ドワース・ドア・ヘット・ハーヘラント2025：ブレンナンとデルグロッソの新たな激突

ベルギー版ストラーデ・ビアンケ：ドワース・ドール・ヘット・ハーゲラントの歴史と魅力

ドワース・ドール・ヘット・ハーゲラントは、その未舗装路と石畳のセクションが特徴的で、「ベルギーのストラーデ・ビアンケ」と称されることもあります。「なるほど！」と思わず膝を打つようなこの表現、まさに言い得て妙でしょう。イタリアの壮麗な白砂利道とはまた異なる、ベルギーらしい泥臭く、しかし戦術的な魅力に満ちたコースが、このレースを特別なものにしています。

過去の勝者を見ても、その顔ぶれは多彩です。2017年にはマチュー・ファンデルプールが勝利を収め、その強さを見せつけました。そして、ラスムス・ティレルは2021年と2023年の2度、このレースを制しています。特に2021年の勝利は、彼のキャリアにおける「絶対的なブレークスルー」となったと言っても過言ではありません。彼はこのレースに何か特別な縁があるのでしょうか？彼のコメントを聞いてみたいものです。

コース徹底分析：180kmの石畳と未舗装路が織りなすドラマ

コースはアールショットをスタートし、ディーストへと向かう180kmのルート。以前は200kmを超える距離でしたが、近年は少し短縮されています。しかし、その密度は決して薄れていません。ハーゲラント地方を巡る長いループの中には、ウィルヘンプット（1,000m）、フロートブルークストラート（3,100m）、デーメルファレイ（3,300m）、ヘイデボス（1,200m）、デーメルダイク（4,000m）といった未舗装路のセクションが次々と現れます。

そして、レースの鍵を握るのが、ディーストにそびえる「ディーストのシタデル」です。これは全長1,000mを超える石畳の登り坂で、地元の英雄マリオ・アールツの故郷でもあるディーストに位置しています。後半の周回コースでは、プリンセンボス（1,800m）、再びヘイデボスとデーメルダイクが登場し、さらに最大20%の勾配を誇るグラスボス、通称「ポッジョ」のようなパンチの効いた丘が選手たちを苦しめます。

このシタデル、別名「アレルヘイリヘンベルフ」は、まさに勝負所。街の中心から石畳の小道に入り、急な左カーブから最も傾斜のきつい部分へ。最後の700mは勾配がぐっと上がり、橋をくぐるとフィニッシュラインはもうすぐそこです。合計41kmにも及ぶ未舗装路と石畳の区間が、このレースの過酷さと魅力を物語っています。

若き才能の激突！ブレナン vs デルフロッソ、そしてアルペシン・ドゥクーニンクの牙城

今年のドワース・ドール・ヘット・ハーゲラントの最大の注目点は、なんと言ってもマシュー・ブレナンとティボール・デルフロッソという二人の若き才能の対決でしょう。

Visma | Lease a Bikeのマシュー・ブレナンは、今シーズン、グランプリ・ド・ドゥナンやルント・ウム・ケルン、そしてツール・オブ・ノルウェーで勝利を収め、その才能をいかんなく発揮しています。ボルタ・ア・カタルーニャやツール・ド・ロマンディでのワールドツアーレベルでのステージ優勝は、彼が「次のビッグシング」と目されている理由を明確に示しています。Visma | Lease a Bikeは彼を焦らず成長させようとしているようですが、このクラスのレースでは、彼のパンチャーとしての能力はまさに「ほぼ無敵」と言えるでしょう。他の選手が彼を最終局面まで連れて行けば、彼らは最初から負けを覚悟しなければならないかもしれませんね。

対するは、アルペシン・ドゥクーニンクのティボール・デルフロッソ。ボルタ・ア・カタルーニャではブレナンに惜敗しましたが、ツール・オブ・ノルウェーでもブレナンの強さを肌で感じたはずです。特に最後のパンチ力ではブレナンが一枚上手に見えます。しかし、デルフロッソには、シクロクロス出身という強みがあります。未舗装路での走りは、彼にとって有利に働くはずです。先日アントワープ・ポート・エピックでは落車に見舞われましたが、本人は「コーナーを間違えただけ。溝が急に迫ってきたんだ」と笑って話していました。それでも5位に入ったのは、彼の好調ぶりを物語っています。「そうだったのか！」と驚いた方もいるかもしれませんが、彼が持つポテンシャルは計り知れません。

