ファンアールト、スプリント自信を問われ『良い質問』と笑顔

遥か彼方、地球の裏側で繰り広げられる熱き戦いを、今日もリアルタイムで追いかけています、松崎 愛です。17言語の情報をシャワーのように浴びながら、指先一つで世界中のレースを飛び回る日々。今回は、オランダの丘陵地帯へと視点を合わせます。そう、クラシックシーズン終盤を告げるあのレース、アムステルゴールドレースです。

今年のこのレースでクラシックシーズンを終えるというワウト・ファンアールト。彼の言葉から、最終戦へ懸ける特別な思いと、レースへの深い洞察が見えてきました。「良い質問」――彼の口から飛び出した、あの言葉の真意とは？

クラシック最終戦へ、ワウト・ファンアールトの覚悟

ブラバンツ・パイルで素晴らしい走りを見せ、レムコ・エヴェネプールに次ぐ2位表彰台を獲得したワウト・ファンアールト。その激戦からわずか2日後、彼はアムステルゴールドレースのスタートラインに立ちます。疲労は？コンディションは？誰もが気になるところでしょう。しかし、本人は至って冷静です。

「ブラバンツ・パイルは短かったけれど、とてもハードなレースだった。その前に静かな一週間を過ごしたんだ。良いアプローチだったと思うよ」

この言葉からは、綿密に計算された調整が見て取れます。ハードなレースで刺激を入れつつも、その前にはしっかりと休息を取り、アムステルゴールドレースへピークを持ってくる。チーム ヴィスマ・リースアバイクの戦略、そしてワウト・ファンアールト自身の経験値がなせる技でしょう。今シーズン、彼にとってクラシック最終戦となるこのレースで、全てを出し尽くすという強い決意がひしひしと伝わってきます。

コース変更の鍵、カウベルフ復活をどう見る？

今年の大きな注目点の一つが、フィニッシュ手前にカウベルフが復活したこと。アムステルゴールドレースの象徴とも言えるこの激坂が、再びレースのクライマックスを彩ります。選手たちはこの変更をどう捉えているのか？ワウト・ファンアールトはこう語りました。

「レース自体にとっては美しいことだね。カウベルフはこのレースのアイコンだから。終盤にまた登るという決定は、間違いなく理解できるよ」

彼の言葉には、一人のロードレースファンとしての感情も滲んでいるように感じます。しかし、自身の有利不利となると、話は別。「それが僕に有利に働くかどうかは、まだ分からない」と慎重な姿勢を見せました。

過去、アムステルゴールドレースは終盤のカウベルフをフィニッシュ直前に配置することで、スプリント勝負になりやすい展開を避けてきました。しかし、近年のレースでは、カウベルフがフィニッシュから離れても、より手前からアタック合戦が勃発し、レースは十分に「爆発」していました。ワウト・ファンアールトもその点に触れ、「フィナーレをより早く『爆発』させるために終盤を簡単にしていた時期もあったけど、今ではそれはもう必要ない。カウベルフがあろうとなかろうと…遠くから仕掛けられるだろうね」と分析。現代ロードレースの攻撃的なトレンドを見事に言い当てています。カウベルフ復活が、さらに早い段階でのアタックを誘発するのか、それともフィニッシュへ向かう最後のふるいとなるのか。彼のこの分析は、「なるほど！」と思わせる深い洞察ですね。

スプリントへの問いに「良い質問」？その真意は…

そして、記者から飛び出した「今日は自分のスプリントを信頼しているか？」という直球の質問に対し、ワウト・ファンアールトは大きな笑みを浮かべてこう答えました。

「良い質問だね」

この一言に、彼の全てが詰まっているような気がして、私は思わず唸ってしまいました。「へぇ～」、一体何を考えているんだろう？

ブラバンツ・パイルではレムコ・エヴェネプールとの一騎打ちとなり、スプリントで敗れました。彼の圧倒的なスプリント力をもってしても、レムコ・エヴェネプールの加速には及ばなかった。その直後のレースで「スプリントを信頼しているか」と問われる。普通なら「もちろん」と答えるか、あるいは言葉を濁すかでしょう。しかし、彼は「良い質問」と返したのです。

これは単なるユーモアなのか？それとも、ブラバンツ・パイルの結果を踏まえ、スプリント以外の勝ち筋も考えているということか？あるいは、チーム ヴィスマ・リースアバイクとして、彼のスプリント能力をどう活かすか、まだ戦略を練っている最中なのかもしれません。実際、チームのコメントとして「ワウト・ファンアールトのスプリントはアムステルゴールドレースの後に分析したい。まずはフィナーレを彩ることが先決だ」というものも入力情報に含まれていました。これは「確かに！」と膝を打つ情報です。つまり、スプリントはあくまで一つのオプションであり、まずはレースを動かし、主導権を握ることに集中する、ということでしょう。あの「良い質問」という言葉の裏には、「スプリントだけが僕の武器じゃないよ」「レース展開次第だよ」といった、いくつもの意味が隠されているように感じられます。

激戦必至の丘陵クラシック、注目選手は？

アムステルゴールドレースは、そのコースの特性上、様々なタイプの選手にチャンスがあります。レムコ・エヴェネプールは「距離が自分に有利に働く」と語り、タデイ・ポガチャルはレムコ・エヴェネプールについて「予想通りだった」と余裕のコメント。他にも、ブラバンツ・パイルで3位に入ったTomás アントニオ・モルガド、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ U23やクラシック・グラン・ブザンソン・ドゥーといった他のレースで活躍する若手やベテラン（ヤルノ・ヴィダル、セナ・レメイン、シモーネ・グアルディ、ギヨーム・マルタン、ホセ・マヌエル・ディアス・ガジェゴ、クレマン・ベルテなど）も、この難コースで虎視眈々とチャンスを狙っているはずです。

過去のデータを見ても、このレースは単なるスプリンターやクライマーだけでは勝てません。起伏をこなせる総合力、そして一瞬の判断力が問われます。チーム ヴィスマ・リースアバイクがワウト・ファンアールトのスプリントを「分析は後で」と言っていることからも、まずはレースを動かすこと、そしてその中で彼がどういう状況で勝負に持ち込むか、という点にフォーカスしているのが分かります。「そうだったのか！」と納得ですね。

アムステルゴールドレース、いよいよ開幕！

クラシックシーズンの締めくくり、アムステルゴールドレースがいよいよ始まります。ワウト・ファンアールトは、ブラバンツ・パイルでの走りに手応えを感じつつ、カウベルフ復活という新たな要素を含むコースにどう対応するのか。そして、彼のスプリントは、あの「良い質問」の答えとなるのか。

世界中が注目するオランダの丘陵決戦。ワウト・ファンアールトの走りはもちろん、チーム ヴィスマ・リースアバイクの戦略、そしてライバルたちの動きから一瞬たりとも目が離せません。次も読みたい！そう思っていただけるような、深い分析と人間ドラマを、これからもお届けしていきます。どうぞご期待ください！