ヨナス・ヴィンゲゴー、ツール準備開始 プログラム変わらず

ツール連覇へ、ヨナス・ヴィンゲゴーが本格始動！ プログラム変更なしの揺るぎない準備

日本のロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツールを中心に取材している山田 健一です。

皆さんも、ヨナス・ヴィンゲゴーのコンディションを心配されていたことでしょう。パリ～ニースでの落車以来、彼の動向には世界中が注目していました。しかし、朗報です。彼は完全に回復し、今週からツール・ド・フランス連覇に向けた本格的な準備を開始しました。そして、最も重要な点として、当初予定していたレースプログラムに変更はないとのことです。

怪我からの順調な回復とチームの判断

パリ～ニースでの落車は、彼にとって非常に痛い出来事でした。脳震盪を負い、その後のカタルーニャ一周も欠場せざるを得ませんでした。グランツール担当として、彼の状態がどれほど深刻だったか、チーム ヴィスマ・リースアバイクがどのような判断を下すのか、私も固唾を飲んで見守っていました。

当初、チーム内では、ツールへの準備期間に入る前に、ヴィンゲゴーにもう一戦レースを走らせるべきか、という議論があったようです。これはチームのスポーツディレクターであるグリシャ・ニーアマン氏が明かしたことで、彼の回復状況を見ながら柔軟に対応しようという姿勢が見て取れました。しかし、最終的には、彼らは最初の計画に固執することを選択しました。これは、ヴィンゲゴーの回復が順調であること、そして何よりも、彼らがツールに向けて練り上げてきた準備プランに絶対的な自信があることの表れであると言えるでしょう。怪我の功名とまでは言いませんが、無理なレース出場を避け、回復と基礎作りに時間を費やせたことが、結果的に最善の選択となったのかもしれません。

ツール制覇への緻密な準備が始まった

では、具体的にどのような準備が始まったのでしょうか。今週、ヴィンゲゴーはデンマークのオールボーで風洞実験を行いました。これは、バイク上での空気抵抗を最小限にするためのポジション調整が目的です。タイムトライアルはもちろん、平坦区間や下りでの空気抵抗は、グランツールのような長丁場では大きな差を生みます。彼のようなクライマーであっても、ツールで勝つためには細部にまでこだわる必要があるのです。なるほど、彼は既に「ツールモード」に入っているわけですね。

この風洞実験の後、彼はチームメートと共にスペインのアルレニス・シエラネバダへ移動し、高地トレーニング合宿を行います。高地でのトレーニングは、心肺機能の向上に不可欠です。そして、その成果を試す場として、6月にはクリテリウム・デュ・ドーフィネに出場します。ドーフィネはツール・ド・フランスの前哨戦として非常に重要であり、例年ツールで総合上位を狙う選手たちが集結します。ドーフィネ後には、さらにティニュでの高地合宿を挟み、万全の体制でツールを迎える計画です。非常に合理的で、かつヴィンゲゴーの特性を最大限に引き出すためのプログラムであると言えるでしょう。

「レースに戻るのが本当に楽しみ」ヴィンゲゴーの言葉から読み解く心境

チームのウェブサイトで、ヴィンゲゴーは現在の心境を語っています。「今週はオールボーの風洞実験でツール・ド・フランス、特にバイクポジションの準備を進めました。これに取り組むことは重要ですし、偶然に任せることはできません」。彼の言葉からは、ツール制覇に向けた揺るぎないプロ意識と、細部への徹底したこだわりが感じられます。

また、怪我からの回復については、「今はもう何も問題ありませんし、体の不調もありません」と明言。パリ～ニースとカタルーニャ一周を欠場したことは残念だったとしながらも、「今は問題なくトレーニングできていますし、すぐに高地合宿に出発します」と、前向きな姿勢を見せています。

そして、彼の言葉で最も印象的だったのはこれです。「レースに戻るのが本当に楽しみです。昨年はあまりレースを走っていませんから、クリテリウム・デュ・ドーフィネも、そしてもちろんツール・ド・フランスも、またレースを始めるのが本当に楽しみです」。昨年の圧倒的な強さとは裏腹に、彼は意外とレース数を絞る傾向にあります。だからこそ、レースへの飢え、勝利への渇望は人一倍強いのかもしれません。彼の言葉の裏には、「早くあの舞台に戻って、自分の力を証明したい」という強い意志が宿っているように感じます。

ドーフィネでの再会、そしてツールへ

ヴィンゲゴーのプログラムが確定したことで、今年の夏の主役たちの動向がより明確になりました。特に注目されるのは、クリテリウム・デュ・ドーフィネでのタデイ・ポガチャルとの再戦の可能性です。両雄がツール前に直接対決するのは、ファンにとっては何よりの楽しみでしょう。ドーフィネでの彼らの走り、そしてチーム ヴィスマ・リースアバイクとUAEチームエミレーツ・XRGの駆け引きは、ツールの行方を占う上で非常に重要なヒントを与えてくれるはずです。

ヴィンゲゴーの今シーズンの主要プログラムは、ドーフィネ、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ、そしてUCI世界選手権 キガリと続きます。怪我からの順調な回復を確認できた今、彼のツール連覇に向けた挑戦に、改めて期待が高まります。さあ、ロードレースの夏はもうすぐそこです！