ダミアーノ・カルーゾ「ティベリは表彰台に立てる」

圧倒的なポガチャルと、ベテランの視点

2024年のジロ・デ・イタリアは、タデイ・ポガチャルという一人の男の支配下に置かれたレースでした。彼の圧倒的な強さは、歴史に残るレベルであったと言っても過言ではありません。一方で、イタリア人ライダーにとって、自国のグランツールであるジロは特別な意味を持ちます。長年第一線で戦い続けるベテラン、ダミアーノ・カルーゾのインタビューからは、そんなイタリアのサイクリング文化と、現代ロードレースへの率直な見方が垣間見えました。

カルーゾが語る2024年ジロの厳しさ

まず、カルーゾが語った2024年ジロ・デ・イタリアのコースについてです。彼は「非常に特殊なコース」であり、「最初のステージから、アルバニアでのスタートから、非常に厳しい」と指摘しています。詳細には把握していなくとも、アルティメトリー（高低図）を見るだけでその挑戦的な性質は明らかであり、タイムトライアルも含まれていることから、「最初から準備ができている必要がある」と語っていました。

特に第2週は非常に挑戦的なステージが多く、トスカーナ地方のステラート（未舗装路）を含むステージや、サン・ペッレグリーノ・イン・アルペ、ルッカとピサ間のタイムトライアルなどを挙げています。そして、ジロの最終盤は常にアルタ・モンターニャ（高山）が待ち構え、レース全体の決定的な瞬間となるだろうと分析しています。

さらに、彼は経験に基づき、「天候」が大きな違いを生む可能性に言及しています。ツール・ド・フランスのように常に良い天候が保証されているわけではなく、悪い天候がレース展開を大きく変えることがある。これは、イタリアの春のレースならではの厳しさであり、ベテランだからこそ肌で感じている部分でしょう。「へぇ～」、やはりジロはツールとはまた違う難しさがあるのだなと改めて感じさせられます。

イタリアの期待、アントニオ・ティベーリ

イタリア人ライダーがジロ・デ・イタリアで総合優勝から遠ざかってもう随分経ちます。カルーゾ自身、2021年にジロでポディウムを獲得した最後のイタリア人ライダーですが、彼は「イタリアのために、そして我々のチームのことを考えて、そうなることを願っている」と語り、今後のイタリア人ライダーによるグランツールでの勝利に期待を寄せています。

そして、彼が具体的に名前を挙げ、最も信頼を寄せているのが、アントニオ・ティベーリです。カルーゾはティベーリについて、「勝つレベルにあるかは分からないが、彼はそれができることを証明した」「過小評価できない選手」「グランツールで勝てる限られたグループの選手の一人」と高く評価しています。今年のジロで彼がティベーリをポディウムで見たいと願っており、もし勝てればさらに良い、とイタリア人としての強い思いを覗かせました。現実的な目標としては、トップ3、つまりポディウム入りを挙げています。

正直なところ、彼が信頼を置くイタリア人ライダーとして、アントニオ・ティベーリ以外の「大きな名前は思いつかない」と語っているのは、やや寂しい現実ではありますが、それだけティベーリへの期待が大きいということでしょう。

また、旧チームから移籍して好調を維持しているミケル・ランダについても言及し、「私はミケル・ランダの大ファンであり、素晴らしい友人でもある」と語っています。彼の好調は、新しいチームで新たな刺激を見つけたことによるものだと分析し、友人として、そしてチームメイトとして（過去にチームメイトだった時期があるのかもしれません）彼の活躍を喜んでいます。ミケル・ランダがまだ十分にこのサイクリング界で語るべきものを持っていることを、データと数字で証明していることに感銘を受けているようでした。確かに、ベテランになってもトップレベルで戦い続けるミケル・ランダの姿は、多くのファンに勇気を与えているはずです。

ポガチャルの圧倒的な支配、そして2025年の選択

さて、2024年ジロ・デ・イタリアの主役は、間違いなくタデイ・ポガチャルでした。若干26歳にして、コルサ・ローザ初出場でマリア・ローザを獲得しただけでなく、圧倒的な支配力を見せつけました。第2ステージのオローパでの独走勝利からマリア・ローザを最終日まで手放さず、合計6つのステージで勝利を飾り、山岳賞も獲得。エディ・メルクス以来となる、総合優勝と最多ステージ勝利の同時達成という歴史的な快挙を成し遂げました。

