りでした。総合2位につけていたリポヴィッツのアタックが、有力選手たちに動くことを強要したのです。その猛烈なペースアップによって、レムコ・エヴェネプールはアシストを失い、ヨナス・ヴィンゲゴーはヨルゲンソンとトゥーレット、タデイ・ポガチャルはウェレンスという強力なアシスト陣に支えられながらも、それぞれが孤立していく様相を呈しました。逃げ集団からは、マイケル・レオナードとアレックス・ボーダンだけがこのペースに耐え、先頭を維持していました。しかし、その後の平坦区間では、各チームがクイーンステージに向けた最終決戦に備え、一度集団のペースを落とし、失われたアシストたちを回収する動きを見せました。この一瞬の静寂が、来るべき嵐の前の予兆だと私は感じていました。

ポガチャルの独壇場、そしてマイヨ・ジョーヌ奪還

ドマンシーへの登りに入ると、レースはまさにタデイ・ポガチャルの独壇場となりました。ウェレンスの強烈な牽引が、集団を完全に破壊。マイヨ・ジョーヌを着るレムコ・エヴェネプールは、このペースについていけずに後退します。そして、満を持してタデイ・ポガチャルがアタック！彼はまるでシートに吸い付いているかのように、ほとんど立ち上がることなく、驚異的なペースで坂を駆け上がっていきました。ヨナス・ヴィンゲゴーも一瞬追走を試みましたが、すぐにその差は開いていきます。ポガチャルは、単独で先頭を走っていたアレックス・ボーダンをあっという間に捕らえ、そのまま独走。コンブルーのフィニッシュラインを、まるで努力しているようには見えない表情で駆け抜けました。最終的に、ヨナス・ヴィンゲゴーには1分01秒、レムコ・エヴェネプールには1分50秒もの差をつけ、彼は再びマイヨ・ジョーヌをその身に纏いました。これには「なるほど！」と唸らされましたね。2023年のコンブルーでの苦い経験を、彼はこの日の勝利で完全に払拭したことでしょう。

クイーンステージとツール・ド・フランスへの視点

この日の勝利は、タデイ・ポガチャルがツール・ド・フランスに向けて最高の準備を整えていることを強く示唆しています。特に、2023年ツール・ド・フランスでの個人タイムトライアルでヴィンゲゴーに大敗を喫したコンブルーで、今度は彼を圧倒してみせたのは、精神的にも大きな意味を持つでしょう。 翌日は、今大会のクイーンステージ。さらなる山岳が選手たちを待ち受けています。ポガチャルがこの勢いを維持するのか、それともヴィンゲゴーやエヴェネプールが反撃の狼煙を上げるのか。特に、ヨナス・ヴィンゲゴーがタデイ・ポガチャルのペースについていけない様子は、Twitterでも大きな話題となっていましたね。「ヨナス・ヴィンゲゴーはタデイ・ポガチャルのペースについていけない！」という公式アカウントのツイートは、この日のレースを象徴するものでした。 今回のドーフィネは、ツール・ド・フランスの総合優勝争いを占う上で、極めて重要な試金石となるでしょう。ポガチャルの圧倒的なパフォーマンスは、今年のツール・ド・フランスが、彼を中心に回ることを予感させます。果たして、ライバルたちはこの「サイクリング界の王」を止めることができるのでしょうか？ 次のステージ、そして夏のツール・ド・フランスが、今から待ち遠しくてたまりませんね！