ラ・ブエルタ・フェメニーナ2025展望：デミ・ボディネ・フォレリングを止められるか？

ラ・ブエルタ・フェミニーナ 2025 プレビュー：デミ・ボディネ・フォレリング王国に挑む者たち

春のクラシック戦線が一段落し、女子プロトンは早くも次の大きな舞台、スペインへと移動しました。いよいよ「ラ・ブエルタ・フェミニーナ」が開幕します。昨年の大会で、まさに異次元とも言える強さを見せつけて総合優勝を飾ったDemi ボディネ・フォレリング。彼女の牙城を崩す選手は現れるのでしょうか？ グランツールを中心に、長年ヨーロッパのレースを追い続けてきた私の視点から、今年のラ・ブエルタ・フェミニーナの見どころ、そして総合争いの行方について深掘りしていきましょう。

昨年を振り返る：ボディネ・フォレリングの支配

2024年大会の記憶はまだ鮮明に残っています。最終日のマルテ・ベルグエドセスへ向かう上りでのDemi ボディネ・フォレリングの走りは、圧巻の一言でした。山岳に入ると他の選手を寄せ付けず、自身の意志を完全に押し通す力強さ。総合2位のリーアンヌ・マルクスに1分49秒、3位のElisa エリーザ・ロンゴボルギーニ Borghiniに2分差をつけるという結果が、その支配力がいかに強固だったかを物語っています。もちろん、途中エヴィータ・ムジックにスプリントで敗れる場面もありましたが、総合優勝争いにおいては彼女の敵はほぼいなかった、と言えるでしょう。

あの時の彼女の表情や声のトーンからは、「勝つべくして勝つ」という揺るぎない自信が感じられました。それは、単に調子が良いというレベルではなく、チーム SDワークス・プロタイムという強力なチームのサポート、緻密な戦略、そして何よりも彼女自身のフィジカルとメンタルの完成度が高次元で融合した結果だったと分析しています。他の選手たちが懸命に食らいつこうとする中、まるで一人だけ違うレースをしているかのような印象さえ受けたほどです。

2025年コース徹底分析：勝負所はどこだ？

今年のラ・ブエルタ・フェミニーナは、全7ステージで構成されています。伝統に則り、初日はバルセロナでのチームタイムトライアルで幕を開けます。わずか8.1kmですが、ここで生まれる数秒の差が、最終的な総合順位に影響を与える可能性も十分にあります。昨年はリドル・トレック Ladiesが最終コーナーでの落車にもめげず勝利を収めるという劇的な展開でしたね。今年も何かが起こるかもしれません。

序盤はスプリンターにチャンスがありそうな平坦ステージが続きますが、スペインのレース特有の「ワイヤーアラーム」が鳴る可能性も忘れてはなりません。特にピレネー山麓の開けた地形を走る第3ステージなどは、風向き一つでレースが混沌とする可能性があります。

しかし、総合争いの真の勝負所は、やはり後半の山岳ステージに集約されるでしょう。第5ステージはラグナス・デ・ネイラへの山頂フィニッシュ。ここはかつてAnna van der BreggenがAnnemiek van Vleutenとの激闘を制した場所であり、Demi ボディネ・フォレリングもその後に勝利を収めています。平均勾配8.8%の厳しい上りは、クライマーたちの力を試します。そして最終第7ステージのコトベジョ。10km以上続く平均勾配8%超えの上りは、まさに最終決戦の舞台。ここで総合優勝者が決定すると言って間違いないでしょう。

ちなみに、第4ステージの終盤に通過するボルハという街には、少し「へぇ～」となるトリビアがあります。地元の教会にあるキリストのフレスコ画が、80代の女性による善意の修復で、良くも悪くも世界的に有名になった場所なのです。レースとは直接関係ありませんが、こんな文化的な背景を知っていると、旅情も深まるというもの。スペイン語圏のレースを担当している私としては、こうした細かい情報にもつい目が行ってしまいますね。

総合優勝争いの行方：ボディネ・フォレリング包囲網は機能するか？

さて、最大の焦点はやはりDemi ボディネ・フォレリングです。彼女は昨年のラ・ブエルタだけでなく、リエージュ～バストーニュ～リエージュでも、体調が万全でない中でも他の選手を圧倒する走りを見せました。山岳での強さは現時点で女子プロトン随一と言えるでしょう。果たして、彼女に土をつける選手は現れるのでしょうか？

