モビスター、ブエルタで勢い増す「一戦必勝」の戦い

ブエルタ・フェミニーナ序盤戦：モビスター チームの「シメオネ・モード」とタイムトライアルの波紋

ブエルタ・フェミニーナ by Carrefour.es が開幕しましたね。女子のグランツールとして注目度が増しているこのレース、序盤から早くも波乱含みの展開となっています。特に私が注目しているのは、スペインの強豪、モビスター チームの動きです。チームタイムトライアルでの不可解な制裁から始まった彼らのブエルタ。チーム女性部門の責任者であるセバス・ウンズエ氏が、現地メディア『MARCA』に語った言葉から、その胸の内を探ってみましょう。

荒れた開幕戦と「不公平」への本音

今年のブエルタ・フェミニーナはバルセロナでのチームタイムトライアルで幕を開けました。このTTT、スタート前から機材チェックの遅れなどで混乱が見られたのですが、モビスター チームはこの初日に大きな不利を背負うことになります。タイムトライアル後の制裁です。

ウンズエ氏は『MARCA』のインタビューで、この制裁についてかなり率直な思いを語っています。「不公平だった」と。もちろん、レギュレーションに違反した以上、制裁は受け入れるべきだという姿勢も示していますが、その背景にあるレース運営側の問題点、特にコミッセール（審判員）の不十分な体制や処理の非効率さによって、自分たちが「払い損になった」というニュアンスが強く感じられます。

「コミッセールが足りず、最初のチームから遅延が始まった」「不公平だった」「日曜はコミッセールと30分電話し、月曜は直接話したが、どうレギュレーションが適用されたのか未だに分からない」とまで言っています。これは異例の強い言葉ですね。通常、チームの責任者が公の場でここまで運営を批判することは稀です。それだけ、チームとしては納得がいかない部分が大きかったのでしょう。

さらに興味深いのは、「レギュレーションは非常に明確だ。そして我々は遅れて到着したことで違反を犯した。だから制裁は受け入れるべきだ」としながらも、「しかし、レギュレーションが公平に適用され、日曜日に起こったような例外が行われないことを願いたい」と付け加えている点です。これは、他のチームにも同様の、あるいはそれ以上の違反があったにも関わらず、制裁を受けなかったケースがあったことを示唆しているようにも聞こえます。実際、記事にはVismaの選手（マーレン・ロイサーのことか？）がタイムトライアルで禁止された場所からスタートしたにも関わられず制裁がなかった、という記述もあります。ああ、なるほど、そういうことか、と膝を打ちましたね。モビスター チームは自分たちのミスも認めているが、レース全体の不公平さにも言及しているわけです。このあたりの機微は、現地で取材しているからこそ感じ取れる温度感でしょう。

「シメオネ・モード」で日々の戦いへ

しかし、ウンズエ氏は過去に囚われてはいません。彼らしい前向きな姿勢が見えます。「私はそういうこと（過去）に囚われず、すぐに未来を考えるのが得意だ」と語り、TTTの制裁は受け入れつつ、気持ちを切り替えているようです。

そして、今のチームの精神状態を表す言葉として、サッカーのアトレティコ・マドリードを率いるディエゴ・シメオネ監督の有名な哲学になぞらえ、「Vamos en modo Cholo Simeone, partido a partido, día a día（チョロ・シメオネ・モードで行く、試合から試合へ、一日一日だ）」と表現しています。これは、大きな目標（総合優勝など）を見据えつつも、まずは目の前のレース、その日その日に全力を尽くすという強い意志の表れでしょう。最近モビスターがQuantumと提携し、アトレティコ・マドリードとも関係ができたことに触れ、「その精神を取り入れたようだ」とユーモアも交えています。

TTTでの遅れは痛いですが、まだレースは序盤です。この「シメオネ・モード」で、一日ずつタイムを取り戻し、最終的に総合争いに絡んでいく戦略が見えますね。初日のキャット・ファーグソンの落車という不運もありましたが、「それでもチームは元気だ」と語っており、チーム全体の雰囲気は悪くないようです。