彼の総合タイム差、ダニエル・マルティネスに9分56秒、ゲラント・トーマスに10分以上という差は、1965年以来の最大差です。この数字だけ見ても、いかに彼が規格外の存在であるかが分かります。

さらに、2024年はジロだけでなく、ツール・ド・フランス、そしてチューリッヒでの世界選手権も制覇し、エディ・メルクス、スティーブン・ロッシュに続く史上3人目の「トリプルクラウン」を達成しました。「そうだったのか！」と驚くような記録のオンパレードでした。

しかし、驚くべきことに、ポガチャルは2025年のジロ・デ・イタリアには出場しないことを決めました。ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに焦点を移すとのことです。彼の圧倒的な強さゆえに、「ポガチャルがいるとレースが退屈になる」という意見もあるようですが、カルーゾはこれに対して、「彼はただ自分の仕事をしているだけ」「勝つのが自然なことなのだ」と擁護しています。そして、「観客にとっては退屈ではないかもしれない。ストラーデ・ビアンケでの彼とピドコックの素晴らしい戦いを見ただろう？」と指摘し、むしろ問題は「ペロトンの中にいる選手たち」だと語っています。ポガチャルがいるレースでは、彼が勝つ可能性が非常に高いことを、選手たちは知っているからです。これは、選手目線ならではの「確かに！」と思わせる見方ですね。

ジロの魅力とベテランの視点

カルーゾにとって、「コルサ・ローザ」はやはり特別です。子供の頃にテレビで見て、プロサイクリストを夢見たレース。父と一緒に見た思い出。そして、大人になってその夢を叶え、ステージ優勝やポディウムまで達成した。イタリアの観客の声援、イタリア語での会話。これら全てが、彼にとってジロを特別なものにし、常にモチベーションを与えてくれると言います。もちろん、スペインでのレース、特にブエルタ・ア・エスパーニャも大好きだと語っていますが、やはり「故郷のレース」は格別なのですね。

他の選手への評価では、スペインの専門家がフアン・アユソをジロの優勝候補に挙げていることについて、「正しい見方だ」と同意しています。アユソを「非凡な才能」「並外れた数字を出している」「賢い青年」と高く評価し、彼がローマでポディウムに立つことは「普通のことだろう」とまで言っています。ポディウムのどの位置かは分からないとしつつも、勝つ資質も十分にあると見ています。

また、最近導入が試みられているUCIの新しい規則、いわゆる「イエローカード」についても、「実験としては公正な試みだと思う」「サイクリングを改善するのは難しいから」「今のところは賛成だ」と前向きな姿勢を示しています。半年、1年と試してみて、それがサイクリングに役立つかどうかを見るべきだという現実的な意見でした。

自身のキャリアについては、昨年「2025年が最後の年になるだろう」と語っていた件について触れられ、「今のところ考えは変わっていない」と答えています。まだ正式な引退発表はしていないものの、「この人生の章を閉じる」というのが今の考えだそうです。何か特別なことがあれば考えが変わるかもしれない、とも付け加えており、その動向も気になるところです。

次なる戦いへ、そしてジロの行方

タデイ・ポガチャルが2025年のジロ・デ・イタリアをスキップするという決断は、他のクライマーや総合系ライダーにとっては大きなチャンスとなるでしょう。彼が不在の「コルサ・ローザ」は、間違いなく例年以上に読みづらく、多くの選手に勝利の可能性が開かれた、エキサイティングなレースになるはずです。

一方で、ポガチャルが照準を合わせるツール・ド・フランス、そしてブエルタ・ア・エスパーニャでは、彼が再び圧倒的な力を見せつけるのか、それとも新たなライバルが立ち塞がるのか。特に、ブエルタ・ア・ブルゴス・ブルペレット・BHを経て臨むブエルタでの彼の走りには注目が集まります。

ベテランのダミアーノ・カルーゾは、ジロ、ブエルタ・ア・ブルゴス・ブルペレット・BH、そしてブエルタ・ア・エスパーニャに出場し、イル・ロンバルディアでシーズンを終える予定とのこと。彼のような経験豊富なライダーが、若手の台頭をどう見て、自らのレースをどう組み立てていくのか。来シーズンも、サイクルロードレースから目が離せませんね。「次も読みたい！」と思わせるような、様々なドラマがきっと待っているはずです。...