ドーフィネ2025女王ステージ展望：ヴァルムニエ1800へ、ポガチャル再来か？

決戦の舞台、アルプスの巨峰たち

さて、いよいよ迎える第7ステージは、間違いなく今大会の「クイーンステージ」と呼ぶにふさわしいでしょう。グラン＝アルグブランシュをスタートし、わずか132.1kmの道のりながら、そのうち実に63kmが登りという、とてつもない山岳コースが選手たちを待ち受けます。

特に注目すべきは、ツール・ド・フランスでもお馴染みのアルプスの巨峰が二つも登場することです。まずは、平均勾配6.2%で24.6kmも続くマドレーヌ峠。そして、さらに勾配を増し、平均6.9%で22.4kmの長さを誇るクロワ・ド・フェール峠。これらのクラシックな難関は、選手たちの脚を確実に削り取っていくはずです。そしてフィニッシュは、これまたツールでお馴染みのテレグラフ峠の延長線上にあるスキーリゾート、ヴァルムニエール1800への16.5km、平均6.7%の激坂。これはまさに、アルプスの神々が定めた試練と言えるでしょう。このコースプロフィールを見ただけでも、昨日のステージとは全く異なる、純粋な山岳での総合力と持久力が問われることがひしひしと伝わってきます。

ポガチャルの「モーカーズラグ」は続くか？

前日の第6ステージで、タデイ・ポガチャルはヨナス・ヴィンゲゴーとレムコ・エヴェネプールという二大ライバルに、まさに「モーカーズラグ」（オランダ語で「強烈な一撃」の意）を食らわせました。ステージ優勝に加え、総合でも圧倒的なリードを築いた彼の強さは、現地メディアでも「異次元」「超自然的」といった表現で報じられています。特にStravaのKOM記録を塗り替えたという情報も、彼のコンディションがどれほど抜きん出ているかを物語っていますね。

しかし、今日のステージは、昨日のような短く爆発的な登りとは性質が異なります。マドレーヌ峠やクロワ・ド・フェール峠のような長大な超級山岳では、純粋なパワーだけでなく、ペース配分や持久力がより重要になってきます。果たして、ヨナス・ヴィンゲゴーは、この「真の」高山で本来の力を発揮し、ポガチャルとの差を縮めることができるのでしょうか？彼の表情からは、前日の悔しさがにじみ出ていましたが、その裏には静かな闘志が燃えているはずです。レムコ・エヴェネプールもまた、「明日はまた新たな日、もっと良い脚があるかもしれない」と冷静に語っていましたが、彼の言葉の裏には、この難関ステージで挽回したいという強い思いが透けて見えます。

頂上決戦を彩る脇役たち、そして暑さとの戦い

今回のドーフィネでは、フロリアン・リポヴィッツがヤングライダー賞ジャージを着用し、総合でもトップ争いに絡むなど、若手の台頭も目覚ましいものがあります。彼がタデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴーといったトップ中のトップにどこまで食い下がれるか、注目すべき点です。また、マッテオ・ジョーゲンソンはヨナス・ヴィンゲゴーのアシストとして、そして総合でも上位を狙える実力者として、重要な役割を担うでしょう。彼がチーム ヴィスマ・リースアバイクの戦略の中で、どのような動きを見せるのかは、レースの行方を左右する大きな要素となります。

そして、エンリク・マス、エディ・ダンバー、ポール・セクサスといったセカンドグループのクライマーたちが、序盤の長大な登りで逃げを打つ可能性もゼロではありません。特に、昨日のステージで温存したと思われるマルク・ソレルのような選手が、UAEチームエミレーツ・XRGの別のカードとして、大胆なアタックを仕掛けることも考えられます。しかし、主要な山岳が序盤に集中しているため、メイン集団が逃げを許す展開は「あまりありそうにない」と私も見ています。

加えて、今日のレースは「血が煮えくり返るような」暑さとの戦いにもなります。谷底では32℃という予報が出ており、風もほとんどない状況では、選手たちは常に熱中症のリスクと隣り合わせです。この過酷なコンディションが、選手たちのパフォーマンスにどう影響するのか、そして誰がこの暑さに最も適応できるのかも、勝負の重要な鍵となるでしょう。

果たして、このクイーンステージで何が起こるのか？ タデイ・ポガチャルの圧倒的な強さが続くのか、それともヨナス・ヴィンゲゴーやレムコ・エヴェネプールが意地を見せるのか。はたまた、思わぬ伏兵が飛び出すサプライズがあるのか。現地時間午前11時55分にグラン＝アルグブランシュをスタートする選手たちの戦いに、目が離せません。日本の皆さん、ゾクゾクするような展開を期待しましょう！