アレンスマン、グラベル戦の機材トラブルでがっかり「逃げ切れたのに」

ジロ激動のグラベル：アレンスマンを襲った無情の機材トラブル

山田 健一

イタリアの地で繰り広げられているジロ・デ・イタリアは、まさに毎日がドラマの連続だ。特に第9ステージ、トスカーナ地方の悪名高きグラベル（未舗装路）区間を含むこの日は、総合争いに大きな影響を与える激動の展開となった。その中で、私はある選手の無念さに胸を締め付けられる思いであった。イネオス・グレナディアーズのテイメン・アレンスマンである。

彼はこの日、総合上位進出へ向けて絶好のポジションにいた。チームメイトのエガン・ベルナル、ブランドン・リベラ、そしてUAEチームエミレーツ・XRGのイサーク・デルトロ、さらには最終的にステージ優勝を飾るワウト・ファンアールトといった強豪と共に、総合有力選手たちからリードを奪う先頭集団に食い込んでいたのだ。彼の表情からは、このチャンスをものにしようという強い意志が感じられた。まさに「脚があった」状態だったのである。

総合を狙える位置からの急転直下

グラベル区間でのイネオス・グレナディアーズの動きは実に見事であった。複数の選手を先頭集団に送り込み、総合リーダーチームであるUAEチームエミレーツ・XRGを揺さぶりにかかる。テイメン・アレンスマンもその中心にいて、このまま行けば総合で大きくタイムを縮められることは間違いなかった。彼のペダリングには力強さがあり、グラベルでのバイクコントロールも安定していた。イタリアの荒れた道で、オランダの若き才能が輝きを放つかに見えたその時、運命は無情な顔を見せた。

38km手前、襲いかかった不運

残り38km地点。総合争いにとってはまさに正念場、ここからさらにペースアップがかかるだろうというタイミングで、テイメン・アレンスマンのバイクにトラブルが発生した。彼のチェーンがディレイラーに挟まってしまったのだ。一瞬にして失速し、後続の集団に飲み込まれていく。チームメイトのベン・ターナーがバイクを差し出すも、その間に失ったタイムと、何よりも先頭集団から離脱してしまった精神的なダメージは計り知れない。彼の顔には、まさに「なぜ今なんだ」という落胆の色がはっきりと見て取れた。

アレンスマンの心境を読み解く

レース後、テイメン・アレンスマンは自身のインスタグラムでその心境を吐露している。「何という日だ！」「チェーンがディレイラーに挟まり、チームメイトの（ベン・ターナーの）バイクでフィニッシュしなければならなかったことに、本当にがっかりしている」。そして彼は続ける。「本当にがっかりだ。なぜなら、エガンと一緒にフィナーレまで逃げ切る脚が間違いなくあったと確信しているからだ」。この言葉からは、単なる機材トラブルへの不満だけでなく、掴みかけた大きなチャンスを逃したことへの強い無念さが伝わってくる。現地メディアのニュアンスを読み解けば、彼はこの日のためにしっかりと準備し、万全のコンディションで臨んでいたことが伺える。だからこそ、この不運は彼にとってあまりにも大きかっただろう。

激動のグラベルステージ、総合戦線への影響

このグラベルステージは、テイメン・アレンスマンにとって痛恨の結果となったが、レース全体としては非常に見応えのある展開だった。ワウト・ファンアールトが見事な復活勝利を飾り、UAEチームエミレーツ・XRGのイサーク・デルトロがマイヨローザを獲得。一方で、プリモシュ・ログリッチはタイムを失うなど、総合戦線は大きく変動した。テイメン・アレンスマンは最終的にステージ8位でフィニッシュしたが、総合タイムではトップから3分21秒差の13位に後退した。もしあのトラブルがなければ、彼は今頃総合上位に食い込んでいた可能性は非常に高い。

まだ終わらないジロ、巻き返しに期待

テイメン・アレンスマンはSNSの投稿を「とにかく、ジロはまだ長いし、たくさんのチャンスがある」という言葉で締めくくっている。その通りだ。ジロ・デ・イタリアはまだ始まったばかりであり、山岳ステージやタイムトライアルなど、彼が再び総合でタイムを縮めるチャンスはいくつもある。特に、彼本来の得意とするタイムトライアルが控えていることは大きな希望となるだろう。今回のグラベルでの不運を乗り越え、テイメン・アレンスマンが再び総合上位戦線に食い込んでくるのか、今後の彼の走りに注目したい。皆さんは、このテイメン・アレンスマンの不運について、そして今後のジロの展開についてどう思われますか？