ワロンヌの矢後、エヴェネプールチームがリエージュへ向け手応え

レムコ・エヴェネプール、ワロンの矢で苦戦も リエージュへ向けたチームの視線

ワロンの矢、フレッシュ・ワロンヌでのレムコ・エヴェネプールの9位という結果は、多くのファンにとって意外だったかもしれません。エースとして臨んだレースで、あのタデイ・ポガチャルに全く歯が立たなかったというのは、正直なところ衝撃でした。しかし、現地でチーム関係者と話してみると、その受け止め方は決して悲観的なものではないのです。むしろ、次に控えるモニュメント、リエージュ～バストーニュ～リエージュに向けて、確かな手応えを感じている様子が見て取れました。一体、スーダル・クイックステップの内部では何が語られているのでしょうか？

ユイの壁での苦闘

今年のフレッシュ・ワロンヌは、例年以上に厳しいコンディションとなりました。寒さと雨が選手たちの体力を容赦なく奪い、サバイバルレースの様相を呈しましたね。最終局面、勝負の分かれ目であるミュール・ド・ユイ（ユイの壁）へ突入するまで、スーダル・クイックステップはピーテル・セリーやルイス・フェルヴァーケといったベテラン勢が中心となり、しっかりと主導権を握ろうと試みました。レムコ・エヴェネプール自身も、チームメイトにペースアップを指示するなど、勝利への意欲を見せていたのは間違いありません。

しかし、いざタデイ・ポガチャルがアタックを開始すると、レムコ・エヴェネプールは全く反応できませんでした。まるでギアが一段違うかのように、タデイ・ポガチャルはユイの壁の急勾配を駆け上がり、独走でフィニッシュ。レムコ・エヴェネプールはズルズルと後退し、最終的に9位でのフィニッシュとなりました。あのレムコ・エヴェネプールが、これほどまでに脆い姿を見せたのは、直近のレースではあまり記憶にありません。「これはリエージュに向けての大きな不安材料になるのでは？」そう思った方も多いのではないでしょうか。私も一瞬、そう感じました。

チームが語る敗因と冷静な分析

レース後、スーダル・クイックステップのチームディレクターであるKlaas Lodewyck氏に話を聞く機会がありました。彼はレムコ・エヴェネプールのパフォーマンスについて、非常に冷静に分析していました。「今回のフレッシュ・ワロンヌのフィニッシュは、レムコが100%得意とするタイプではない」と彼はまず指摘しました。ユイの壁のような超短距離の激坂フィニッシュは、彼の爆発力をもってしても、タデイ・ポガチャルのような純粋なパンチャータイプには分が悪い、という見立てです。

さらに、この日の極寒のコンディションがレムコ・エヴェネプールの体に堪えたこと、そして冬のアクシデントからの回復過程で、まだグランツールを走るような「レース体重」まで絞れていないことも要因として挙げられました。なるほど、単に調子が悪いのではなく、コンディションやレース特性、そして調整段階といった複数の要素が重なった結果だというわけです。特に、アムステルゴールドレースでもタデイ・ポガチャルが強さを見せていたことを考えれば、このユイの壁での結果も、ある意味で想定内だったと言えるのかもしれません。「ポガチャルがあの登りで別格であることは、アムステルゴールドレースの走りを見ても分かっていたことだ」とKlaas Lodewyck氏は語っていました。この言葉の裏には、「ワロンの矢の結果だけでリエージュを悲観する必要はない」という強いメッセージが込められているように感じました。

リエージュへの光明とチームの結束

Klaas Lodewyck氏は、フレッシュ・ワロンヌでの収穫についても強調しました。「レムコは素晴らしい走りをしていたし、チームも非常に強かった」と彼は言います。確かに、ピーテル・セリーやルイス・フェルヴァーケが見せた献身的なアシストは印象的でした。不運にも落車でリタイアしたイラン・ファンウィルデル Wilderは残念でしたが、ウィリアムジュニア・ルセルフやマウリ・ファンセヴェナントが最終盤までレムコ・エヴェネプールをサポートする姿には、チームの結束力を感じましたね。

そして何より、Klaas Lodewyck氏がリエージュ～バストーニュ～リエージュに向けて自信を見せる最大の根拠は、そのレース距離にあります。リエージュ～バストーニュ～リエージュはフレッシュ・ワロンヌよりも約1時間長く、起伏に富んだコースが続きます。これは、単発の爆発力よりも、持続的なパワーとスタミナが求められるレースであり、レムコ・エヴェネプールが得意とする展開です。過去2回の優勝経験も、彼にとって大きなアドバンテージとなるでしょう。チームの強力なサポート体制に加え、レムコ・エヴェネプール本来のレース適性を考えれば、リエージュでの逆襲は十分にあり得ると言えます。

モニュメントでの真価が問われる

フレッシュ・ワロンヌでは、タデイ・ポガチャルが圧倒的な強さを見せつけました。2位のKévin Vauquelinに10秒差、3位のTom Pidcockに12秒差をつけての圧勝は、彼の現在のコンディションの良さを示しています。しかし、リエージュ～バストーニュ～リエージュは全く別のレースです。距離もコースプロフィールも異なり、戦術の幅も広がります。

レムコ・エヴェネプールにとって、リエージュ～バストーニュ～リエージュは「彼のレース」と言っても過言ではありません。ここでどのような走りを見せるかが、今シーズンの彼のクラシックシーズン、そしてその先のグランツールに向けての試金石となるでしょう。ユイの壁での苦戦を乗り越え、得意のモニュメントで真価を発揮できるのか。タデイ・ポガチャルとの直接対決は、果たしてどのようなドラマを生むのか。世界中のサイクルロードレースファンが注目しています。次週末のリエージュ～バストーニュ～リエージュが、今から待ちきれませんね。