Senza Fine：すべての選手が夢見るトロフィー

ジロ・デ・イタリアの「果てなき螺旋」と、ミケル・ランダの「果てなき情熱」

モナコから選手たちのSNSを追いかける日々。画面越しに見える彼らのほんの一瞬の投稿に、どれほどの想いが込められているのだろうか。特にグランツールが近づくにつれて、その緊張感や高揚感がじわじわと伝わってきます。

今年のジロ・デ・イタリア。その象徴である「センツァ・フィーネ」トロフィーの輝きと、このレースに特別な思いを抱くある選手の言葉が、私の心に強く響いています。その選手とは、ミケル・ランダ。彼が語った、ジロへの情熱、そして揺るぎない覚悟について、今日は皆さんにお届けしたいと思います。

螺旋を描く夢のトロフィー「センツァ・フィーネ」

ジロ・デ・イタリアの優勝者に贈られるトロフィーは、まさに夢の塊です。1999年からこの形になったという「センツァ・フィーネ（Senza Fine）」、イタリア語で「果てしなき」という意味の名の通り、台座から螺旋を描きながら天へと昇っていくデザインは、見ているだけで胸が高鳴ります。

高さ53.5cm、重さ9.5kg。18金メッキが施された銅製で、細部まで丁寧に塗装されているのだとか。そして何よりも特別なのは、その螺旋に過去の優勝者の名前が手作業で刻まれていること。最新の名前は、昨年の覇者、タデイ・ポガチャルです。このトロフィーに自分の名前が加わることこそが、多くの選手にとってキャリア最大の目標の一つ。「なるほど！」と思いませんか？あの螺旋に刻まれた一つ一つの名前の裏には、想像を絶するドラマと努力があるのだなと、改めて感じ入るのです。

ジロは僕の「爆発」の場所 - ミケル・ランダの告白

そんな特別なジロ・デ・イタリアに、特別な思いで挑む選手がいます。ミケル・ランダ。彼がこのレースについて語った言葉が、私の心に深く刺さりました。「グランツールの選手として僕が『爆発』したレースだ」。そう、2015年、アスタナの選手として出場した彼は、チームメイトのファビオ・アルをアシストしながらも、自身の力を見せつけ、一躍グランツールで戦える選手として認知されました。あのジロが彼のキャリアの大きな転換点だったのですね。

彼は言います。「ジロに戻るたび、笑顔になれる」。もちろん、厳しい瞬間もあったけれど、このレースは彼にとって非常にスペシャルな存在なのです。2022年には3位と表彰台にも上がっています。今回、数年ぶりにジロへの復帰を決めたのは、「今戻らないと、2026年には遅すぎるかもしれない」という思いから。キャリアの終盤を意識しつつも、この愛するレースで再び輝きたいという、彼の静かな決意が伝わってきました。深夜のSNSで、ふと彼がこのレースについて思いを巡らせているような投稿を見かけた時、この「今しかない」という気持ちを感じ取っていたのかもしれません。

総合か、ステージか - ランダの戦略と葛藤

ランダといえば、その独特な走り方と、時に「ランダニ」（伝説的なクライマー、マルコ・パンターニにちなんだニックネームですね！）と呼ばれるほどの登坂力でファンを魅了してきました。今回のジロで、彼はどのように戦うのでしょうか。

彼は明確に語っています。「チームは総合で戦える選手を必要としている。最初から総合を狙うのが僕の役割だ」。もし落車や体調不良など、何かアクシデントがあればプランは変わるかもしれないけれど、現時点では総合優勝争いに全力を尽くすとのこと。「確かに！」、チームのエースとしての責任感が、彼の言葉から強く感じられます。

自身の強みについては、「精神力かもしれない」と謙虚に語ります。長いキャリアの中で、多くの困難に耐え、今なお高いレベルを維持していること。それは彼自身の内面の強さが支えているのでしょう。「へぇ～」、見た目の派手さだけでなく、そうした芯の強さが彼を特別な存在にしているのだなと、改めて認識させられます。

