ラ・ブエルタ・フェメニーナ 注目ポイント5選

ラ・ブエルタ・フェメニーナ 2025：女王ボディネ・フォレリングに挑む者たち、注目すべき5つのポイント

いよいよ、女子ロードレースの世界最高峰の一つ、ラ・ブエルタ・フェメニーナが開幕します。グランツールを中心に取材を続ける私、山田健一の目から見ても、今年のブエルタは非常に興味深い要素が詰まっています。何と言っても、絶対女王Demi ボディネ・フォレリングの存在。彼女が総合優勝に最も近い位置にいるのは間違いないでしょう。しかし、レースの魅力はそれだけにあらず。今回は、ボディネ・フォレリングの牙城を崩せるか、そしてその裏で繰り広げられるであろう熱い戦いに焦点を当て、注目すべき5つのポイントを解説していきます。

1. 女王の牙城を崩せるか？ - 2位争いの行方

昨年のラ・ブエルタ・フェメニーナで、Demi ボディネ・フォレリングは2位に2分近い大差をつけて総合優勝を果たしました。その前の年も、ボディネ・フォレリングとAnnemiek van Vleutenが他の選手を文字通り「光年」引き離す圧倒的な走りを見せています。今年のボディネ・フォレリングも、春のクラシックシーズンこそStrade Biancheとロンド・ファン・バレンシアでの優勝にとどまりましたが、その圧倒的な山岳での力は健在であると見るべきでしょう。特に、今大会の勝負どころとなるラグナス・デ・ネイラとアルト・デ・コトベージョという二つの厳しい山頂フィニッシュでは、誰もボディネ・フォレリングについていけない、と考えるのが自然です。

となると、俄然面白くなってくるのが「2位争い」です。ここには多くの選手が名を連ねる可能性があります。ボディネ・フォレリングに最も肉薄できる可能性があるとすれば、Anna van der Breggenの名前が挙がりますが、リエージュ～バストーニュ～リエージュでの11位という成績を見るに、彼女の現在のフォームがどのレベルにあるかは未知数です。昨年のツール・ド・フランス・ファム覇者Katarzyna カタジナ・ニエウィアドマも有力候補の一人でしょう。フレッシュ・ワロンヌ4位、リエージュ9位と、クラシックでは堅実な走りを見せました。そして、忘れてならないのが昨年の2位、Riejanne リーアンヌ・マルクスです。30歳を迎えた彼女ですが、今季の春はやや苦戦している印象もあります。

コメント欄で読者の方が指摘されていたセドリーヌ・ケルバオルのような、ダークホース的な存在もいるかもしれません。果たして、女王の背後で繰り広げられるこの熾烈な争いを制するのは一体誰になるのでしょうか？

2. ポーリーヌ・フェランプレヴォ、ロード転向への足がかり

今回のラ・ブエルタで、私が個人的に非常に注目している選手がいます。MTBとシクロクロスの世界女王、Pauline Ferrand-Prevot、通称PFPです。彼女は今季、ロードレースで目覚ましい活躍を見せています。ロンド・ファン・フラーンデレンで2位、そしてパリ～ルーベでは優勝。これは本当に「へぇ～」と唸らされる結果でした。しかし、PFPがロードレースに戻ってきた最大の目標は、数年以内のツール・ド・フランス・ファム制覇にあると公言しています。その壮大な目標に向けて、ラ・ブエルタは重要な「足がかり」となるレースなのです。

彼女にとって、今大会での目標は総合表彰台に上ることでしょう。しかし、それがどれほど現実的かというと、まだ未知数な部分が多いのが正直なところです。PFPはクラシックでは驚異的なパフォーマンスを見せましたが、純粋な山岳での登坂力はまだトップクライマーたちに及ばない印象があります。UAEツアーのジェベル・ハフィートでは早々に遅れを取り、リエージュでも12位に終わっています。ラ・ブエルタには二つの厳しい山頂フィニッシュが待ち構えています。ここで世界のトップクライマーたちにどこまで食らいつけるか。PFPにとって、未来への重要な試金石となる一週間になるでしょう。

