デルフィネドーでポガチャルが総合優勝、キャリア99勝目。最終ステージはマルティネスが制す。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ、タデイ・ポガチャルが圧倒的勝利！ツール・ド・フランスへ向けた王者の最終調整

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。山田 健一です。グランツールを中心に、ヨーロッパの主要レースを追い続けている私にとって、この時期のクリテリウム・デュ・ドーフィネは、まさにツール・ド・フランスの前哨戦として、その行方に肌で感じるものがあります。今年のドーフィネは、タデイ・ポガチャルの圧倒的な強さが際立つ大会となりました。最終ステージを終え、彼は見事総合優勝を飾り、キャリア通算99勝目という節目を刻んだのです。これは単なる勝利以上の意味を持つと私は見ています。ツール・ド・フランスでの宿命のライバル、ヨナス・ヴィンゲゴーとの再戦が目前に迫る中、ポガチャルがドーフィネで見せたパフォーマンスは、今年の夏、フランスの地で繰り広げられるであろう壮絶な戦いの序章に他なりません。さあ、ドーフィネの最終日を振り返りながら、来るツール・ド・フランスの行方を予見していきましょう。

モン・スニで輝いた若き星と、王者の戦術

最終ステージは、モン・スニへの133kmの道のり。この険しい山頂フィニッシュを制したのは、Bahrain-Victoriousの若きフランス人、レニー・マルティネスでした。21歳という年齢で、グランツール級のステージレースの最終山岳ステージを独走で勝利するという快挙は、彼の未来を予感させるに十分な輝きを放っていましたね。ゴールラインを駆け抜けた彼の表情には、若々しい情熱と確かな自信が漲っていました。

一方、そのマルティネスから36秒遅れてゴールしたのは、総合争いを繰り広げるタデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴー。彼らは最後の登りで、レムコ・エヴェネプールやアレクサンダー・リポヴィッツといった直接のライバルたちを突き放し、二人揃ってフィニッシュしました。このシーンは非常に興味深いものでした。「なぜポガチャルはステージ勝利を狙わなかったのか？」「ヴィンゲゴーはなぜ仕掛けなかったのか？」そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これはツール・ド・フランスを前にした、まさに「王者の戦術」だったと私は見ています。二人は互いの脚を測りつつも、無駄な消耗を避け、あくまで総合優勝と調整という大目標に集中していたのでしょう。特にポガチャルは既に総合首位を盤石にしていたため、無理にリスクを冒す必要はなかったのです。

ポガチャル、ドーフィネ初制覇とキャリア99勝の重み

タデイ・ポガチャルは、今回のクリテリウム・デュ・ドーフィネでキャリア初の総合優勝を飾りました。2020年には4位に終わったこのレースで、彼は今大会、第1ステージ、第6ステージ、第7ステージと、実に3つのステージで勝利を挙げ、圧倒的な強さを見せつけました。これは、彼がどれほど進化し続けているかを示す証拠に他なりません。世界チャンピオンのジャージをまとい、UAEチームエミレーツ・XRGのエースとして、常に勝利を義務付けられる中で、この安定したパフォーマンスを発揮できる選手はそう多くはありません。

そして、この総合優勝は、彼のキャリア通算99勝目という記念すべき勝利でもありました。デビューからわずか数年で、これほどの勝利数を積み重ねる選手は稀有な存在です。彼の脚質、勝負勘、そして何よりも勝利への飽くなき執念が、この数字に表れていると言えるでしょう。100勝という大台を目前に控えたポガチャルは、このドーフィネでの勝利を最高の自信として、次の大舞台へと向かいます。彼の表情からは、充実感とともに、来るべき戦いへの静かなる闘志が感じられました。

ツール・ド・フランスへの序章：宿命のライバル対決、その行方

最終的な総合タイム差は、タデイ・ポガチャルがヨナス・ヴィンゲゴーに対し59秒差をつけての勝利となりました。この差は、ドーフィネという調整レースにおけるものとしては、ポガチャルの優位性を示す十分な数字と言えるでしょう。しかし、ツール・ド・フランスはまた別の物語です。3週間にわたる過酷な戦いの中で、何が起こるか予測はつきません。

レムコ・エヴェネプールやアレクサンダー・リポヴィッツといった選手たちも、このドーフィネで自身の状態を確認し、ツール・ド・フランスに向けて課題を見つけたことでしょう。彼らもまた、ツールでは主役の一角を担う可能性を秘めています。

今年のツール・ド・フランスは、7月5日にフランスのリールからスタートします。ポガチャルとヴィンゲゴー、この二人の宿命のライバルが、再びフランスの道を舞台に激突する。ドーフィネで見せた彼らの「準備」は、来るツールの「本番」で、どのような「真剣勝負」へと昇華されるのでしょうか？ 私も今から胸が高鳴ってやみません。皆さんも、彼らの動向から目を離さないでください。今年の夏は、きっと歴史に残るツール・ド・フランスになることでしょう。