Metec-Solarwattで輝く才能 ティボール・デルフロッソ

強豪が見送った異端の才能

ティボール・デルフロッソの名前を意識し始めたのは、彼がジュニアカテゴリーで圧倒的な強さを見せていた頃です。当時のUCIランキングを見れば、ペールストランド・ハーゲネス、ロマン・グレゴワール、キアン・アイデブルックス、アレック・セガールト、スティアン・フレッドハイムといった、今やワールドツアーで活躍する錚々たる顔ぶれと肩を並べていました。オランダ国内では間違いなく最高のジュニア選手であったと言えるでしょう。

しかし、彼がアンダー23カテゴリーへ移行する際、多くの育成チームが彼を見送ったという話を聞いて、私は正直驚きました。特に、オランダのトップチームであるチーム ヴィスマ・リースアバイクの育成チームが彼を獲得しなかったというのは、当時の私には理解しがたいことでした。なぜ、これほどまでの才能を持った選手が、いわゆるエリート育成コースから外れてしまったのか。その背景には、ティボール・デルフロッソがシクロクロスとロードレースの両立を強く望んだことがあると言われています。ヨーロッパの多くのワールドチーム、特に育成チームにおいては、ロードレースに専念することを求める傾向が強い。シクロクロスはあくまでオフシーズンの調整、あるいは専門外と見なされることが少なくありません。「ロードで大成するには、他のことに関わっている暇はない」という、ある種の固定観念があるのかもしれません。彼の「異端」とも言えるスタイルが、その壁に阻まれたのです。

Metec-Solarwattが与えた「自由」

そんなティボール・デルフロッソに手を差し伸べたのが、オランダのコンチネンタルチーム、Metec-Solarwattでした。チームマネージャーのサンミシェル・プレフェンスホーム・オベール93 WE Megens氏は、彼との日々を「とても良い時間だった」と振り返っています。Megens氏が強調するのは、デルフロッソがシクロクロスを続けることを許容したことの重要性です。「シクロクロスは彼にとって信じられないほどのはけ口であり、ロードシーズンに向けたトレーニングとしても非常に有効だった」と彼は語ります。

多くの強豪チームがシクロクロスとの両立を問題視する中、Metec-Solarwattは彼のスタイルを尊重しました。Megens氏は、「もし彼が18歳でいきなりワールドチームの育成チームの型にはめられていたら、どうなっていただろうか」と問いかけます。彼の言葉からは、Metec-Solarwattがティボール・デルフロッソに与えた「自分のペースで、自分のやりたいことを追求する自由」が、彼の才能を歪めることなく、むしろ開花させる上で重要な役割を果たしたことが伺えます。もちろん、デルフロッソ自身の努力が300%であることは言うまでもありませんが、彼が今の選手になる上で、Metec-Solarwattの環境が貢献したというのは「確かに！」と共感できます。

才能が開花したAlpecin-Deceuninckという最適解

Metec-Solarwattで2年間を過ごした後、ティボール・デルフロッソは彼の「夢のチーム」だったというAlpecin-Deceuninckへ移籍します。サンミシェル・プレフェンスホーム・オベール93 WE Megens氏は、この移籍について「彼の感覚に従うようにアドバイスした」と語り、「Alpecin-Deceuninckは彼にとって非常に良い環境だ」と太鼓判を押しています。なぜなら、Alpecin-Deceuninckは、マチュー・ファンデルプールをはじめ、ワウト・ファンアールトやTom Pidcockのように、シクロクロスで培ったスキルをロードレースで活かしている選手たちが活躍するチームだからです。

彼らが証明しているように、シクロクロスで鍛えられるバイクコントロールや瞬発力、そして過酷な状況でのメンタルタフネスは、ロードレース、特にクラシックやアップダウンのあるコースで大きな武器となります。ティボール・デルフロッソがドワールス・ドール・フラーンデレンで6位に入り、ツール・ド・トルコでプロ初勝利を挙げたのは、まさに彼の才能と、彼が歩んできたキャリア、そしてAlpecin-Deceuninckというチーム環境が理想的にかみ合った結果と言えるでしょう。「へぇ～」と思うのは、多くのチームが避けたシクロクロスとの両立という道が、彼を成功へと導く鍵の一つとなったことです。

偉大な先達との比較、そして広がる未来

ティボール・デルフロッソの活躍を見ていると、どうしてもマチュー・ファンデルプールとの比較論が出てきます。同じオランダ人で、シクロクロスとロードの両方で才能を発揮しているのですから、自然な流れでしょう。しかし、サンミシェル・プレフェンスホーム・オベール93 WE Megens氏は、この比較には慎重な姿勢を見せています。「マチューは非常に優れている。ティボールが彼と同じレベルになるには、まだまだ長い道のりがある」と。これは、決してデルフロッソの才能を否定するものではなく、マチュー・ファンデルプールという存在がいかに特別であるかを示すと同時に、若手であるデルフロッソにはこれからいくらでも伸びしろがあるという期待の裏返しでもあると私は感じています。

コメント欄を見ても、ファンは彼の才能に期待を寄せつつも、焦らず見守るべきだという意見や、Metec-Solarwattのような育成チームの重要性を再認識する声、そしてチーム ヴィスマ・リースアバイクのようなトップチームの育成方針への疑問など、様々な議論が交わされています。彼のキャリアは、まさに「そうだったのか！」と驚きと発見に満ちています。

ティボール・デルフロッソの物語は、必ずしも用意されたレールの上を走るだけが全てではないことを教えてくれます。自分のスタイルを貫き、それを理解し、受け入れてくれる環境を見つけることの重要性。これから彼がどんな選手に成長し、どんな勝利を見せてくれるのか。そして、彼の成功が今後の若手選手のキャリア形成にどのような影響を与えるのか。ヨーロッパの現場から、引き続き彼の「異端」な挑戦を追いかけ、皆さんにお伝えしていきたいと思います。次も読みたい！と思っていただけるよう、彼の言葉の裏側や、チーム内の力学なども深掘りしていきたいですね。