チーム ヴィスマ・リースアバイクに警鐘：期待の選手が謎の疾患で離脱

若きベルギーの星、キアン・アイデブルックスを襲う「謎の症状」

キアン・アイデブルックスは、数シーズン前まで「ネクスト・エヴェネプール」とまで囁かれた、ベルギーが誇るクライミングの逸材です。2023年のブエルタ・ア・エスパーニャでは総合8位という輝かしい成績を収め、その将来性を世界に知らしめました。この時、私は現地で彼の走りを間近に見ていましたが、若さの中に秘めた確かな強さと、ステージを重ねるごとに成長していく姿に、多くの関係者が目を細めていたものです。

しかし、その後の彼のキャリアは順風満帆とはいきませんでした。昨年はジロ・デ・イタリア、そして再びブエルタ・ア・エスパーニャでも途中棄権を余儀なくされ、今シーズンも「脚のしびれ」という原因不明の症状に悩まされ続けていました。この症状は、単なる肉体的な疲労というよりも、神経系に起因する可能性も指摘されており、彼のパフォーマンスを著しく阻害していました。才能に恵まれながらも、その力をフルに発揮できない若き選手の苦悩は、想像に難くありません。

チーム ヴィスマ・リースアバイクが示す「長期的な視点」

そんなキアン・アイデブルックスの状況に対し、チーム ヴィスマ・リースアバイクは極めて慎重かつ、選手ファーストな対応を見せています。チームディレクターのリチャード・プラグ氏はベルギーの『ヘット・ラーツテ・ニウス』に対し、「昨年も背中の問題を抱えていた。今年も体の不調を訴え、完全に再出発するために数週間の休養を求めてきた」と語っています。そして、その後に続く彼の言葉が印象的でした。「我々はそれで良いと思っている。長期的に見れば、これは結果につながるだろう」。

この言葉に、チーム ヴィスマ・リースアバイクの揺るぎない育成哲学が凝縮されていると私は感じます。彼らは短期的な勝利だけでなく、選手の健康とキャリア全体を最優先するという明確なビジョンを持っている。同じチームのマシュー・ブレナンのように早期に頭角を現す選手がいる一方で、キアン・アイデブルックスのように時間をかけてケアが必要なケースもある。プラグ監督の「Building with him」（彼と共に築き続ける）という言葉は、単なる慰めではなく、彼の才能を信じ、未来への投資を惜しまないという強い決意の表れでしょう。

グランツール戦線と、未来への期待

キアン・アイデブルックスの無期限休養は、2025年のグランツール戦線、特にチーム ヴィスマ・リースアバイクの総合優勝戦略に影響を与えることは避けられないでしょう。彼らはヨナス・ヴィンゲゴーという絶対的なエースを擁していますが、プリモシュ・ログリッチがボーラ・ハンスグローエに移籍した今、層の厚さは非常に重要です。しかし、この決断は、彼が将来的に再びグランツールで輝くための、最も賢明な選択だと私は見ています。

過去にも、若くして燃え尽きてしまう選手や、原因不明の不調に苦しむ選手は少なくありませんでした。そうした中で、チーム ヴィスマ・リースアバイクが示したこの「長期的な視点」は、現代のプロサイクリング界における選手のケアのあり方に一石を投じるものとなるかもしれません。SNSでは彼の体調を心配する声が多数上がっており、その注目度の高さが伺えます。キアン・アイデブルックスがこの試練を乗り越え、再び最高の舞台でその才能を爆発させる日を、私たちは期待せずにはいられません。

彼の完全な回復を心から願い、チーム ヴィスマ・リースアバイクがこれからどのような戦略でグランツールに挑むのか、引き続き注目していきたいと思います。