ビッグネーム不在はチャンス？ライバルたちの顔ぶれ

今年のジロは、ワウト・ファンアールトやタデイ・ポガチャルといった、近年ロードレース界を席巻するスーパースターが不在です。これについてランダは、「彼らがいなくても、他の選手がいるだけ。むしろ彼らがいる方が、レースが動いてライバルを振り落とすのに役立つこともある」と冷静に分析しています。

注目選手としては、UAEチームエミレーツ・XRGのフアン・アユソの名前を挙げ、「一歩成長した。レースを動かす成熟した走りをする」と高く評価しています。スペイン勢として、アユソがジロで活躍することに大きな期待を寄せているようです。

もちろん、優勝候補筆頭にはログラの名前を挙げつつも、「彼は5年もトップレベルを維持している。これ以上の伸びしろは少ないのでは」と分析したり、ベルナルやイェーツといったかつてのライバルたちも「経験や運があればサプライズを起こせるかもしれない」と語ります。イタリア期待のティベリにも触れつつ、彼自身のキャリアで最も感銘を受けた選手として、ヴィンチェンツォ・ニバリの名前を挙げています。「最も強いわけではなくても、多様なレースで勝つ能力があった。とても特別な選手だ」。ニバリのような、勝負強さと多様性を持つ選手へのリスペクトが感じられます。

ラストチャンスへの覚悟 - ランダのキャリアと未来

今回のジロは、ミケル・ランダにとって、グランツールの表彰台に立つ「最後のチャンス」になるかもしれない、と彼は考えているようです。ツール・ド・フランスではレムコ（エヴェネプール）のアシストに徹する予定であり、ブエルタ・ア・エスパーニャにも今のところ出場予定はないとのこと。「そうだったのか！」、彼の言葉を聞いて、今回のジロにかける思いの強さを改めて感じました。

今シーズンに向けて、特に準備を変えたことはないと言いますが、冬の間しっかり休み、そしてレースシーズンに向けて少しずつ休息を取りながら調整してきたそうです。遅めのシーズンインは、家で過ごす時間を増やすためでもあったとか。トレーニング中のローラーでは、過去の名勝負を見るのが好きなのだそう。特に印象に残っているのは、インデュラインがアプリカでキアプッチに敗れたレース。「パンターニもインデュラインもキアプッチもいた、あの壮絶なステージは忘れられない」。往年のファンにはたまらないエピソードですね。

ニックネームの「ランダーニ」については、「パンターニのように速く登れないのは残念だけど、冗談として誇りに思っている」と語るあたり、彼のユーモアと謙虚さが伺えます。

最後に、近年の「ビッグ6」と呼ばれる選手たちと競い合うことについて問われると、「誇りだ」と即答。「彼らは今の自転車界を変えている。勝利を奪われることもあるけれど、彼らは時代を築いている選手たちだ」。ライバルとして戦いながらも、彼らの偉大さを認め、共に戦えることを光栄に思っている。彼の言葉の端々から、選手としての矜持と、ロードレースへの深い愛情が伝わってきました。

果てなき螺旋を掴むために

ジロ・デ・イタリアの「センツァ・フィーネ」トロフィー。その螺旋には、数々の伝説とドラマが刻まれています。そして、ミケル・ランダもまた、この「果てなき」レースに、自身の「果てなき」情熱と覚悟を持って挑もうとしています。

キャリアの集大成とも言えるかもしれないこの挑戦。彼の走りが、今年のジロ・デ・イタリアにどんな新たな物語を刻むのか。モナコから、彼のSNSの投稿を追いかけながら、その一挙手一投足を見守りたいと思います。皆さんも、ぜひ彼に熱い声援を送ってくださいね！

次回の記事では、ジロのコースや注目チームについて、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。どうぞお楽しみに！