アルミライユ、再びタイムトライアルの王者に

フランスTT選手権の舞台裏：ベテランの貫禄と新星の輝きが交錯した日

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツール担当の山田健一です。

先日フランスのヴァンデ県レルビエで開催されたフランス選手権個人タイムトライアル（ITT）は、ベテランの貫禄と若き才能の輝きが鮮やかに交錯する、まさにドラマチックな一日となりました。ブリュノ・アルミライユ選手（デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム）が3度目の栄冠に輝いたその傍らで、わずか18歳のポール・セクサス選手（デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム）がエリートカテゴリー初参戦にして表彰台に上るという衝撃的なデビューを飾ったのです。この結果は、フランスのTT界に新たな夜明けを告げるものとなるかもしれません。

ベテランの意地、ブリュノ・アルミライユの貫禄

2022年、そして昨年2024年に続く3度目のフランス選手権ITT制覇を果たしたブリュノ・アルミライユ選手。31歳という年齢で、自身の強みであるタイムトライアルで再び国内最高峰の座に就いた彼の走りは、まさに圧巻でした。レース後、隣に立つポール・セクサス選手に向かってマイクを差し出しながら、「ポールが隣にいると、年を取ったと感じるね！」と笑顔で語ったその言葉には、長年この世界で戦い続けてきたベテランならではの温かさと、若き才能への期待が滲み出ていました。

彼は、今年のクリテリウム・デュ・ドーフィネで苦杯をなめたケヴィン・ヴァクラン選手を21秒差で退け、見事に雪辱を果たしています。ヴァクラン選手はレース序盤で落車するという不運に見舞われましたが、それを差し引いても、アルミライユ選手の盤石な走りは際立っていました。デカトロン・AG2Rラモンディアール チームのジュリアン・ジュルディ・スポーツディレクター（SD）が「彼はフランス最高のルーラーの一人だ」と評するように、彼の経験とタイムトライアルにおける卓越したスキルが、この勝利を確固たるものにしたと言えるでしょう。

未来を担う新星、ポール・セクサスの輝き

そして、今回のフランス選手権で最も大きな「なるほど！」を与えてくれたのが、若干18歳のポール・セクサス選手の活躍です。エリートカテゴリーでの初参戦で、いきなり3位という結果は、彼が単なる「期待の若手」ではないことを証明しました。昨年ジュニア世界選手権ITTで優勝を飾った彼は、その才能をエリートの舞台でも瞬く間に開花させたのです。

ジュルディSDはセクサス選手について、「20年間この仕事をしているが、これほど早熟な選手は見たことがない。車で追走したが、彼は一度もミスを犯さなかった。ただただ印象的だった」と、そのパフォーマンスに驚きを隠しませんでした。リヨン出身でオート＝サヴォワにルーツを持つセクサス選手は、「この表彰台は頭の片隅にはあったけれど、自分自身の位置づけが分からなかった。ブルーノと一緒の表彰台なんて、本当に素晴らしいサプライズであり、最高のプレゼントだ」と、はにかみながら語りました。この謙虚な言葉の裏には、計り知れないポテンシャルが秘められていることを、私たちは肌で感じずにはいられません。

デカトロン・AG2Rラモンディアール チームの未来戦略

デカトロン・AG2Rラモンディアール チームにとって、このフランス選手権はまさに大成功と言えるでしょう。ジュルディSDは「タイムトライアルで常に良いパフォーマンスを出すことに慣れていたが、ブルーノの勝利の可能性は大きかった。ポールが表彰台に上ったことは、もはや驚きではない。ドーフィネの後、それを確信することが非常に重要だった。デカトロン・AG2Rラモンディアール チームにとって、今日は非常に良い日であり、未来にとって非常に興味深い」と語っています。

チームがタイムトライアルに注力し、ブリュノ・アルミライユ選手のような経験豊富なスペシャリストと、ポール・セクサス選手のような若き才能を同時に擁していることは、彼らの今後の戦略において非常に大きな強みとなるはずです。

しかし、SNSなどでは「デカトロン・AG2Rラモンディアール チームはブリュノ・アルミライユ選手を2026年のロースターから外そうとしている」という議論も散見されます。もしこれが事実であれば、チーム内の力学として非常に興味深い動きです。ベテランとしての価値を証明したアルミライユ選手が、果たして来季以降どのチームで走るのか、その動向にも注目が集まります。

フランスTT界の新たな夜明け

今回のフランス選手権は、ブリュノ・アルミライユ選手の経験とポール・セクサス選手の才能が交錯する、まさに「世代交代」の兆しを感じさせるレースでした。アルミライユ選手は、ツール・ド・フランスに向けて山岳でのパフォーマンス向上に力を入れていたにもかかわらず、タイムトライアルのスキルを完璧に維持し、見事な勝利を掴みました。一方、セクサス選手は、まだその「時」ではないと理解しつつも、将来的にこのタイトルを獲得することを確信させる走りを見せました。

フランスのロードレース界は、ダヴィド・ゴデュ選手のようなクライマーの再起、そしてタイムトライアルにおける若手の台頭とベテランの健在ぶりによって、確実に活性化しています。特にポール・セクサス選手が今後どのように成長し、世界の舞台で輝くのか、私たちサイクルロードレースファンは、その未来に大きな期待を抱かずにはいられません。次世代のスターが誕生する瞬間を、これからも追い続けていきましょう！