マチュー・ファンデルプールのツール野心とONE Cyclingの行方

ツール・ド・フランスの行方を占うドーフィネ！ポガチャル、ヴィンゲゴー、エヴェネプール、そしてマチュー・ファンデルプール der Poelの野望を読み解く

皆さん、こんにちは！グランツール担当の山田健一です。いよいよツール・ド・フランスの足音が聞こえてきましたね。その前哨戦として注目されているクリテリウム・デュ・ドーフィネは、今年も主役級の選手たちのコンディションを探る上で、非常に重要なレースとなっています。特に、タデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、レムコ・エヴェネプールの”三強”がどのような仕上がりを見せているのか、そして、驚くべきことに、マチュー・ファンデルプール der Poelがツールでの新たな野望を秘めているのではないか――そんな興味深い話題が、最新の「WielerFlits Podcast」で繰り広げられました。さらに、自転車界の未来を左右する「ONE Cycling」プロジェクトの動向についても、現地ならではの視点で深掘りしていきます。さあ、彼らの本音がどこにあるのか、一緒に読み解いていきましょう。

ツール・ド・フランスへの序章：ドーフィネが語るもの

クリテリウム・デュ・ドーフィネは、毎年ツール・ド・フランスを控えたビッグネームたちが最終調整を行う場として、その動向が熱い視線を集めます。今年の注目は、やはりタデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、そしてレムコ・エヴェネプールの三強が、それぞれどのような状態にあるかという点に集約されるでしょう。

ポッドキャストでは、昨年の不十分な準備から一転、ヴィンゲゴーが本調子を取り戻し、ポガチャルとの間に「秩序が回復した」とレイモンド氏が指摘しているのが印象的でした。これはつまり、昨年は怪我の影響でヨナス・ヴィンゲゴーが本来の力を発揮しきれなかった部分があり、タデイ・ポガチャルが圧倒的な強さを見せましたが、今年は両者の力が拮抗し、より緊迫した総合争いが期待できるという見方であると私は解釈しています。

一方、ユーリ氏はレムコ・エヴェネプールの好調ぶりを高く評価しています。彼のパフォーマンスは確かに目覚ましいものがありますが、気になるのは所属チームであるAGインシュランス・スーダル チーム-Quick Stepの負傷者が相次いでいるという点です。グランツールを戦い抜くには、強力なアシスト陣が不可欠。特にツール・ド・フランスのような過酷なレースでは、チームの総合力が勝敗を大きく左右します。レムコ・エヴェネプール個人がどれほど強くても、彼を支えるチームメイトが万全でなければ、その力が十分に発揮できない可能性も否めません。この点は、今後のツール・ド・フランスに向けて、AGインシュランス・スーダル チーム-Quick Stepがどのような体制を整えてくるのか、注視すべきポイントですね。

マチュー・ファンデルプール der Poelの新たな挑戦：緑のジャージへの道

さて、今回のポッドキャストで私が最も「なるほど！」と膝を打ったのは、マチュー・ファンデルプール der Poelの話題です。彼はドーフィネでポイント賞を狙う動きを見せており、ユーリ氏はこれがツール・ド・フランスでの緑のジャージ（ポイント賞）獲得への布石である可能性が高いと分析しています。

マチュー・ファンデルプール der Poelといえば、ワンデーレースやシクロクロスで圧倒的な強さを見せる「オールラウンダー」というイメージが強いですが、グランツールで総合優勝を狙うタイプの選手ではありません。しかし、彼の爆発的なスプリント力と、丘陵での登坂力を兼ね備えた特性は、ポイント賞争いにおいて非常に有利に働きます。ツール・ド・フランスのポイント賞は、平坦ステージでのスプリントポイントだけでなく、中間スプリントや丘陵ステージでのポイントも積み重ねていく必要があります。MVDP（マチュー・ファンデルプール der Poel）のような選手が本気で緑のジャージを狙えば、これまでのポイント賞争いの構図を大きく変える可能性を秘めているのです。

これは単なる憶測ではなく、彼がドーフィネで見せているレース運びから読み取れる明確な意図であると私も感じています。果たして彼は、ツール・ド・フランスの緑のジャージに、これまでとは異なる新たな風を吹き込むことになるのでしょうか？非常に興味深い展開になりそうです。

自転車界の未来を揺るがす：ONE Cyclingプロジェクトの行方

ポッドキャストの冒頭で語られた、UCIがONE Cyclingプロジェクトを一時的に却下したというニュースも、自転車界の未来を考える上で見過ごせない動きです。このプロジェクトは、リチャード・プラグ氏（チーム ヴィスマ・リースアバイクの監督）をはじめとする主要チームやレース主催者らが主導し、ロードレースの商業的価値を高め、より持続可能なビジネスモデルを構築しようとする試みでした。

しかし、国際自転車競技連合（UCI）は、この計画を現時点では承認しないという判断を下しました。これは、既存の権益構造や、UCIが持つ統括権限との間で、まだ調整が必要な部分が多いことを示唆しています。私が現地で取材してきた感覚では、UCIとチーム、そしてレース主催者の間には常に緊張関係があり、それぞれの立場からの思惑が複雑に絡み合っています。ONE Cyclingプロジェクトは、そうした既存の枠組みを大きく変革しようとするものであり、当然ながら反発や慎重論も出やすいでしょう。

このプロジェクトの行方は、今後のロードレースのカレンダー、スポンサーシップ、そして選手の待遇にまで大きな影響を与える可能性があります。「自転車界の巨人たち」がどのような落としどころを見つけるのか、引き続きその動向を注視していく必要がありますね。

ドーフィネだけじゃない！同時進行の注目レース

今週末はクリテリウム・デュ・ドーフィネの他に、ツール・ド・スイスもスタートします。ドーフィネがツール・ド・フランスの主要な前哨戦であるのに対し、ツール・ド・スイスもまた、多くのトップ選手が最終調整に臨む重要なステージレースです。

また、先週末にはグロッサー・プライス・デ・カントン・アールガウやツール・ド・スイス・ウィメン、そしてドワーズ・ドア・ヘット・ハーゲラントといったレースも行われ、各地で熱い戦いが繰り広げられました。ニールソン・パウレスやタデイ・ポガチャル、アムベル・クラークといった選手たちが勝利を収め、シーズン中盤のロードレースシーンはますます盛り上がりを見せています。

グランツールだけでなく、ワンデーレースや他のステージレースにも目を向けることで、ロードレース全体の流れや、若手選手の台頭、ベテランの健在ぶりなど、様々な発見があります。ぜひ、これらのレースの結果にも注目してみてください。

締め: クリテリウム・デュ・ドーフィネの最終局面、そしてツール・ド・スイスの開幕。いよいよ夏のグランツールシーズンに向けて、ボルテージは最高潮に達しています。タデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、レムコ・エヴェネプール、そしてマチュー・ファンデルプール der Poelがツール・ド・フランスでどのようなパフォーマンスを見せるのか、今から胸が高鳴りますね。それぞれの思惑が交錯する中で、彼らがどんなドラマを見せてくれるのか、私も現地メディアの情報を丹念に追いかけ、皆さんにお伝えしていきたいと思います。次回の記事もどうぞお楽しみに！