ツール・ド・フランス前哨戦！ポガチャルとヴィンゲゴーの頂上対決

ツール・ド・フランス前哨戦、ドーフィネ開幕！ポガチャル対ヴィンゲゴー、心理戦の火蓋が切られる

いよいよ夏の気配が色濃くなり、サイクルロードレース界の熱気も高まってきました。来る7月、真夏の祭典ツール・ド・フランスが我々を待っていますが、その前哨戦として今週末開幕するクリテリウム・デュ・ドーフィネは、単なるウォーミングアップとは一線を画します。そう、このレースは、タデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーという、現代ロードレース界の二大巨頭が、ツール本番に向けて互いの「脳を食い合う」心理戦の第一ラウンドとなるからです。現地フランスのアリエ県から、山田健一がお届けします。

真夏の祭典への序章：ドーフィネが示すもの

ヨーロッパのロードレースシーズンは、まるで移り変わる季節そのもののようです。春のクラシックが土や石畳の匂いをまとっていたとすれば、今や空気は澄み渡り、アルプスの山々からは冬の装いが次第に剥がれ落ち、ピレネーの牧草地では羊飼いたちが夏山へと移動する「エスティヴ」の時期を迎えています。トゥールマレー峠をはじめとするツール・ド・フランスの象徴的な「巨人」たちが、その緑の修道院のような静けさの中で、クライマーたちの到来を静かに待っているのです。この時期、選手たちは高地トレーニングを終え、シエラネバダやカナリア諸島の灼熱の太陽の下で培った持久力を披露する準備を整えています。

タデイ・ポガチャルは、まさにこの「土」と「空気」という異なる要素を融合させる稀有な選手です。春のクラシックシーズンでは、泥だらけの鎧をまとい、ストラーデ・ビアンケ、ロンド・ファン・フラーンデレン、フレッシュ・ワロンヌ、そして「ドワイエンヌ」ことリエージュ〜バストーニュ〜リエージュを制覇し、パリ〜ルーベで2位、アムステル・ゴールド・レースで2位、ミラノ〜サンレモで3位という驚異的な成績を収めました。4月末にその「泥の鎧」を脱ぎ捨てた世界チャンピオンは、いよいよグランツール仕様の軽量なウェアを身にまとい、新たな冒険へと乗り出します。彼の表情からは、クラシックでの充実感と、次なる目標への静かな闘志がひしひしと伝わってきますね。

因縁のライバル、約1年ぶりの再会

しかし、ポガチャルの春のセンセーショナルな活躍をそのままドーフィネに持ち込むと考えるのは早計です。この日曜日、ドーフィネのスタートラインに立つ時、彼らの「カウンター」はゼロにリセットされるのです。もちろん、ポガチャルが心配する必要があるという意味ではありません。2023年のツール・ド・フランスで2位に終わったことを「失敗」と見なすならば、彼はこの2年間、一度もレースを外していません。しかし、彼は今、舞台を変え、対戦相手も変えています。北の石畳で見せたパフォーマンスが、これからの数週間でそのまま通用するわけではありません。

春にはマチュー・ファンデルプールと激しいバトルを繰り広げたポガチャルですが、今度はより華奢でありながら、決して劣らぬ強靭さを持つヨナス・ヴィンゲゴーと対峙します。彼らが顔を合わせるのは、今シーズン初めて、いや、昨年のツール・ド・フランス以来、約1年ぶりのことです。この再会がこれほどまでに注目されるのは、両者ともに怪我からの復帰という「アスタリスク」が付かない、純粋なコンディションでの対決だからです。「なるほど！」と思われた方も多いのではないでしょうか？ 彼らがシーズンこの時期に、最高の状態に近い位置にいると考えない理由はありません。ドーフィネはツール・ド・フランスそのものではありませんが、非常に重要な通過点であることは間違いありません。確かに、ドーフィネの優勝者がシャンゼリゼの表彰台に上がることが保証されているわけではありませんが、ここで示されるレベルは、リールでのツール開幕とほとんど同じものになるでしょう。なぜなら、その間の高地トレーニングは、回復と微調整が主であり、大幅なコンディションの変動は期待できないからです。したがって、今週、両者の間にあまりにも大きな差が開くようなことがあれば、それはどちらかの選手にとって悪い知らせとなるでしょう。

