ウィギンス衝撃告白：長年コカイン依存、息子は死を覚悟

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツールを中心に欧州のレースを追いかける山田健一です。

栄光の「バロネット」が明かした衝撃の真実 - ブラッドリー・ウィギンズの告白に言葉を失う

かつてツール・ド・フランスを制し、イギリス人として初めてその頂に立った「バロネット」、ブラッドリー・ウィギンズ。トラックとロードの両方で輝かしいキャリアを築き、オリンピックで計8個ものメダル（うち5個が金）を獲得したレジェンドが、彼の人生の「その後」について、あまりにも衝撃的な告白をしました。自伝『The Chain』からの抜粋として報じられたその内容は、彼の栄光のイメージとはかけ離れた、壮絶な苦悩に満ちたものでした。

「私はコカイン中毒者でした。どれほど中毒だったか、人々は想像もできないでしょう。何年も、ほとんどの時間、私はハイになっていました」

この言葉を読んで、私は思わず息を呑みました。現役時代、ストイックなまでの自己管理で知られたウィギンズが、引退後にこのような闇を抱えていたとは。彼の端正なルックスと、勝利後の飄々とした振る舞いの裏で、一体何が起きていたのでしょうか。

壮絶な依存症との戦い、息子が抱いた死の予感

ウィギンズが明かした依存症の深さは、想像を絶するものでした。彼は自らを「機能する中毒者（functional addict）」と表現しています。つまり、社会生活を送る上で一見普通に見えながらも、内面では薬物に深く依存していた状態です。

「息子は、私が翌朝には死んでいるだろうと確信していた瞬間が何度もありました」

この一文に、彼の苦悩の全てが集約されているように感じます。父親が薬物に溺れ、いつ命を落としてもおかしくない状況に息子が直面していた。これは、単なる個人的な問題ではなく、周囲の人々、特に家族にどれほど深い傷を与えていたかを示しています。彼はまた、自らの行動を「自傷行為」「自己破壊」と呼び、「自分がなりたい人間ではなかった」「多くの人を傷つけていた」と後悔の念を滲ませています。なぜ、これほどまでに自分を追い詰めてしまったのか。その根源にある痛みが、彼を薬物へと駆り立てたのかもしれません。

意外な人物からのサポート、そして依存症のメカニズム

驚くべきは、彼に手を差し伸べた人物の一人として、ランス・アームストロングの名前が挙げられていることです。ドーピング問題でその名誉を剥奪された元チャンピオンが、ウィギンズを心配し、連絡を取ろうとしていたというのです。ランスはかつて、同じように苦境に立たされたヤン・ウルリッヒにもサポートをしていたことが知られています。ここにも、サイクリング界の光と影、そして複雑な人間関係が見え隠れします。

ウィギンズは、ウノエックス・モビリティからの大きな助けがランス・アームストロングによるものだったと語っています。ランスはウィギンズの息子ベンとも連絡を取り、彼の居場所を尋ねていたそうです。ウィギンズは「何週間も連絡が取れないこともあった」と認め、当時の自分が「嘘の中で生きていた」と振り返ります。

彼はまた、自身の依存体質についても赤裸々に語っています。「私は中途半端ができない。ワインを一杯飲むだけでは済まない。飲めば、薬も買わなければならない」。この言葉は、依存症が単なる意志の弱さではなく、脳の機能や体質に深く根差した病であることを示唆しています。彼にとって薬物は、抱えていた「痛み」を和らげるための手段だったのかもしれません。

苦悩の先に光はあるか

輝かしい栄光のキャリアの裏で、これほどまでに深い闇を抱えていたブラッドリー・ウィギンズ。彼の告白は、多くのファンに衝撃を与えると同時に、アスリートのセカンドキャリアの難しさや、メンタルヘルスの重要性を改めて浮き彫りにしました。

彼は現在45歳。自伝の出版を機に、過去と向き合い、新たな人生を歩もうとしているのでしょう。ランス・アームストロングのような意外な人物からのサポートがあったことは、彼にとって大きな救いだったはずです。しかし、依存症からの回復は長い道のりです。彼がこの苦難を乗り越え、穏やかな日々を取り戻せるのか、今後も注意深く見守っていきたいと思います。そして、彼の告白が、同じように苦しむ人々の助けとなることを願ってやみません。