ポガチャル「これほど差が開くとは予想外」

ポガチャル、ドーフィネで「予想外の」圧勝劇！ ツールの前哨戦で見せた驚異と人間性

今年のグランツールシーズンを占う上で、クリテリウム・デュ・ドーフィネは常に重要な位置を占めています。特にツール・ド・フランスを前にしたトップ選手たちのコンディションを探る上で、これほど分かりやすい試金石はないでしょう。そんな中、第6ステージで圧倒的な強さを見せつけたのが、ご存知タデイ・ポガチャル選手（UAEチームエミレーツ）です。ゴール後、彼は驚きと喜び、そしてある種の慌ただしさの中にいました。その背景には、彼の人間性とその強さの秘密が隠されているようです。

ドーフィネでの圧巻の走り、そして恋人への眼差し

第6ステージを終えたポガチャル選手は、まさに「大満足」といった表情でした。しかし、その顔にはどこか急いでいるような焦りも見て取れたのです。彼は「暑くて厳しい一日だった。今すぐ急いで、ウシュカ・ジガルト（彼のパートナーであり、同じくプロサイクリスト）が出場しているツール・ド・スイスの最終ステージを見なければならないんだ。ギリギリ間に合ったよ！」と語りました。このコメントを聞いた時、私は思わず「なるほど！」と膝を打ちましたね。世界最高峰のレースで圧倒的な走りを見せた直後にも関わらず、愛する人のレースを気にかける。彼の人間的な魅力が凝縮された瞬間でした。

この日のドーフィネは、組織の予想をはるかに超えるハイスピードで展開されました。ポガチャルの加速が、そのスピードをさらに引き上げたのは言うまでもありません。彼の言葉からは、自身のコンディションへの確かな手応えが伝わってきました。「チームは最高の状態だった。そして僕も調子が良かった。登りの一番きつい部分からアタックすると決めていたんだ。失うものは何もなかった。得るものしかなかったからね。ただ、持てる力をすべて出し切るだけだった」。この言葉には、彼がどれだけ自信を持ってレースに臨んでいたかが表れています。「確かに！」と思わせる、シンプルながら力強い言葉です。

因縁の登り、チーム ヴィスマ・リースアバイクとの攻防

ポガチャル選手がこのステージで驚くべきコメントを残しました。「僕たちの計画はあったんだけど、チーム ヴィスマ・リースアバイクがカテゴリー1の登りで全力でペースを上げ始めたんだ。レース前は知らなかったけれど、この登りは以前にも走ったことがあって、たくさんの思い出があるんだよ」と。この「思い出」という言葉の裏には、2023年のツール・ド・フランスでの苦い経験が隠されていると私は見ています。あの時、彼はタイムトライアルでヨナス・ヴィンゲゴー選手に圧倒され、総合優勝への望みをほぼ絶たれた。その登りが、今回ドーフィネで再び彼の前に立ちはだかったのです。

しかし、今回は違いました。ポガチャル選手は、まるで過去の自分と決別するかのように、ライバルたちを置き去りにしました。シートから立ち上がることなく、まるで「無重力」のような滑らかなペダリングで、ライバルたちを突き放していったのです。これは単なるアタックではなく、彼自身の進化と、UAEチームエミレーツの完璧なサポートが一体となった結果でしょう。彼が「なぜあんなにタイム差がついたのか分からない」と語ったのは、彼自身がゾーンに入り、無意識のうちに最高のパフォーマンスを発揮していた証拠かもしれません。「へぇ～」と唸るような、まさに天才の領域です。

予想外の差、ツールの前哨戦の行方

この日、ポガチャル選手が「予想以上のタイム差が開いた」と語ったのは、多くのファンにとっても驚きだったはずです。彼は「最後まで、ライバルたちの弱点を見つけることはできなかった。だから、これほど大きな差が開くとは思わなかったんだ。せいぜい2、3人がついてくるだろうと思っていたよ」と率直な感想を述べました。タイムトライアルでタイムを失ったことへの「懸念」があったと明かしつつも、今回の勝利が「チームと僕にとって改善の機会になった」とポジティブに捉えているのが印象的でした。

土曜日には「死のステージ」と呼ばれる難関ステージが控えています。このステージは、純粋なクライマーチームではないUAEチームエミレーツにとって、真価が問われる場所となるでしょう。しかし、ポガチャル選手は冷静です。「明日何が起こるかは分からないけど、今は気にしない。僕もチームも良い状態にある。明日のレースを見てみよう。難しい登りがあるから大変だろうけど、チームの皆は登りでよくやってくれている。自信を持って臨めるよ。脚も調子も良いし、ツールに向けて力を温存するだけさ」。この余裕こそが、彼が真のチャンピオンであることを物語っています。「そうだったのか！」と、彼の戦略的思考に改めて感銘を受けました。

クリテリウム・デュ・ドーフィネでのタデイ・ポガチャルの圧倒的なパフォーマンスは、今年のツール・ド・フランスに向けて、彼が最高の状態にあることを示唆しています。特に、2023年のツールで苦しんだ登りで、今回はライバルを突き放したという事実は、彼が過去の経験を糧にさらなる高みへと到達したことを物語っているのではないでしょうか。ドーフィネの残りのステージ、そしてその先のツール・ド・フランスで、彼がどんな物語を紡いでくれるのか。次も読みたい！と、期待せずにはいられません。