ドーフィネ激戦、チーム ピクニック・ポストNLに懸念、ファンデルプールはグラベル世界選手権へ？

ドーフィネ開幕！ ツール・ド・フランス「ビッグ3」激突の予感、そしてファンデルプールの意外な選択

ジロ・デ・イタリアの激闘の余韻がまだ残る中、ロードレース界の視線は早くも次なる大舞台、ツール・ド・フランスへと向けられています。その最終調整の場として、今週末から始まる「クリテリウム・デュ・ドーフィネ」は、まさに前哨戦と呼ぶにふさわしい豪華な顔ぶれが揃いました。グランツールを追い続けてきた私、山田健一の目には、このドーフィネが単なる準備レース以上の意味を持つように映っています。

「ツール・ド・フランス」前哨戦、クリテリウム・デュ・ドーフィネの舞台裏

ジロ・デ・イタリアの衝撃的な幕切れからわずか数週間、すでに選手たちの頭の中は、今から約1カ月後に開幕するツール・ド・フランスでいっぱいです。このドーフィネは、そのツールへの最終調整の場であり、選手たちのコンディションやチームの連携を確認する絶好の機会となります。

今年のドーフィネが特に注目されるのは、現代ロードレース界の「ビッグ3」――タデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、そしてレムコ・エヴェネプール――が揃ってスタートラインに立つからです。彼ら全員が、ほぼツール本番を見据えたチーム体制で臨むというのですから、これはもう「ミニ・ツール」と言っても過言ではありません。特に、今シーズンはまだ本領を発揮しきれていない感のあるヨナス・ヴィンゲゴーにとっては、このドーフィネでのパフォーマンスが、ツールに向けてのプレッシャーを跳ね返す試金石となるでしょう。もちろん、この準備レースだけで全てを判断するのは早計ですが、彼らの表情や走りから、ツールへの思惑を読み解くのが私の仕事です。

スイス一周とドーフィネ、それぞれの思惑

ドーフィネと並び、ツール・ド・フランスへの重要な準備レースとして知られるのが「ツール・ド・スイス」です。今年はドーフィネの1週間後に開催されるため、熱心なサイクルロードレースファンにとっては2週間にわたる毎日が楽しみになることでしょう。しかし、選手やチームの視点から見ると、ここに一つの悩ましいジレンマがあります。

「第4のグランツール」とも称される格式高いツール・ド・スイスは、その終盤にツール本番の山岳タイムトライアルを想定した、厳しい登りのタイムトライアルが設定されています。これは、本来であれば多くの総合系ライダーにとって魅力的な調整の場となるはずでした。しかし、その日程がドーフィネとずれたことで、多くのトップ選手たちはドーフィネを選び、その後の高地トレーニングに時間を割く道を選んでいます。タデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、レムコ・エヴェネプールといった「ビッグ3」も、この高地トレーニングを優先する戦略を採っているようです。ツール・ド・スイスを諦めてでも、高地での最終調整にこだわる彼らの決断には、今年のツールにかける並々ならぬ覚悟が感じられます。

マチュー・ファンデルプールの動向と、意外なグラベル世界選手権

今年のクリテリウム・デュ・ドーフィネには、もう一人、目が離せない選手がいます。それが「マチュー・ファンデルプール」です。なんと彼は、手首に骨折を抱えながらも、このドーフィネに参戦するというニュースが飛び込んできました。常識破りの大胆な決断に、「さすがファンデルプール！」と唸ったファンも多いのではないでしょうか。彼の存在は、レースに予測不能な火花を散らすこと間違いなしです。

そして、彼の動向を追う上でさらに興味深いのが、今年10月11日、12日にオランダの南リンブルフで開催される「グラベル世界選手権」です。マチュー・ファンデルプールは、このグラベル世界選手権の現タイトル保持者であり、開催地が地元オランダということもあり、大会側は彼の連覇を熱望しているようです。コース設計者のブラム・タンキンク氏も、彼の参戦を歓迎するコメントを出しています。手首の回復具合やロードシーズン後半のスケジュール次第ではありますが、もし彼がグラベルの世界選手権にも参戦すれば、その活躍はロードレースファンにとっても大きな注目を集めることでしょう。彼の多彩な才能が、ロードとグラベルという異なるカテゴリーでどう輝くのか、今から楽しみでなりません。

ツール・ド・フランス「頂上決戦」の裏側

今年のツール・ド・フランスは、タデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーによる、まさに「頂上決戦」が予想されています。彼らを擁するUAEチームエミレーツ・XRGとチーム ヴィスマ・リースアバイクの戦略は、まさに今年のツールの行方を左右する鍵となるでしょう。

RIDE Magazineの夏号2025では、UAEチームエミレーツ・XRGのマウロ・ジアネッティとチーム ヴィスマ・リースアバイクのティム・ヘームスケルクという、両チームのキーマンによる対談が掲載されています。彼らがどのようにエースをツールに送り出すのか、どのような準備プランを描いているのか、その言葉の裏にある戦略や哲学を読み解くのは、グランツール担当の私にとっても非常に興味深いテーマです。単なる身体能力のぶつかり合いだけでなく、チームの知力、戦術、そして選手個々のメンタルが複雑に絡み合うのがグランツールの魅力。この対談からは、今年のツールの「デュエル」が、いかに緻密に準備されているかが垣間見えます。

ツール・ド・フランスへの期待、そしてその先の物語

クリテリウム・デュ・ドーフィネは、ツール・ド・フランスへの最終調整の場でありながら、すでにトップ選手たちの激しい駆け引きが始まっています。ヨナス・ヴィンゲゴーのコンディション、タデイ・ポガチャルの揺るぎない強さ、そしてレムコ・エヴェネプールの未知数な挑戦。彼らが織りなす物語は、このドーフィネで新たな章を開きます。

そして、マチュー・ファンデルプールのグラベル世界選手権参戦の可能性も、今後のレースカレンダーに刺激的な彩りを加えるでしょう。ロードレースの頂点を目指す者たち、そしてカテゴリーの垣根を越えて挑戦する者たち。それぞれの思惑が交錯する中で、この夏、史上稀に見る激闘が繰り広げられることは間違いありません。次の展開から目が離せませんね！