他が倒れる中、彼だけが浮く。ファンデルプール、技術でも勝利

ファンデルプール、なぜ彼は唯一無二なのか？ パヴェを制するテクニックと才能

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは！山田健一です。今回は、マチュー・ファンデルプールがいかにして他の選手と一線を画し、パヴェを支配するのか、その秘密に迫ります。

ロードレース界の異才、ファンデルプールの卓越した技術

近年、タデイ・ポガチャルの圧倒的な強さが際立っていますが、マチュー・ファンデルプールは、そのポガチャルに唯一対抗できる存在と言えるでしょう。ミラノ～サンレモではポガチャルを打ち破り、ロンド・ファン・フラーンデレンでは敗れたものの、パリ～ルーベでは見事な勝利を飾りました。彼の走りは、単なるパワーだけではありません。卓越したバイクコントロール、冷静な判断力、そして何よりもパヴェに対する深い理解が、勝利の鍵となっているのです。

バイクと一体化する異次元のライディング

ファンデルプールのチームメイトは、「彼はバイクと一体化している」と評します。その言葉通り、彼のライディングは、まるでバイクが体の一部であるかのように自然です。ツール・ド・フランス2024の第20ステージ、ニースからコル・ド・ラ・クユールへの山岳ステージでの出来事は、彼の技術の高さを物語っています。パンクに見舞われ、ホイール交換を待つ間、彼はパンクしたまま走り続けたのです。ロンドアバウトでは、後輪が滑るというアクシデントに見舞われましたが、冷静に対処し、転倒を回避しました。さらに、上り坂では、落ちていたボトルを避けるために、フロントホイールを空中で回転させるという離れ業まで披露しました。

まるで「撫でる」ようなハンドルさばき

パヴェでのファンデルプールのハンドルさばきは、他の選手とは明らかに異なります。他の選手が、衝撃を和らげるためにグローブやパッドでハンドルを強く握りしめるのに対し、彼は素手で、まるで「撫でる」ように軽くハンドルを握ります。パヴェの衝撃を真正面から受け止めるのではなく、受け流すようなイメージでしょうか。

ファンデルプールは、シクロクロスやマウンテンバイクの経験から、ハンドル上部を持つことが多いようです。そして、肘を曲げ、体を低く構えることで、安定性を高めています。フレームサイズも標準的なものを選び、流行に左右されないクラシカルなポジションを維持しています。

パリ～ルーベで見せた「格」の違い

ファンデルプールにとって、パリ～ルーベは特別なレースです。彼は、その独特な走行テクニックで、石畳の上をまるで滑るように、あるいは浮いているかのように走ります。一見すると、全く力を使っていないように見えるかもしれませんが、実際には、驚異的なパワーと技術が融合した、高度なライディングなのです。

シクロクロスの経験も、彼のパヴェでの走りに大きく貢献しています。幼い頃から泥の中で培ってきたバイクコントロール技術は、他の追随を許しません。2025年のパリ～ルーベでは、ポガチャルが落車するアクシデントがありましたが、ファンデルプールは、寸前のところでこれを回避しました。

ロードレースの枠を超えた「トータル・サイクリスト」

ファンデルプールは、ロードレースだけでなく、シクロクロス、マウンテンバイク、グラベルレースでも世界チャンピオンに輝いています。彼は、まさに「トータル・サイクリスト」と呼ぶにふさわしい存在です。

ロードレースでは、優れたスプリント力とアジリティを発揮し、シクロクロスでは、テクニック、スタミナ、適応力を活かしています。マウンテンバイクでは、自由な発想で、ロードレースとは異なる楽しみ方を見出しています。グラベルレースでは、その経験が活かされ、世界チャンピオンの座を獲得しました。

ファンデルプールは、ロードレースの世界に、新たな風を吹き込んでいます。彼の攻撃的なスタイルは、多くのファンを魅了し、ロードレースの戦術にも大きな影響を与えました。「最初からスプリントするんだ。260km走った後もね。アタックして一人で走る方が、誰かの後ろで苦しむよりも楽なんだ。」という彼の言葉は、彼の哲学を象徴しています。

ファンデルプールは、これからもロードレース界を席巻し続けるでしょう。彼の活躍から目が離せません！