サイモン・イェーツ、ジロ終盤で手応え「今後に」

サイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツール担当の山田 健一です。

ジロ・デ・イタリアは序盤戦から目が離せない展開が続いています。特に、第5ステージのマテーラでのフィナーレは、スプリンター向けの平坦ステージかと思いきや、短い登坂でクラスマンたちが火花を散らすという、実に興味深い結末となりました。

このステージで注目すべきは、移籍後初のグランツールに挑むシモン・イェーツ（チーム ヴィスマ・リースアバイク）が見せた確かな手応えでしょう。彼の言葉、そしてチームの動きから、今後のジロの行方を読み解いていきたいと思います。

予想外の展開となったマテーラ終盤

第5ステージは、チェーリエ・メッサーピカからマテーラまでの151km。序盤は大きな動きがなく、静かにレースが進みました。しかし、この日のコースは終盤に街中のトリッキーなレイアウトと、フィニッシュ手前に短いながらも勾配のある登坂が控えていました。

「退屈なオープニングアワーには忍耐が必要だった」とシモン・イェーツが振り返るように、集団は淡々と進んでいましたが、フィナーレに向けて一気に緊張感が高まります。特に最後の登坂は、スプリンターを振り落とし、パンチャーや登坂力のある選手、そして総合系の選手がタイム差を作る可能性を秘めていました。

ここで、チーム ヴィスマ・リースアバイクはエースであるシモン・イェーツを良い位置に送り込むべく、チームとして機能しました。彼の言葉を借りれば、「ワウト（ワウト・ファンアールト）とバルト（バルト・レメン）に良いサポートをしてもらい、良いポジションで短い終盤の登坂を迎えることができた」とのことです。

イェーツが語る「良い感触」の正体

フィニッシュ前の短い登坂で、総合優勝候補の一角、プリモシュ・ログリッチ（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ）が仕掛けました。このアタックに、シモン・イェーツはしっかりと反応し、ついていくことができました。これは、彼自身のコンディションが良い証拠と言えるでしょう。

「このような混沌としたフィナーレでは、常に前方にいることが重要だ。このスプリントに勝つことは現実的ではなかったが、感触は良かった。それを次の日々に活かしたい」とシモン・イェーツは語っています。

スプリント勝負ではマッズ・ピーダスン（リドル・トレック）に譲ったものの、ログリッチのアタックに反応できたこと、そして総合ライバルたちとほぼ同タイムでフィニッシュできたことは、彼にとって大きな自信になったはずです。移籍初年度、新天地でのグランツールで、まずは確かな手応えを掴んだ、その言葉の裏には、充実感が滲んでいるように感じられます。

チーム ヴィスマ・リースアバイクの巧みな戦略

チーム ヴィスマ・リースアバイクのスポーティングディレクター、マルク・リーフもまた、シモン・イェーツのパフォーマンスに満足していました。「特にシモンに焦点を当てていた。彼がこのフィナーレでどのように走ったかに満足している」とコメントしています。

さらに興味深いのは、チームの他の選手の動きです。スプリンターのオラフ・コーイはこの日、無理をせず、翌日のナポリでのスプリントステージに備えて温存しました。また、ワウト・ファンアールトもまだ万全ではないため、無理なペースアップは避けたようです。

これは、チームがこのジロにおける優先順位を明確にしていることの表れでしょう。ワウト・ファンアールトやオラフ・コーイにもステージ優勝のチャンスはありますが、やはりチームの最大の目標はシモン・イェーツによる総合上位、あるいはマリア・ローザ獲得です。彼らがエースのために力をセーブする、このチーム内の力学が、今後の山岳ステージでどのように活きてくるのか、非常に楽しみなところです。

今後の展開への期待

ジロはまだまだ序盤です。これから本格的な山岳ステージが待ち受けています。シモン・イェーツが第5ステージで見せた「良い感触」は、彼が総合争いに加わるための準備が整っていることを示唆しています。

チーム ヴィスマ・リースアバイクは、ヨナス・ヴィンゲゴーやセップ・クスといったグランツールウィナーを擁するチームですが、シモン・イェーツもまた、ブエルタ・ア・エスパーニャでの優勝経験を持つ実力者です。新しいチームで、彼がどのような走りを見せるのか、そしてチームが彼をどのようにサポートしていくのか。山岳での総合ライバルたちとの駆け引き、特にプリモシュ・ログリッチや、UAEチームエミレーツ・XRGのブランドン・マクナルティ、イサーク・デルトロ Toro Romero、フアン・アユソ Pesqueraといった強力な面々との戦いに、ますます注目が集まります。

マリア・ローザ争いの行方を占う上で、シモン・イェーツの今後の走りは重要な鍵となるでしょう。次のステージからも目が離せませんね！