3. 新世代の台頭 - ヤングスターたちの輝き

女子ロードレース界では今、次々と若い才能が頭角を現しています。その中でも特に注目度が高いのが、MovistarチームのCat キャット・ファーグソンです。彼女はまだ大舞台での総合エースを担う経験は少ないですが、今季の春にはトロフェオ・アルフレド・ビンダで3位に入るなど、そのポテンシャルを随所で見せつけています。ラ・ブエルタは彼女にとってグランツールデビューとなるレース。特に、平坦や丘陵ステージでのアタックや、チャンスがあれば区間優勝を狙ってくる可能性も十分に考えられます。第6ステージのようなトリッキーなコースは、彼女のような若手にとって絶好の機会となるかもしれません。

Cat キャット・ファーグソン以外にも、将来を嘱望される若手は数多く出場します。Imogen イモージェン・ウォルフ、Marion マリオン・ビュネルといった名前も挙がっていますし、オランダのNienke ニンケ・フィンケも要注目です。彼女は今季、フレッシュ・ワロンヌとUAEツアーのジェベル・ハフィートで共に8位に入っており、既にトップレベルでの安定感を見せています。もしかしたら、彼女のような選手がビッグネームから区間優勝を「かっさらう」ような、サプライズを起こしてくれるかもしれません。

4. ジュスティネ・ヘキエーレ、ツールでの活躍は偶然じゃない

昨年のツール・ド・フランス・ファムで、山岳ステージを制し、マイヨ・ア・ポワ（山岳賞ジャージ）を獲得したJustine ジュスティネ・ヘキエーレ。その活躍は多くのファンに「そうだったのか！」という驚きと感動を与えました。28歳にして掴んだブレイクスルーでしたが、彼女の真価はこれから問われます。今季は、昨年の活躍がフロックではないことを証明する「確認の年」となるでしょう。

今季の ジュスティネ・ヘキエーレは、サントス・ツアー・ダウンアンダーで好走したものの、ヨーロッパでの春のクラシックシーズンでは目立った成績を残せていません。しかし、これには明確な理由があります。彼女と所属するAG AGインシュランス・スーダル チーム-Soudal Teamは、アルデンヌクラシックを意図的にスキップし、ラ・ブエルタに照準を絞って調整を進めてきたのです。これは、彼女が昨年のツールで見せた山岳での強さを、今大会で再び発揮できるとチームが確信している証拠でしょう。ジュスティネ・ヘキエーレにとって、ラ・ブエルタは今シーズンの主要な目標の一つ。万全の準備で臨む彼女が、再び山岳で輝きを見せるのか、注目です。

5. 記録への静かな戦い - ボディネ・フォレリング vs マリアンヌ・フォス

これはレースの行方を直接左右する要素ではありませんが、統計好きとしては見逃せないポイントです。ラ・ブエルタ・フェメニーナの区間優勝記録は、現在Demi ボディネ・フォレリングとMarianne マリアンヌ・フォスの二人が共に「4勝」で並んでいます。そして、奇しくもこの二人が今年のバルセロナでのスタートラインに揃って立つわけです。

過去2大会で、ボディネ・フォレリングとマリアンヌ・フォスはそれぞれ2勝ずつを挙げています。もしこのトレンドが続けば、今年の7ステージのうち4ステージをこの二人が分け合う計算になりますが、もちろんロードレースはそんな単純なものではありません。スプリンターとして、あるいは厳しい丘越えでのパンチャーとして、マリアンヌ・フォスは常に区間優勝候補筆頭です。一方、ボディネ・フォレリングは総合優勝を狙う過程で、山岳ステージでの区間優勝を狙ってくるでしょう。果たして、レースが終わった後、どちらかが単独で最多区間優勝記録保持者となるのか、それとも他の選手が記録を塗り替えるのか。静かなる「記録への戦い」にも注目してみてはいかがでしょうか。

ラ・ブエルタ・フェメニーナは、女子レースカレンダーにおいても重要な位置を占めるグランツールです。絶対女王の圧倒的な強さ、その背後で繰り広げられる激しい総合2位争い、新世代の台頭、そして復活を期すベテランたち。見どころは盛りだくさんです。特に、厳しい山岳ステージがレースの行方を大きく左右するでしょう。どんなドラマが生まれるのか、今から楽しみでなりませんね。