チッコーネ復活！ツール・オブ・ジ・アルプス開幕ステージ勝利

ツール・ド・ジ・アルプス開幕戦、ジュリオ・チッコーネが鮮やかなスプリント勝利！

今年の春、イタリアの地でサイクルロードレースが熱い戦いを繰り広げています。ジロ・デ・イタリアへ向けた重要な前哨戦、ツール・ド・ジ・アルプスが開幕しました。初日のサン・ロレンツォ・ドルシーノを巡るコースで、見事な勝利を飾ったのは、リドル・トレックのジュリオ・チッコーネ選手です。フィニッシュ前の登り、サン・ロレンツォ・ドルシーノへの坂を駆け上がり、最後はライバルたちを抑え込んでのスプリント勝利。フェリックス・ガル選手、ポール・セクサス選手といった強力なパンチャーたちを退けたその走りは、ジロへ向けて視界良好であることを見せつけました。

急遽のレース開催決定、その舞台裏と影響

今回のツール・ド・ジ・アルプス開幕戦は、イタリア国内における追悼の意から、スポーツイベントの開催が危ぶまれる状況下で行われました。イタリアオリンピック委員会からの「本日の全スポーツ活動の停止」という要請が、スタート直前に届いたという異例の事態でした。しかし、主催者はレースの続行を決定。選手たちはスタートラインで黙祷を捧げ、音楽を伴わない静かな雰囲気での出発となりました。

メカニックとして現場にいると、こういった急な状況変化はチーム全体に少なからず影響を与えます。選手の精神状態はもちろんのこと、直前までレースが開催されるか否かで準備の進め方も変わってきます。機材の最終チェックひとつ取っても、集中力を保つのが難しくなる場面もあったかもしれません。それでもプロフェッショナルとして、ベストなコンディションでレースに臨む。この日の選手たちの走りには、そうした背景があることを忘れてはならないでしょう。

パス・ドゥローネが仕掛けの舞台に

レースはヴァル・ディ・ノンとヴァル・ディ・ソーレの間を縫うように進み、獲得標高は2,750メートル。フィニッシュ手前約20km地点に待ち構えるパス・ドゥローネ（平均勾配8%の6.3km）が、勝負を分ける最初のポイントとなりました。この勾配、そして距離。バイクは常に重力に逆らい、フレームやホイールにはライダーの踏み込みがダイレクトに伝わります。メカニックとしては、この登りでの機材の「声」が聞こえてくるようです。軽量性はもちろん、ペダリングのパワーを逃がさない剛性、そして何より選手の脚との相性。

チッコーネ選手はここで一度仕掛けますが、主導権を握ったのはエクアドルのセペダ選手。そして、プロ初勝利を目指すマッティア・バイス選手が飛び出しました。バイス選手は残り2kmまで粘りますが、メイングループに吸収されます。機材的には、ここで単独で踏み続けるバイクが受ける負荷は相当なもの。フレームのしなり、ホイールの回転、チェーンの駆動音…全てが選手の苦闘を物語っていたことでしょう。残り2kmでの吸収は、単に脚の差だけでなく、このコースでバイクを限界までプッシュし続けた結果かもしれません。

サン・ロレンツォ・ドルシーノへの登りとスプリント

パス・ドゥローネをクリアした後、選手たちはフィニッシュ地点のサン・ロレンツォ・ドルシーノへと向かう最後の登りに挑みます。勾配自体はパス・ドゥローネほどではありませんが、既に脚に疲労が蓄積した状態での登り。ここでのギア選択、そしてバイクの反応性が重要になります。メカニックとしては、この局面で選手のペダリングを助ける最適なギア比が選ばれているか、コンポーネントはスムーズに作動しているか、気が気でない瞬間です。

そして迎えたフィニッシュ前のスプリント。ジュリオ・チッコーネ選手が、フェリックス・ガル選手、ポール・セクサス選手といった実力者を相手に先着しました。クライマーやパンチャーが揃う少人数でのスプリントは、純粋な最高速よりも、加速力とタイミングが鍵を握ります。バイクの瞬発力、つまり剛性と軽量性のバランスが問われる局面です。チッコーネ選手が駆るバイクは、このフィニッシュ前の短い登りで、ライバルたちよりも鋭く反応したのでしょう。その勝利は、彼自身のコンディションの良さと、バイクとの完璧な調和があってこそ実現したと言えます。

ジロへ弾みをつけるチッコーネと注目選手たち

ジュリオ・チッコーネ選手のこの勝利は、2週間後に迫ったジロ・デ・イタリアへ向けた大きな自信となるでしょう。イタリア人選手として、母国のグランツールでの活躍は特別な意味を持ちます。

近年のツール・ド・ジ・アルプス優勝者を見ると、フアン・ロペス選手（2024年）、タオ・ゲオゲガン・ハート選手（2023年）、ロマン・バルデ選手（2022年）、アダム・イェーツ選手（2021年）と、グランツールで結果を残した選手が名を連ねています。最後のイタリア人優勝者は2013年のヴィンチェンツォ・ニーバリ選手。そのニーバリ選手を目標に育ったというアントニオ・ティベーリ選手も、今大会で総合を狙う注目選手です。バルデ選手、ジェイ・ヒンドレー選手といったジロの有力候補たちも出場しており、彼らのコンディションやチーム ピクニック・ポストNL、その他のチームの戦略も気になるところです。

今回のチッコーネ選手の勝利は、ジロでの彼の活躍を予感させるものとなりました。他の有力選手たちの動向も含め、ツール・ド・ジ・アルプスはジロ・デ・イタリアの行方を占う上で、ますます目が離せないレースになりそうです。メカニックとしては、この厳しい山岳ステージが続くレースで、各チームが機材にどのような選択をしてくるのか、非常に興味深いところです。