ヴォークラン、惑星は整列するか？

「想定外」の躍進、ヴァークランの覚醒

ツール・ド・スイスの初日、大荒れの天候に見舞われたステージで、ケヴィン・ヴァークランはロマン・グレゴワールに次ぐ2位でフィニッシュし、一気に総合上位に浮上しました。この結果は、チームにとっても彼自身にとっても「想定外」だったに違いありません。何しろ、ヴァークランにとってこのツール・ド・スイスは、もともとシーズンプログラムにはなかったレースなのですから。アルデンヌクラシック後に急遽参戦を決めたという経緯を考えると、この好調ぶりには目を見張るものがあります。

チームのミカエル・ルヴォー監督は、「総合のための貯金ができたから、それを使う」と語っていますが、これはまさに戦略の大転換を意味します。エトワール・ド・ベセージュやレジオン・ペイ・ド・ラ・ロワール・ツールで勝利を飾るなど、今季好調を維持してきたヴァークランですが、ツール・ド・スイスという最高峰のステージレースで、これほど早く総合争いの中心に立つとは、誰が予想したでしょうか。彼の好調なコンディションと、最終日が個人タイムトライアルという、今年1月に彼が勝利したエトワール・ド・ベセージュと同じ形式である点が、彼を総合優勝候補へと押し上げた要因でしょう。これは「なるほど！」と思わせる共通点ですね。

「守り」の戦術と高まる期待

第2ステージでは、アルケア・B&Bホテルズ - B & B Hôtelsは、エウェン・コステューやマティス・ルベール Berreといった選手を送り込んだ初日とは打って変わって、逃げ集団に選手を乗せることなく、ケヴィン・ヴァークランを「温存」する戦術を取りました。これは、ヴァークランが総合2位という「貯金」を抱えているからこそ可能な選択であり、彼の総合優勝への野心が現実味を帯びてきた証拠です。

ミカエル・ルヴォー監督は、「日ごとに戦う」と慎重な姿勢を見せつつも、「プレッシャーは感じていない」と語ります。ヴァークラン自身も「こういうポジションにいられるのは嬉しい。チーム全体を動員できる」と、総合争いへの意欲を隠しません。ジョアン・アルメイダ、マルク・ヒルシ、ペリョ・ビルバオ、フェリックス・ガルといった本来の総合優勝候補たちが、初日にヴァークランから約3分ものタイムを失ったことで、ヴァークランの「貯金」は非常に大きな意味を持っています。この3分のアドバンテージが、これからの山岳ステージでどのように活きてくるのか、非常に楽しみなところです。読者の皆さんも「確かに！」と頷いてくださるのではないでしょうか。

勝負の鍵は山岳と最終TT

ツール・ド・スイスの今後の展開は、まさに山岳ステージが鍵を握ります。特に木曜日のステージは、3つの1級山岳を含む非常に厳しいコースが設定されており、ここで総合勢の真価が問われることになるでしょう。ヴァークランは「このツール・ド・スイスはパンチの効いたコースが多く、自分向きだ」と語っており、自信を覗かせます。しかし、彼は同時に「最強のライバルはやはりアルメイダ。彼もチームも強い」と現実も見ています。3分のタイム差があったとしても、アルメイダのようなクライマーが山岳で「大きな一撃」を放てば、あっという間にひっくり返される可能性も秘めているのです。

それでも、ヴァークランが冬の間も力を入れてきたという個人タイムトライアルが最終日に控えていることは、彼にとって大きなアドバンテージです。エウェン・コステューも「彼はタイムトライアルで本当に良い走りができる」と太鼓判を押しています。山岳でいかにタイムを失わず、最終日の個人タイムトライアルで勝負を決められるか。ここが、彼の総合優勝への最大のシナリオとなるでしょう。ヴィンチェンツォ・アルバネーゼが第2ステージで勝利を飾ったように、日々新たなドラマが生まれています。

フランスの希望、そしてモロー以来の快挙へ

フランスのサイクルロードレース界にとって、ステージレースでの総合優勝は長年の悲願です。2007年のクリテリウム・デュ・ドーフィネでクリストフ・モローが優勝して以来、大きなステージレースでのフランス人総合優勝は途絶えています。ケヴィン・ヴァークランがツール・ド・スイスで総合優勝を飾れば、この長い歴史に新たな1ページを刻むことになります。

昨年、フレッシュ・ワロンヌでタデイ・ポガチャルに次ぐ2位に入ったことからも、彼が世界のトップレベルで戦える実力を持っていることは明らかです。「ポガチャルの次に2位というのは信じられない」と彼が語ったように、その潜在能力は計り知れません。コメント欄でも「ベン・オコーナーのようなクライマーにどこまで耐えられるか」という声が上がっており、読者の皆さんの期待と懸念が入り混じっているのがよく分かります。そうだったのか！と驚くほど、彼のポテンシャルは高いのです。

さて、ツール・ド・スイスはこれからが本番。ケヴィン・ヴァークランが、この「想定外」のチャンスをものにできるのか、あるいは山岳で真のクライマーたちが牙を剥くのか。私山田 健一も、現地で彼の表情やチームの動きを追いかけながら、その行方を見守っていきたいと思います。次もぜひ、彼の戦いを見届けてください！