総合争いの行方とキープレーヤー

TTTの結果が総合順位をある程度「歪めている」とウンズエ氏も指摘するように、現在のリーダーボードは混沌としています。サプライズでレティツィア・パテルノステル (リブ・アルウラー・ジェイコ) がリーダーになっていますが、これはスプリント勝利によるボーナスタイムが大きいです。フェムケ・ヘリッツェ (SD Worx) やアンナ・ヘンダーソン (Lidl-Trek) ら有力選手も僅差につけており、特にLidl-TrekはTTT勝利で複数の選手がトップ10に入っています。

しかし、ウンズエ氏は「総合で良い結果を残す現実的なオプションがあると思う」と語っており、特にマーレン・ロイサーに期待を寄せているようです。「元気だ。本当の強さは山で見られるだろう」と。マーレン・ロイサーはTTTで制裁を受けなかった選手ですが、これは偶然の一致なのか、それとも別の理由があるのか…。いずれにせよ、彼女の山岳での走りがモビスター チームの総合争いの鍵となるでしょう。

そして、最大のライバルとして「Demi ボディネ・フォレリングが本命だ。非常に高いレベルにいる」と名指ししています。これは確かに頷けますね。彼女はArdennesクラシックでも圧倒的な強さを見せていました。しかし、「他の危険な選手もいる。レベルは非常に拮抗している」とも述べており、一人の選手に絞らず、複数のライバルを警戒している様子がうかがえます。

山岳が全てを決める！残りの5ステージ展望

ブエルタ・フェミニーナは残り5ステージ。平坦ステージや丘陵ステージもありますが、全てを決めるのはやはり山岳でしょう。特に終盤には、ラグナス・デ・ネイラやアルト・デ・コトベーリョといった厳しい登りが待ち構えています。ウンズエ氏も「週末、特に山岳でどうなるか見ものだ」と語っており、これらのクイーンステージが総合順位を大きく動かすと見ています。

平坦ステージでも、ウンズエ氏が指摘するように風による集団の分裂（アバニコ）が起こる可能性があり、これも総合争いに影響を与える要素です。風はレースを「決定的」にはしないかもしれないが、「ライバルを引き離すのに役立つ」と、その戦術的な重要性を語っています。このあたり、スペインのレースを知り尽くしたウンズエ氏ならではの視点と言えるでしょう。

若き才能、キャット・ファーグソンへの期待と配慮

モビスター チームにとって、そして世界の女子サイクルロードレース界にとって、キャット・ファーグソンは間違いなく未来を担う存在です。ウンズエ氏も彼女への期待は大きいようですが、同時に非常に慎重な姿勢を見せています。

「一部のメディアからのプレッシャーはあるが、我々からはかけていない」と断言し、「 enormousな才能を持った子だが、19歳だ。それを忘れてはならない。一歩ずつ進むべきだ」と強調しています。今年、落車などで苦労しているキャット・ファーグソンに対し、「悪い時期はいずれ過ぎ去り、良い時期が来るだろう」と励ましつつ、「期待値を測り、自然な形で成長させていくべきだ」と語っています。これは、若い才能を潰さないためのチームの配慮であり、長期的な視点に立った育成哲学ですね。夏のパウラ・オスティス加入にも触れており、若い世代への投資を続けていることが分かります。

モビスター チームのブエルタ・フェミニーナは、TTTの制裁という不利なスタートを切りました。しかし、チーム責任者の言葉からは、それを乗り越え、日々の戦いに集中する「シメオネ・モード」で、総合争いに挑む強い意志が感じられます。特に山岳ステージでのマーレン・ロイサーの走り、そして未来を担うキャット・ファーグソンの成長に、今後も注目していきたいと思います。熱い戦いはこれからですよ！