そして、アルペシン・ドゥクーニンクは、この種のレースで「鉄壁」とも言える強さを誇ります。昨年のアントワープ・ポート・エピックでは、ティモ・キーリッヒが巧みに抜け出し、キャリア最大の勝利を挙げました。ジロ・デ・イタリアを走り抜いた後の彼には、スーパーコンペンセーション（超回復）によるさらなる好調が期待されます。また、同じく元シクロクロッサーであるクインテン・ヘルマンスも、グラベルで常に良い走りを見せる選手です。さらに、ヨナス・リカールトやオスカル・リースビークといった元勝者も擁しており、まさに「倒すべきチーム」であることは間違いありません。彼らのチーム力学がどのように働くのか、非常に興味深いですね。

経験豊富なベテラン勢とダークホースたち

もちろん、ブレナンとデルフロッソの二強だけではありません。このレースで2度勝利しているラスムス・ティレル（ウノエックス・モビリティ）は、ディーストのシタデルとの相性が抜群です。昨年も4位に入っており、常に優勝争いに絡んでくるでしょう。そして、引退を控えるアレクサンダー・クリストフも、ティレルをサポートしつつ、自らの存在感を示すかもしれません。

他のワールドチームにも、注目すべき選手が多数います。Soudal Quick-Stepのポール・マニエは、ジロ・デ・イタリアでの好調をヘイストセ・パイルでの勝利で継続しています。オムループ・ヘット・ニュースブラッドで2位に入った彼は、ベルギーチームの未来を担う「金の卵」です。Visma | Lease a Bikeのブレナンと同様に、彼もこのレベルのレースでクラシック経験を積むことを期待されているのでしょう。イヴ・ランパールトやルーク・ランパーティの動きにも注目です。

Jayco AlUlaのMax Walscheidも、グランプリ・ド・ドゥナンで勝利経験があり、石畳のレースでは危険な存在です。チームメイトのイェルテ・クラインセンも侮れません。Arkéa-B&B Hotelsからは、ロンド・ファン・フラーンデレンで2位の実績を持つルカ・モッツァートと、フロリアン・セネシャルが参戦。Intermarché-Wantyはローレンス・レックス、タコ・ファンデルホールン、フィト・ブラーツを擁し、Picnic PostNLからはニルス・エーコフとTobias Lund、ロットからはミラン・メンテンとToon Aertsが名を連ねています。この混戦模様、「へぇ～」と唸るほど多くの選手にチャンスがあると感じます。

天候が左右する戦い、そして日本での視聴の楽しみ方

さて、レース当日の天気予報ですが、アールショットとディースト周辺は最高気温が30度にも達する見込みです。日差しは非常に強いでしょう。しかし、侮れないのが、午後遅くの激しい雷雨と豪雨の可能性が90%と報じられている点です。もしレース中に雨が降れば、未舗装路や石畳はさらに滑りやすくなり、落車のリスクも高まります。これがレース展開にどう影響するか、まさに天候が勝負を分ける要素となり得ます。

このエキサイティングなレースは、SporzaやEurosport 2、そしてHBO Maxでライブ中継される予定です。日本のロードレースファンの皆さん、ぜひテレビの前で、このベルギーの熱い戦いをリアルタイムで体感してください。ドーフィネの合間にも、こんな魅力的なレースがあることを知って、「確かに！」と感じていただけたでしょうか？

果たして、若き才能が躍動するのか、それとも経験豊富なベテランが意地を見せるのか。荒れた道で繰り広げられる「ドワース・ドール・ヘット・ハーゲラント」の行方から、目が離せません。次回のレポートで、その答えをお届けできることを楽しみにしています。...