Bussi、4km記録も世界新！アワーレコードに続き快挙

衝撃！ 1週間でアワーレコードと4km個人追い抜き、女子トラック界に新たな歴史

メキシコ、アグアスカリエンテスの標高1880mに位置するベロドロームから、またしても驚くべきニュースが飛び込んできました。イタリアのヴィットリア・ブッシ選手が、女子4km個人追い抜き（インディビジュアルパシュート）の世界記録を更新したのです。5月16日（現地時間）に叩き出したタイムは4分23秒642。これは、今年2月にイギリスのアンナ・モリス選手がマンチェスターで記録した4分24秒060を上回る新記録です。

さらに驚くべきは、彼女がこの記録を更新するわずか1週間前、同じアグアスカリエンテスで女子アワーレコード（1時間で走った最長距離）も更新しているという事実です。50.455kmという新たな金字塔を打ち立てたばかりでの快挙。短期間にこれほど異なる、しかし極めて高い強度と集中力が要求される二つの記録に挑み、両方で世界最高を達成する。これは並大抵のことではありません。まるで自転車と身体が一体となり、空気抵抗すら味方につけたかのようなパフォーマンス。メカニックとして、その背景にある機材の準備や選手のコンディショニング、そしてチームのサポート体制に思いを馳せずにはいられません。

記録挑戦の聖地、アグアスカリエンテスと機材の囁き

アグアスカリエンテスは、その高標高ゆえに空気が薄く、空気抵抗が少ないことから、スピード記録挑戦の「聖地」として知られています。数々のアワーレコードやトラック記録がここで生まれてきました。ヴィットリア選手がこの地を選んだのは、まさに必然だったと言えるでしょう。しかし、高地は同時に身体への負担も大きい。酸素が薄い中で、極限のパフォーマンスを引き出すためには、緻密なトレーニング計画と、何よりも選手の強い意志が必要です。

そして、メカニックの視点から見れば、こうした記録挑戦は機材との対話そのものです。フレームの空力性能はもちろん、ホイール、タイヤの選択、空気圧の調整、さらにはウェアやヘルメットといったアパレルの微細な形状に至るまで、全てがコンマ1秒を削り出すために最適化されます。ベロドロームの滑らかな路面と、選手が発するパワーをいかにロスなく推進力に変えるか。使用された機材がどんな「声」を上げていたのか、想像するだけでワクワクしますね。おそらく、最高の状態に仕上げられた機材が、選手のペダリングに応えて「行けるぞ！」と囁いていたのではないでしょうか。

フィリッポ・ガンナに並ぶ偉業達成の重み

ヴィットリア・ブッシ選手が達成した、アワーレコードと4km個人追い抜き記録の同時保持。これは男子では、TTスペシャリストとして知られるフィリッポ・ガンナ選手が近年成し遂げた偉業と同じです。フィリッポ・ガンナ選手もまた、2022年にアワーレコードを更新し、それ以前から4km個人追い抜き記録を保持していました。

アワーレコードは60分間、4km個人追い抜きは4分強。競技時間は大きく異なりますが、どちらも単独で、空気抵抗と戦いながら、一定のペースで最高のパワーを出し続ける能力が問われます。特に4km個人追い抜きは、スタートから最高速に達し、その速度を維持しながらゴールまで加速し続ける、爆発力と持続力の両方が求められる種目です。これらの記録を同時に保持するということは、トラック中長距離における「単独走行の王」であることを証明するに他なりません。ロードレースのTTで活躍する選手が、こうしたトラック記録にも強い傾向があるのは、この「単独で速く走る」能力が共通しているからでしょう。ヴィットリア選手のこの記録は、彼女がロードレースのタイムトライアルでも恐るべき存在であることを改めて示しています。

次なる目標は？ 記録挑戦の舞台裏

ヴィットリア・ブッシ選手がなぜこの時期に、そして短期間に二つの記録に挑んだのか。背景には、おそらくパリ・オリンピックに向けた準備の一環や、スポンサー、チームからのサポートがあったことでしょう。こうした記録挑戦は、選手一人の力だけでは成し遂げられません。コーチ、メカニック、トレーナー、そして資金面での支援。多くの人々の力が結集して初めて可能となるのです。

今回の記録更新は、女子トラック競技、そしてタイムトライアルの世界に大きなインパクトを与えるはずです。特に、オリンピックイヤーにおいて、この記録は他の選手たちにとって大きなプレッシャーとなるでしょう。ヴィットリア選手がこの勢いをどのようにロードレースや今後のトラック競技に繋げていくのか、非常に楽しみです。彼女の挑戦はまだ始まったばかり。次にどんな「なるほど！」や「そうだったのか！」を私たちに見せてくれるのか、期待は膨らむばかりです。