対抗馬筆頭として名前が挙がるのは、元女王Anna van der Breggenです。彼女は一度引退し、チーム SDワークス・プロタイムのスポーツディレクターを務めていましたが、現役復帰。ラグナス・デ・ネイラでの勝利経験もあり、ボディネ・フォレリングに唯一対抗できる可能性があるとすれば、彼女の経験と力強い走りに期待が集まります。ただし、まだ復帰間もない彼女が、グランツール級のステージレースでどこまでやれるかは未知数でもあります。

昨年総合上位に入ったジュリエット・ラブースやエヴィータ・ムジック（FDJ・スエズ）も有力候補ですが、ボディネ・フォレリングとの差を埋めるのは容易ではないでしょう。リドル・トレック Ladiesは、昨年2位のリーアンヌ・マルクスに加え、好調のニアム・フィッシャーブラックを擁し、チーム力で対抗しようとするはずです。モビスター チームはマーレン・ロイサーをエースに据える可能性が高いですが、こちらもボディネ・フォレリングのレベルには一歩及ばないというのが率直な見方です。

個人的に注目しているのは、Canyon//SRAM Racingのニーヴ・ブラッドバリーです。昨年のジロ・デ・イタリアで総合3位に入るなど、着実に力をつけています。しかも、チームメイトのカタジナ・ニエウィアドマが彼女のためにアシストに回るという情報もあります。これは「確かに！」と思わせるチーム内の力学ですね。ニーヴ・ブラッドバリーがトップフォームであれば、表彰台、あるいはそれ以上も十分にあり得ます。

その他にも、怪我から復帰したThalita de Jong（ヒューマンパワードヘルス）、アルデンヌクラシックで存在感を見せたセドリーヌ・ケルバオル、地元スペインのベテラン、マビ・ガルシア（リブ・アルウラー・ジェイコ）なども侮れません。特にマビ・ガルシアは今大会に照準を絞って調整してきました。また、ロードレースへの本格復帰を目指すポーリーヌ・フェランプレヴォ（Team Visma | Lease a Bike Women）が山岳でどこまで通用するかも興味深いポイントです。彼女の最大の目標はツール・ド・フランス Femmesでしょうから、このブエルタは重要な試金石となります。

結局のところ、Demi ボディネ・フォレリングを倒すのは、並大抵のことではありません。「たくさん成功してほしいが、成功しすぎてしまうことには注意が必要だ」と、あるチーム関係者が彼女について語っていたのが印象的でした。その言葉の裏には、彼女の圧倒的な才能への畏敬と、それを超えることの難しさへの諦めにも似た感情が滲んでいましたね。

スプリンターたちの戦い、そして天気予報

総合争いだけでなく、ステージ優勝争いも見どころ満載です。特にスプリンターたちにとっては、序盤の平坦ステージが大きなチャンスとなります。マリアンヌ・フォス（Team Visma | Lease a Bike Women）は、言わずと知れたレジェンド。彼女がどんな走りを見せるのか、私も楽しみにしています。さらに、モビスター チームの若き才能、キャット・ファーグソンがプロトンにどんな衝撃を与えるのかも注目すべき点でしょう。ジョージア・ベイカー（リブ・アルウラー・ジェイコ）、ララ・ギレスピー（UAE・チーム・ADQ）、シルヴィア・ザナルディ（ヒューマンパワードヘルス）といった実力者たちも虎視眈々と勝利を狙っているはずです。

忘れてはならないのが天気です。スタート日のバルセロナは雨や雷雨の予報が出ており、週が進むにつれて気温も低下するようです。濡れた路面や寒さは、選手のコンディションに影響を与え、思わぬ落車やトラブルを引き起こす可能性もあります。特に、テクニカルな下りや集団スプリントでは、天候がレース展開を大きく左右することもあるので注意が必要です。

最後に

圧倒的な女王Demi ボディネ・フォレリングに対し、他の選手たちがどのような戦略で挑むのか。チームタイムトライアルでの駆け引き、風による分断の可能性、そして終盤の厳しい山岳ステージ。コースの厳しさ、そして変わりやすいスペインの天気もまた、レースを面白くしてくれる要素です。

果たして、混沌の中から新たなヒロインが生まれるのか。それとも、Demi ボディネ・フォレリングが再び「ラ・ブエルタ・フェミニーナ王国」を支配するのか。目が離せない1週間になりそうです。現地の空気感や、選手たちの生の声なども交えながら、次回のレポートでレースの模様をお届けできればと思っています。日本のファンの皆様、スペインでの熱い戦いを一緒に追いかけましょう！...