Marly Grav Race: ウェレンスがソロV、ウィーベス女子優勝

皆さん、こんにちは。グランツールを中心に、ヨーロッパのレースを追いかける山田健一です。今回は少し趣向を変えて、注目度が高まっているグラベルレース、特にオランダで開催されたUCIグラベルワールドシリーズの一戦、「Marly Grav Race」についてレポートをお届けします。

ティム・ウェレンスが圧勝！ Marly Grav Raceで魅せたUAE Emiratesの力

オランダのリンブルフ州、ファルケンブルフ周辺を舞台に開催されたMarly Grav Raceは、UCIグラベルワールドシリーズの重要な一戦であり、今年のグラベル世界選手権への予選も兼ねていました。この注目のレースで、ロードレース界のトップチームであるUAE Emiratesに所属するティム・ウェレンスが、圧倒的な強さを見せつけて優勝を飾りました。女子レースでも、SD Worx-Protimeのロレーナ・ウィーベスが勝利。ロードレースの世界で活躍する選手たちが、グラベルでもその実力を証明した一日となりました。

オランダの地で繰り広げられたグラベルバトル

Marly Grav Raceは、かつての有名なグラベルイベントであるLtD Gravel FestとGravel Fondo Limburgを引き継ぐ形で、今年から新たに開催されたイベントです。単なるレースだけでなく、サイクリングツーリングやバイクエキスポ、ワークショップなど、グラベルコミュニティ全体を楽しませる要素が盛り込まれていました。スタート地点はシマノ・エクスペリエンスセンターというのも興味深いですね。

コースはオンロード区間とグラベル区間が組み合わされ、特に有名なカウベルフ（Cauberg）や非常に急勾配のライクスウェフ（Lijksweg）といった、ロードレースファンにも馴染みのある激坂が含まれていました。レース前の試走を行ったTom Dumoulinも「思ったよりアスファルト区間が多いと感じたけれど、全体を走ってみるとやはり厳しいコースだ」と語っていたように、テクニックとパワーの両方が求められる設定だったと言えるでしょう。この種のコースは、ロードレースで培われた巡航力と、シクロクロス的なテクニックや爆発力が融合する、現代的なグラベルレースのトレンドを反映しています。

ティム・ウェレンスの圧倒的な走り

男子レースには、フロリアン・フェルミールスやJoris Nieuwenhuis、Filippo Concaといった実力者たちが顔を揃えました。特に注目は、ベルギーのベテラン、ティム・ウェレンスです。彼はUAE Emiratesの選手として、普段はワールドツアーのロードレースで活躍していますが、グラベルレースにも積極的に挑戦しています。

レース序盤、ウェレンスはJoris Nieuwenhuisらと共に先頭グループを形成しましたが、そこから驚異的な加速を見せ、単独で抜け出しました。彼のペダリングは力強く、グラベル区間でも全くペースが落ちません。まるでロードレースのクラシックレースを彷彿とさせるような、力任せのソロアタックでした。「これぞウェレンス！」と膝を打ったファンも多かったのではないでしょうか。

34歳というベテランの域に入りながら、ウェレンスは衰え知らずどころか、グラベルという新たなフィールドで輝きを増しているように見えます。彼は後続との差をみるみる広げ、最終的には2位のJoris Nieuwenhuisに1分以上の大差をつけてフィニッシュラインを駆け抜けました。3位には同じベルギーのKevin Panhuyzenが入り、ベルギー勢の強さも際立ちましたね。UCIワールドシリーズのレースで、これほどの差をつけて勝つというのは、彼のこの日のコンディションがどれだけ凄まじかったかを物語っています。

女子レースはロレーナ・ウィーベスが制す

男子レースの興奮冷めやらぬ中、女子レースも熱戦が繰り広げられました。こちらはSD Worx-Protimeのロレーナ・ウィーベスが優勝。彼女もまた、ロードレース、特にスプリントの世界では現役最強とも称される存在です。

女子レースには、同じくワールドツアーで活躍するクインティ・トンやイルゼ・プルイマースといった実力者が出場しており、最後まで緊迫した展開となったようです。最終的にウィーベスがこれらの強敵を抑えて勝利を掴みました。彼女のグラベル適性の高さも証明された形です。ロードのスピードスターがグラベルでも勝つというのは、グラベルレースの奥深さ、そしてトップアスリートの適応能力の高さを示していると言えるでしょう。

グラベルレースの広がりと今後の期待

Marly Grav Raceは、単なる一レースというだけでなく、グラベルサイクリングという文化そのものを盛り上げようという熱意が感じられるイベントでした。Shimano Experience Centerを拠点とした様々なアクティビティは、レースに出ないサイクリストも楽しめる素晴らしい試みです。

ロードレースのトップ選手たちが続々とグラベルレースに参戦し、好成績を収めている現状は、このカテゴリーのレベルが急速に向上していることを示しています。特にティム・ウェレンスのように、これまでロードレースのクラシックで活躍してきた選手が、グラベルの世界でもトップ争いを演じる姿は、多くのファンにとって新鮮な驚きであり、「なるほど！」と思わせる要素です。

今年のグラベル世界選手権に向けて、Marly Grav Raceのような予選レースは今後も各地で開催されます。ロードレースのシーズンが進むにつれて、グラベルレースにも注目が集まってくるはずです。ティム・ウェレンスやロレーナ・ウィーベスといった選手たちが、今年のグラベル世界選手権でどのような走りを見せるのか、今から非常に楽しみです。

グラベルレースはまだ歴史が浅いカテゴリーですが、その自由な雰囲気と、ロードレースやシクロクロスとはまた違った魅力で、着実にファンを増やしています。今後、どのようなスター選手が生まれ、どのようなドラマが生まれるのか。私も皆さんと一緒に、このエキサイティングな世界の展開を見守っていきたいと思います。