デル・トロ、ボルミオで復活しカラパスとジロ総合V争いへ

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。山田健一です。 ジロ・デ・イタリアもいよいよ最終盤、アルプスの山々が舞台となる第17ステージは、まさに歴史に残る激闘となりましたね。この日、ピンクジャージを死守し、堂々たるステージ優勝を飾ったのは、メキシコの雄、イサーク・デルトロ選手。そして、彼と最後まで鎬を削ったのは、エクアドルのクライマー、リチャル・カラパス選手でした。スペイン語圏の二人がジロの主役として、ボロボロになりながらも互いの限界を試す姿は、まさにロードレースの醍醐味を凝縮したかのようでした。

デルトロが魅せた執念のステージ勝利

第17ステージは、イタリアのボルミオを舞台に、アルプスの険しい山岳を越える正真正銘のクイーンステージでした。この日、ピンクジャージを着用するイサーク・デルトロ選手は、序盤から多くの疑問符がつけられていた「高山での強さ」を、最高の形で証明してみせました。最終局面でリチャル・カラパス選手との一騎打ちとなり、ゴールまで残り1.3kmで渾身のアタック。ライバルを振り切り、ドロミテの地でピンクジャージのまま、グランツール自身初のステージ優勝を掴み取ったのです。「なるほど！」と思わず膝を打った方も多いのではないでしょうか。これまで3度の2位に甘んじてきたデルトロ選手が、この最も重要な局面で勝利を掴んだことは、彼の精神的な成長と、このジロにかける並々ならぬ覚悟を示しています。総合リーダーとしての重圧を跳ね除け、自らステージを獲るという最高の形で、彼は自身の存在感をさらに高めました。

モルティローロの攻防：EFとUAEの戦術合戦

「今日はアタックの日じゃないだろう？」と、リチャル・カラパス選手が記者に冗談めかして言っていたと聞きますが、その言葉の裏には、彼がこの日をどれだけ重要視していたかが窺えます。彼のジロ奪還への再攻勢は、サン・ヴァレンティーノ峠から始まり、そして伝説のモルティローロ峠で第二章が幕を開けました。モルティローロ、その名を聞くだけで多くのサイクリストが恐怖を覚えるこの伝説の山は、今回は比較的勾配の緩いモンノ側から通過する形でした。しかし、EFのカラパス選手は、ここで「小さな雄牛」ことデルトロ選手を揺さぶりにかけます。

ティベリ選手が総合争いから脱落し、ペリッツァーリ選手がアタックを仕掛ける中、カラパス選手はチームメイトのセペダ選手（彼の愛称である「チャレキート」は、小さなベストという意味があり、彼がチームに欠かせない存在であることを示唆しています）に素早く対応を命じ、自らも怒涛の一撃を繰り出しました。アダム・イェーツ選手が必死に食らいつく中、デルトロ選手はグループの最後尾でギリギリの粘りを見せます。しかし、UAEチームエミレーツ・XRGはただやられるだけではありませんでした。彼らはル・モッテでの牽引を続け、デルトロ選手をカラパス選手との一騎打ちに持ち込むことで、サイモン・イェーツ選手を完全に排除する戦術を選択したのです。デルトロ選手は、ここから信じられないような下りを見せ、平坦区間に入ってからもカラパス選手を振り切るという、自信とパワーに満ちた走りを見せました。まさに「へぇ～」と唸るような、チームと個人の戦略が完璧に噛み合った瞬間でしたね。

総合争いの行方と最終決戦への期待

この第17ステージの結果、総合順位は大きく動き、リチャル・カラパス選手が総合2位に浮上し、デルトロ選手とのタイム差を詰めてきました。アダム・イェーツ選手は粘りを見せたものの、この二人の激しい戦いには一歩及ばず、総合争いは事実上、デルトロ選手とカラパス選手の一騎打ちの様相を呈しています。残されたアルプスステージは、さらに過酷なプロフィールが待ち受けており、この二人のどちらが最終的にピンクジャージを着てローマの表彰台に上がるのか、まったく予測ができません。

これまでのジロの歴史を振り返っても、最終週までこれほど激しい総合争いが繰り広げられることは稀です。SNSでは「デルトロは新しいポガチャルだ！」といった声も上がっており、その圧倒的な走りは多くのファンを魅了しています。果たしてデルトロ選手は、このままピンクジャージを守り抜き、初のグランツール総合優勝を果たすのか。それとも、経験豊富なカラパス選手が逆転のシナリオを描くのか。次なる山岳ステージが、この二人の運命を大きく左右するでしょう。私も現地で、その息をのむような最終決戦を見守るつもりです。日本のファンの皆さんも、この熱狂のジロ・デ・イタリアから、ますます目が離せませんね！