ツール・ド・フランス開幕まで1ヶ月、有力選手の調整状況は？

ツール・ド・フランス前哨戦！クリテリウム・デュ・ドーフィネで激突する「ビッグ3」の現在地と、その行方

ツール・ド・フランス開幕まで約1ヶ月。グランツール覇者たちが一堂に会するクリテリウム・デュ・ドーフィネが、いよいよ今週末に迫ってきました。ヨナス・ヴィンゲゴー、タデイ・ポガチャル、レムコ・エヴェネプール。この「ビッグ3」が、それぞれの調整を経て、この重要な前哨戦にどう臨むのか。現地で選手たちの動向を追い続けてきた私、山田健一が、彼らの直近の調整状況と、ドーフィネ、そしてツール・ド・フランスへの展望を深掘りします。彼らがこのレースで何を見せ、何を隠すのか、読み解いていきましょう。

ポガチャルの「王者の調整」とスペインでの秘密特訓

リエージュ～バストーニュ～リエージュでの圧倒的勝利後、タデイ・ポガチャルは表舞台から姿を消しました。しかし、その裏では周到な準備が進められていたようです。5月初旬にはスペインのシエラネバダで単独、あるいは数人の友人と共に高地合宿を敢行。その後、モナコグランプリで息抜きをし、再びピレネー山脈のバルセロナ近郊で高地トレーニングに入ったと聞けば、「なるほど！」と唸るしかありません。彼は昨年のツール・ド・フランス覇者であり、今年のジロ・デ・イタリアでも圧倒的な強さを見せつけたばかり。ドーフィネ後はイゾラ2000へ直行し、チームメイトのJoao Almeidaらと連携を深める予定だといいます。この完璧とも言える調整は、ツール・ド・フランスでの「ダブル」達成への布石であることは間違いありません。彼の表情からは、常に自信と集中が読み取れます。

ヴィンゲゴー、落車からの復帰と「チーム」の力

パリ～ニースでの落車により、シーズン序盤を棒に振ったヨナス・ヴィンゲゴー。彼のコンディションを不安視する声は少なくありませんでした。しかし、彼はその沈黙を破り、タデイ・ポガチャルと同じくシエラネバダで高地合宿を敢行していました。驚くべきは、その合宿にチーム ヴィスマ・リースアバイクの精鋭たち、すなわちパリ～ニース覇者のマッテオ・ジョーゲンソン、セップ・クス、ヴィクトル・カンペナールツ、ティシュ・ベノートといった強力なアシスト陣が帯同していたことです。これは単なる調整ではなく、ツール・ド・フランスを見据えたチーム全体の連携強化を図るもの。「確かに！」チームとしての力は、ツールの勝敗を分ける鍵となるでしょう。アヌシーでの静養を経て、ドーフィネ後のティーニュでの最終調整に入るという彼の「隠密」調整の真意は、ドーフィネでのパフォーマンスに表れるはずです。

エヴェネプール、試練を乗り越えタイムトライアルで存在感を示すか

今年の冬のトレーニング中の落車で、手、肋骨、肩甲骨を骨折するという大怪我を負ったレムコ・エヴェネプール。彼が最も厳しいシーズン序盤を送ったことは言うまでもありません。アルデンヌ・クラシックでフラッシュ・ブラバンソン優勝、アムステル・ゴールド・レース3位と復帰戦としてはまずまずの結果を出したものの、リエージュ～バストーニュ～リエージュでは苦戦。ツール・ド・ロマンディでは総合5位とリズムを欠いたようですが、彼自身は「何も心配ない」と語っていると聞きました。ベルギーに戻り、シエラネバダで高地トレーニングを積んだ彼は、ドーフィネ後のイゾラ2000での調整を経て、6月27日のベルギー選手権のタイムトライアルにも出場する予定です。これは彼がツール・ド・フランスでタイムトライアルに懸ける思いの表れでしょう。昨年のドーフィネで2.5kg減量に成功したというトリビアも、彼の勝利への執念を感じさせますね。

アウトサイダーたちの秘策とベテランの挑戦

「ビッグ3」に続くアウトサイダーたちも、それぞれの秘策を胸にドーフィネに臨みます。ツール・ド・ロマンディ後、アンドラで2週間の休暇を取ったレニー・マルティネスは、テネリフェ島のテイデ火山で高地トレーニングを選択。チームメイトのサンティアゴ・ブイトラゴは、リエージュ～バストーニュ～リエージュ後、1ヶ月をコロンビアの自宅で過ごしたといいます。Lidl-Trekのマティアス・スケルモースやRedBull-レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのフロリアン・リポヴィッツもシエラネバダで調整していたとの情報も入っています。

そして、ジロ・デ・イタリアを走り終えたばかりのdsm-firmenich PostNLのロマン・バルデ。彼は「グランツール後に1週間のステージレースに出るのは初めてだ」と語っており、そのコンディションは未知数です。34歳という年齢で、ジロでの疲労が残る中、どこまでパフォーマンスを発揮できるのか。彼の経験と精神力が試される、異例の挑戦に注目です。

ファンアールトとアラフィリップ、クラシックの雄たちの現状

クラシックの雄たちも、ツール・ド・フランスに向けて重要な局面を迎えています。マチュー・ファンデルプール der Poelは、5月25日のチェコ共和国ノヴェ・メストでのMTBワールドカップでまさかの落車、舟状骨を骨折してしまいました。これにより、ドーフィネへの出場は不透明な状況です。しかし、SNSではすでにトレーニングを再開している姿が投稿されており、「そうだったのか！」と驚きつつも、ツール・ド・フランスへの希望は残されています。

一方、Tudorのジュリアン・アラフィリップは、シエラネバダでの高地トレーニング後、6月15日から22日にかけて行われるツール・ド・スイスで復帰予定です。Ineos-Grenadiersのゲラント・トーマスもツール・ド・スイスに参戦するとのこと。彼らパンチャー・ルーラータイプの選手たちが、ツールに向けてどのようにコンディションを上げてくるのか、その過程もまた見どころの一つです。

ツール・ド・フランスへの序章、ドーフィネの行方は？

いよいよツール・ド・フランスへのカウントダウンが本格化するクリテリウム・デュ・ドーフィネ。このレースは単なる前哨戦ではなく、選手たちの本当の仕上がり具合を測る重要な試金石となるでしょう。「ビッグ3」はもちろん、その裏で虎視眈々とチャンスを狙う選手たちの思惑が交錯するはずです。

選手たちの表情、声のトーン、そしてレース中のわずかな動きから、彼らがツールに何を賭けているのか、私もしっかりと読み解いていきたいと思います。さあ、本格的な夏が始まる前に、サイクルロードレースの熱気を存分に味わいましょう！「次も読みたい！」と思わせるような、深い洞察と臨場感あふれるレポートを、これからもお届けしていきますので、どうぞご期待ください。