ツール・ド・フランス 優勝候補の指標

クリテリウム・デュ・ドーフィネが示す「ツール・ド・フランス」の序章

今年のクリテリウム・デュ・ドーフィネは、まさにツール・ド・フランスの有力選手たちがそのベールを脱ぎ、互いの力量を測り合う舞台となりました。結果を見れば、タデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーが、レムコ・エヴェネプールに対して一歩抜きん出ているのは明白です。しかし、その中でフロリアン・リポヴィッツという若手が、誰もが予想しなかった大役を演じ得る存在として台頭してきました。「なるほど！」と唸らされた方も多いのではないでしょうか。このドーフィネで示された力関係は、ツール・ド・フランス本番に向けて、私たちファンにとって何よりも気になる「予兆」であることは間違いありません。

タデイ・ポガチャル：揺るぎない「最強」の証明

序盤こそ若干の戸惑いを見せたタデイ・ポガチャルでしたが、山岳に入ると彼は瞬く間にその圧倒的な力を示しました。コンブルーでの第6ステージでマイヨジョーヌを奪還し、土曜日には2勝目。いずれもヨナス・ヴィンゲゴーをわずか100m足らずで置き去りにするという、驚くべき加速力を見せつけました。最終日曜日もヴィンゲゴーの動きに無理なく追従し、総合優勝を飾ったのです。 「ポジティブなことばかりの一週間だった。少しばかりのネガティブな要素も、結果的にポジティブに転じたね」と、総合優勝を飾った日曜日に、彼はまるで小躍りするかのように語っていました。ドーフィネでの勝利は、彼のキャリアにおける99勝目という節目であると同時に、「チーム全体にとってツールに向けた大きな精神的ブーストになる」とまで言い切る彼の表情からは、並々ならぬ自信が窺えました。「へぇ～、そこまで言うか」と、思わず感嘆の声が漏れるほどです。 彼は今後、UAEチームエミレーツのチームメートたちと共にイゾラ2000で合宿を行い、特に苦手意識があるというタイムトライアルの強化に重点を置くとのこと。「やるべきことは分かっている」と笑顔で語る彼の言葉からは、ツール・ド・フランスへの並々ならぬモチベーションが伝わってきます。

ヨナス・ヴィンゲゴー：自らに集中する孤高の王者

ヨナス・ヴィンゲゴーも最終日にアタックを試みましたが、彼に追従できたのはタデイ・ポガチャルただ一人。その後、両者は話し合い、ステージ勝利のために無理をするのは避けるという選択をしました。チーム ヴィスマ・リースアバイクのリーダーは、このドーフィネから明確な教訓を得たようです。彼のチームは堅固であり（ヨルゲンソンが総合6位）、彼自身もタイムトライアルで2位に入るなど好調を維持しているものの、ポガチャルには及ばないという現実を突きつけられた形です。 「我々は自分たち自身の、そしてツールで最高の状態になるためのプロセスに集中している。ここでの結果は関係ない」と、総合2位でレースを終えた日曜日に彼は語っていました。この「確かに！」と思わせるストイックな姿勢は、彼の強みでもあります。彼は例年通りティーニュで、ワウト・ファンアールトやアダム・イェーツを含む側近たちと合宿を行う予定です。「加速やより長い登りなど、もう少し全てを改善しなければならない。ツールまでにさらに一段階レベルアップしたい」と語る彼の言葉からは、王者のプライドと、来るべき決戦への決意が感じられました。

フロリアン・リポヴィッツ：彗星のごとく現れた「ジャック」

3月のパリ～ニースでの総合2位という成績は、有力選手が不在だったとはいえ、フロリアン・リポヴィッツの才能を示す最初の兆候でした。しかし、今週のドーフィネで、彼はその真価を世界に知らしめたのです。レムコ・エヴェネプールだけでなく、時にはポガチャルやヴィンゲゴーに食らいつく驚異的な走りを見せ、総合3位、さらにマイヨブラン（新人賞）を獲得しました。「そうだったのか！」と多くのファンが驚いたことでしょう。 「ここに来る前は、まさかこんな上位に来られるなんて想像もしなかった」と、日曜日に彼は喜びを噛み締めていました。元バイアスロン選手という異色の経歴を持つ彼は、ブエルタ・ア・エスパーニャでの総合7位からわずか10ヶ月で、初のツール・ド・フランス出場を果たすことになります。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエでは、プリモシュ・ログリッチがツールでのエースと目されていますが、ダニエル・マルティネスやヴラソフといった多才な選手を擁するチームにおいて、リポヴィッツは単なるアシスト以上の役割を果たすことになるでしょう。「彼は新たな段階に進み、より安定し、より堅固になり、ミスを犯さなくなった」と、彼のスポーツディレクターであるロルフ・アルダグも絶賛しています。

レムコ・エヴェネプール：山岳での課題と復調への期待

レムコ・エヴェネプールは、クリテリウム・デュ・ドーフィネのタイムトライアルで圧巻の勝利を飾り、マイヨジョーヌを獲得しました。これは彼の「最強ルーラー」としての地位を改めて印象付けるものでした。しかし、山岳ステージに入ると、彼はポガチャルとヴィンゲゴーという「悪魔のデュオ」によって突き放され、さらにはリポヴィッツや他のライバルにも遅れをとる場面が見られました。 「最高のレベルではなかったが、今日は（日曜日）良かった」と、モン・スニの頂で彼は前向きに語りました。去年のドーフィネ（総合7位、今年は5位）と似たような状況からの復調に期待を寄せるスーダル・クイックステップのリーダーは、昨年もバスク地方での大落車からツールで総合3位、ステージ1勝という見事な復活劇を見せています。今回もその再現となるのでしょうか？「テンポチェンジ、つまり速いペースから全開で4、5分踏み込むような場面での走りを改善したい」と語るエヴェネプール。ツールに向けてティーニュでの合宿に臨む彼は、ポガチャルとヴィンゲゴーの「二人」に「近づきたい」と、その強い意志を表明しました。

ツール・ド・フランスへ向けて：激戦必至の夏

クリテリウム・デュ・ドーフィネは、今年のツール・ド・フランスが、タデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーという二人の絶対王者が中心となり、そこにレムコ・エヴェネプールが追いつけるのか、そしてフロリアン・リポヴィッツのような新星がどこまで食い込めるのか、という構図になることを示唆しています。 SNSでは、「ポガチャルがヴィンゲゴーを精神的に打ちのめした」というような厳しい意見も見られますが、ヴィンゲゴー自身はあくまで冷静に、自身の調整に集中している様子。このドーフィネで得た課題を克服し、ツール本番でどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、今から胸が高鳴りますね。 「次も読みたい！」と思っていただけたでしょうか？ツール・ド・フランス開幕まで、まだまだ注目すべき動きがあるはずです。私は引き続き、現地からの情報と独自の視点で、皆さんにサイクルロードレースの奥深さをお届けしていきます。