オランダ森林管理局、ディーメルシェグに新ルート発表

アムステルダム近郊に新ルート！ オランダのサイクリング文化の深層を探る

皆さん、こんにちは。グランツールを中心に取材している山田 健一です。ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアといった大舞台を追いかける日々ですが、今回は少し視点を変えて、ヨーロッパの日常に根差したサイクリング文化、特にオランダの「フィーツツーリズム」に焦点を当てた興味深いニュースをお届けします。

オランダといえば、ワウト・ファンアールトやマティュー・ファンデルプールといったスーパースターを多数輩出し、まさにサイクリング大国と呼ぶにふさわしい国です。彼らの圧倒的な走りはもちろん魅力的ですが、この国の真の強さは、レースだけでなく、日常の中に深く根付いたサイクリング文化にあると私は見ています。今回、オランダ森林管理局がアムステルダム近郊に新たなサイクリングルートを開発したというニュースは、まさにその一端を示すものと言えるでしょう。

都市と自然を結ぶ「ディーメルスヘフ」地域

今回、オランダ森林管理局が開発した新しいサイクリングルートは、「ディーメルスヘフ」と呼ばれる地域を通ります。このディーメルスヘフは、アムステルダム、ディーメン、そしてフェフト地方を結ぶ、いわば都市近郊の「緑のオアシス」のような場所です。大都市アムステルダムのすぐ近くに、これほど豊かな自然が残されているというのは、驚きですよね。

グランツールで訪れる多くの街も美しいですが、その多くは観光客向けに整備された側面が強い。しかし、こうした日常的に人々が触れ合える自然こそが、その国の文化の基盤を形成している。ディーメルスヘフのような場所があるからこそ、オランダでは老若男女が気軽に自転車に乗り、それが競技へと繋がっていく土壌があるのかもしれません。

歴史と自然を満喫する約30kmの旅

新ルートは約30km。この距離は、本格的なロードレースのトレーニングというよりは、まさに「フィーツツーリズム」にぴったりの長さです。都市公園やディーメルスボスといった自然の中を走り抜けるだけでなく、このルートはオランダの歴史を感じさせる場所も巡ります。

特に興味深いのは、かつてオランダを外敵から守るために築かれた「オランダ水線」の歴史的な砦や、要塞都市マイデン、ウェースプを通る点です。自転車で巡ることで、単なる観光地としてではなく、その土地の歴史的な背景や、人々がどのように暮らしてきたのかを肌で感じることができます。イタリアの古城やフランスのワイン畑を巡るサイクリングも魅力的ですが、水の国オランダならではの歴史遺産を自転車で辿るというのも、「なるほど！」と思わせるユニークな体験ではないでしょうか。

特別な一日：オープンハウスイベント

さらに、2025年5月24日には、ルート沿いのいくつかの特別な場所が一般公開されるとのこと。1707年建造のガースペルモレンという風車や、マイデンにあるグローテ・ゼー・スロイスという大きな閘門、そしてボーダーレイ・ゼーホーヴェという農場など、普段はなかなか見られない場所に入れるのは嬉しいですね。

ディーメルファイフフックでは、森の番人がこの地域の「原初の自然」について語ってくれるそうです。「都市のすぐそばに、手つかずの自然がある」という事実。これは、環境保護への意識が高いオランダらしい取り組みであり、「へぇ～」と唸らされるトリビア的な情報です。こうしたイベントを通じて、地元の人々が自分たちの地域の自然や歴史をいかに大切にしているかを知ることも、フィーツツーリズムの醍醐味と言えるでしょう。

山田の視点：レース大国オランダのもう一つの顔

グランツールの現場で、私は選手たちの張り詰めた表情や、勝利にかける情熱を間近で見てきました。しかし、今回のようなフィーツツーリズムのニュースに触れると、彼らが育ってきた環境、つまり、日常的に自転車が身近にある文化の重要性を改めて感じます。

レースで頂点を目指す選手も、週末に家族とサイクリングを楽しむ人も、同じ「自転車」というツールを通じて、この国の豊かな自然や歴史、そして人々と繋がっている。これは、単に競技が強いというだけでなく、文化としてのサイクリングが成熟している証ではないでしょうか。「確かに！」と共感していただける方も多いはずです。

日本でもサイクリングの人気は高まっていますが、ヨーロッパ、特にオランダのような国から学ぶべき点は多いと感じています。レース観戦も素晴らしいですが、次にヨーロッパを訪れる機会があれば、こうした日常的なサイクリングルートを巡ってみるのも、きっと新たな発見があるはずです。

今回の新しいルート開発は、オランダのフィーツツーリズムが今後ますます多様化し、魅力的なものになっていくことを予感させます。「そうだったのか！」と思えるような、その土地ならではの物語が詰まったルートが、これからも増えていくことを期待しています。私も、いつかこのディーメルスヘフのルートを自転車で走ってみたいものです。