ポガチャルとヴィンゲゴー、早くも手がつけられない強さ

最強の狂宴、ドーフィネ開幕！ ポガチャルとヴィンゲゴーが演じた「クラシック」な初日

「狂宴」という言葉がこれほどまでにしっくりくる日があるだろうか。ツール・ド・フランスの前哨戦として名高いクリテリウム・デュ・ドーフィネの初日、誰もがスプリンターたちの舞台になると予想していた平坦ステージは、タデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーという二人の「怪物」によって、まるでクラシックレースのような激しい展開へと変貌を遂げた。勝利はポガチャルが掴み取ったものの、この日最も印象的だったのは、ヴィンゲゴーが見せた、これまでの彼とは異なる、意外なまでの攻撃性だった。

序盤から解き放たれた「狂犬」たち

多くの選手にとって、このクリテリウム・デュ・ドーフィネの開幕戦は、シーズン後半戦へのウォーミングアップ、あるいはツール・ド・フランスに向けた調整の場となるはずだった。特に、モンリュソン（アリエ県）の街にゴールする平坦なコースレイアウトは、スプリンターたちが久々に主役の座を射止める絶好の機会に見えたことだろう。しかし、現代ロードレースのトップを走る選手たち、特にグランツール総合優勝を狙う「貴族」たちは、もはやそんな「暗黙の了解」など持ち合わせていない。彼らはまるで、何週間も靴箱に閉じ込められていた子犬が解き放たれたかのように、初日から猛然と牙を剥いた。

私が現地で感じたのは、一種の「常識破り」とも言える彼らの衝動だった。タデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、レムコ・エヴェネプール、マチュー・ファンデルプール……この名前を聞くだけで、レースがただの調整レースに終わるはずがないことは、もはや明白だったのかもしれない。彼らは「平和な時間」など存在しないかのように、初日から火花を散らし、まるでクラシックレースのような激しいアタックと追走を繰り返した。この展開は、スプリンターたちにとって悪夢であったに違いないが、私たちファンにとっては、これ以上ない最高のエンターテイメントとなった。「なるほど！」と膝を打つような、予測不能な展開が、このドーフィネの初日に詰まっていたのだ。

静寂を破った「あの男」の仕掛け

この日の主役は、勝利を飾ったタデイ・ポガチャルではなかったと、私は断言したい。ポガチャル自身もレース後、「僕はアタックしなかった、ただタイヤを追っただけだ」と語っている。まるで、勝利が彼にとって当然の結果であり、その過程は他者が作った舞台に乗ったに過ぎないと言わんばかりの口ぶりだった。では、その舞台を作ったのは誰か？ そう、ヨナス・ヴィンゲゴーである。

残り5.6km、この日の最後の難所であるビュフォン峠の頂上を越えた直後だった。UAEチームのスポーツディレクター、アンドレイ・ハウプトマンが「ヨナスがアタックすれば、追うしかない」と語ったように、ヴィンゲゴーはその瞬間を逃さなかった。チームメイトのマッテオ・ジョーゲンソンとベン・トゥレットがそれまでの展開で集団の緊張感を高めていたことも、このアタックの伏線となったのは間違いない。ヴィンゲゴーが放った火花は、瞬く間に集団を分裂させ、彼自身とタデイ・ポガチャル、そしてマチュー・ファンデルプール、レムコ・エヴェネプール、サンティアゴ・ブイトラゴという、まさに「ロイヤルエスケープ」と呼ぶにふさわしい5人の強力な選手たちを先行させたのだ。この5人が、そのまま僅かながらもリードを保ち、ゴールラインへと雪崩れ込んだ。平坦ステージで、これほどまでのビッグネームがアタック合戦を演じ、そのまま上位を独占するとは、一体誰が想像し得ただろうか。「へぇ～」と唸るような、ロードレースの常識を覆す一幕だった。

ヴィンゲゴーの「変貌」とポガチャルの「本音」

3月のレース以来、久々の実戦となるヨナス・ヴィンゲゴー。彼のコンディションについては様々な憶測が飛び交っていたが、この日の走りは、その不安を完全に払拭するものであった。スプリントでタデイ・ポガチャルにこそ敗れたものの、その力強い走りは、彼がすでに最高の状態にあることを示していた。しかし、それ以上に注目すべきは、彼がこれまで見せてきた慎重なレース運びからの「変貌」だ。

過去、ヨナス・ヴィンゲゴーはタデイ・ポガチャルとの対決では、ボーナスタイムやリスクを極度に避け、チームの戦略に忠実に徹する傾向が強かった。しかし、この日は違った。ボーナスタイムを失う可能性を顧みず、自ら火をつけ、攻めに出たのだ。タデイ・ポガチャルがヨナス・ヴィンゲゴーのアタックを「良い兆候だ、彼はレースをしたいし、バイクを楽しみたいんだ」と歓迎しつつ、「彼らはとても強いから少し怖い」と本音を漏らしたのは、ヨナス・ヴィンゲゴーのこの新しいアプローチに対する驚きと、同時に警戒心からくるものだろう。「確かに！」と共感を覚える、ヨナス・ヴィンゲゴーの新たな一面が露呈した瞬間だった。マチュー・ファンデルプールも手首の怪我を抱えながらも「並外れた」走りを見せ、レムコ・エヴェネプールも反応こそ遅れたものの、前方のビッグネームたちに難なく追いつく強さを見せた。この日のレースは、単なるステージ優勝争いを超え、ツール・ド・フランスでの覇権を争う者たちの、新たな心理戦の幕開けを予感させるものだったのだ。

本能が導いた勝利、そして次なる激突への期待

結局のところ、勝利はタデイ・ポガチャルの手に収まった。チームメイトのパヴェル・シヴァコフが「本能的、ポガチャルらしく」と笑顔で語ったように、彼の勝利はまさに「本能」と「直感」に導かれたものだった。しかし、同時に彼は「コントロール」もしていたという。これは、彼のこれまでの爆発的なアタックとは少し異なる、新たな成熟を示唆しているのかもしれない。

このクリテリウム・デュ・ドーフィネは、まだ始まったばかりだ。しかし、初日からこれほどの「狂宴」が繰り広げられたことで、私たちはすでに、この先のステージで何が起こるのか、期待に胸を膨らませている。特に、ヨナス・ヴィンゲゴーが見せた新たな攻撃的な姿勢が今後どう影響していくのか、そしてタデイ・ポガチャルがそれに対してどう対応していくのか、目が離せない。SNSではすでに、この日の展開に関する議論が白熱し、多くのファンが「そうだったのか！」と驚きを隠せない様子だ。今年のツール・ド・フランスは、これまで以上に予測不能で、伝説的な戦いになる予感がする。このドーフィネは、その壮大な物語のプロローグに過ぎない。次も読みたい！と誰もが思うような、興奮の展開が待っているに違いない。