心理戦の行方：ヴィンゲゴーの重圧とレムコの存在

しかし、この対決は、何よりもまず心理的な駆け引きとなるでしょう。ツール・ド・フランスまでの間、相手に与える最初の「噛みつき」、あるいは有利な点として活用するか、あるいは消化しなければならない不利な点として受け止めるか、それは選手次第です。このゲームにおいて、ヨナス・ヴィンゲゴーの方がより大きなプレッシャーを抱え、より安心感を求めているように見えます。デンマーク人である彼は、ポガチャルの春のショーを無視することはできませんでした。一方、ヴィンゲゴー自身は、パリ〜ニースでの落車とそれに伴う脳震盪で複雑なシーズン序盤を送っていました。躍動する虹色のジャージ（世界チャンピオンの証）をまとったポガチャルと、チーム ヴィスマ・リースアバイクのリーダーを取り巻く陰鬱な空気とのコントラストは鮮烈でした。

ヴィンゲゴーは最近、自分が以前とは違う人間になったと説明していますが、昨年のバスク地方での恐ろしい落車による精神的な影響を彼が完全に払拭できたのかは定かではありません。3月の新たな頭部への衝撃が、そのトラウマを呼び覚ましていないとも限りません。「へぇ～」と唸らされるような、選手の内面まで踏み込んだ話ですね。この日曜日から、ヨナス・ヴィンゲゴーは、過去にも心理的な脆さと闘ってきた彼自身が、これらの重荷やブレーキから解放されなければなりません。そして、そのすべてを、彼の最大のライバルであるポガチャルと対峙しながら行うのです。ポガチャルは、高地に至るまで、ヴィンゲゴーの耳元でブンブンと音を立てる機会を逃さないでしょう。

さらに、春のライバルであったマチュー・ファンデルプールは、この心理戦において素晴らしい「共犯者」となるでしょう。彼はMTBでの舟状骨骨折の後遺症で手首がまだ少し敏感だとしても、常に火をつける準備ができています。そして、ドーフィネとツール・ド・フランスのもう一人の優勝候補、レムコ・エヴェネプールも、もし冬の重い落車から完全に回復していれば、この火に油を注ぐことでしょう。ヴィンゲゴーは、レムコに相談することもできるかもしれません。なぜなら、常に立ち直る道を知っている選手がいるとすれば、それは紛れもなくベルギー人であるレムコ・エヴェネプールだからです。まさに「そうだったのか！」と膝を打つような、深い洞察がここにはあります。

ドーフィネが示す、ツールへの布石

クリテリウム・デュ・ドーフィネは、ツール・ド・フランスへの最終調整の場であり、選手たちのコンディションや心理状態が如実に表れる舞台です。特に、タデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーという二大巨頭が、お互いの手の内を探り、精神的な優位を築こうとする様は、まさに人間ドラマがそこにはあります。「確かに！」と、皆さんも共感されるのではないでしょうか。彼らがこのドーフィネでどのような戦略を立て、どのような走りを見せるのか。そして、その結果がツール・ド・フランス本番にどう影響するのか、非常に興味深いところです。

夏のグランツールへ、加速する期待

今回のドーフィネは、単なる前哨戦以上の意味を持つことは間違いありません。ポガチャルとヴィンゲゴーの直接対決は、私たちファンにとって、夏のグランツールへの期待を最高潮に高めてくれることでしょう。彼らの走り、そして彼らの表情や声のトーンから、私が次の展開を予見できるか、どうぞご期待ください。このドーフィネでの「最初の噛みつき」が、7月のフランスを舞台にした壮大な物語のプロローグとなることは間違いありません。次もぜひ、私の記事をお読みください！