アラフィリップ、ツール・ド・フランス前にツール・ド・スイス出場へ

ジュリアン・アラフィリップ、ツール・ド・スイスでいよいよ始動！復活への秘策か、それとも新たな挑戦か？

フランスのサイクルロードレース界が誇る元世界王者、ジュリアン・アラフィリップが、いよいよツール・ド・フランスに向けた最終調整の舞台、ツール・ド・スイスに姿を現します。約1ヶ月の実戦離脱を経て、彼が選んだこの道は、かつての輝きを取り戻すための秘策なのでしょうか？それとも、新天地Tudorでの新たな役割を模索する挑戦なのでしょうか？グランツールを中心にヨーロッパのレースを追い続けてきた私、山田健一の視点から、その背景と今後の展望を深く掘り下げていきましょう。

沈黙を破る選択：ツール・ド・スイスへの道

ジュリアン・アラフィリップがエシュボルン〜フランクフルトを最後にレースから遠ざかること約1ヶ月。この間、彼は多くのトップ選手と同様に、スペインのアルレニス・シエラ Nevadaで高地トレーニングを積んできました。グランツールを前にしたこの時期、主要な調整レースといえば、クリテリウム・デュ・ドーフィネが真っ先に頭に浮かびます。しかし、アラフィリップは敢えて、ドーフィネではなくツール・ド・スイスを選択しました。これは一体、何を意味するのでしょうか？

現地メディアの報道や、チーム関係者の言葉の端々から読み取れるのは、ツール・ド・フランスに向けて「焦らず、しかし確実に」という彼の強い意志です。ドーフィネが激しい山岳ステージを多く含むのに対し、ツール・ド・スイスはタイムトライアルやパンチャー向けのコースも含まれ、より多様なコンディションでの調整が可能です。さらに、今年のフランス選手権のロードレースが6月29日に開催されることを考えると、ツール・ド・スイスが6月15日から22日という日程は、フランス選手権への調整にも理想的なリズムをもたらします。昨年、ポール・ラペラがツール・ド・スイスを経てフランス選手権を制した成功例があるだけに、アラフィリップもその再現を狙っているのかもしれませんね。「なるほど！」と思わず膝を打つ、そんな戦略的な選択と言えるでしょう。

新天地Tudor、そしてツール・ド・フランスへの渇望

2024年のツール・ド・フランスでは、Soudal Quick-Step時代にまさかの選外となったジュリアン・アラフィリップ。彼にとって、今年のツール・ド・フランスは特別な意味を持ちます。新チームTudorのジャージを着て、初めて「グラン・ブークル」（ツール・ド・フランスの愛称）のスタートラインに立つことになるからです。チームは彼を信頼し、大きな期待を寄せていることでしょう。しかし、同時にファンの間では、彼の役割について様々な議論が交わされています。

SNS上では、「彼はもうリーダーではなく、キャプテン・ド・ルート（チームの精神的支柱や経験豊富なアシスト）としての役割が主になるだろう」という声も散見されます。確かに、ここ数年の彼のパフォーマンスは、かつてダブル世界チャンピオンに輝いた頃の圧倒的な輝きを放っているとは言い難いかもしれません。しかし、フランスのファン、いや、世界中のファンがアラフィリップに抱く期待は、並々ならぬものがあります。彼は、単なる選手を超えた「アイコン」なのです。彼の走りは、レースにドラマと感情をもたらします。Tudorチームにとっても、アラフィリップのツール・ド・フランスでの活躍は、チームの存在感を世界に示す絶好の機会となるでしょう。

復活の青写真：ラペラの成功とアラフィリップのプライド

前述の通り、ポール・ラペラ（デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム-AG2R La Mondiale）がツール・ド・スイスからフランス選手権へと完璧な流れを作り、ナショナルチャンピオンの座を掴んだことは、アラフィリップにとって大きなヒントとなるはずです。ラペラとアラフィリップではタイプは異なりますが、ツール・ド・スイスでレース勘を取り戻し、フランス選手権でピークを合わせるという調整方法は、アラフィリップがフランスチャンピオンジャージを再び手にするための現実的な選択肢となり得ます。

2020年、2021年と世界選手権を連覇したアラフィリップの才能は、疑いようがありません。「そうだったのか！」と驚くようなサプライズを、彼は常に秘めているのです。一時期の不調や怪我はあったものの、彼の内に秘めた闘志は決して消えていないと私は見ています。かつて、マリアンヌ・フォスも怪我からの復帰戦で驚くべきパフォーマンスを見せたことがありますが、アラフィリップもまた、その類稀なる勝負勘と爆発力で、再び我々を驚かせてくれると信じています。ツール・ド・スイスでの彼の表情や、レース中の声のトーンから、その復調の兆しを読み解くことができれば、それは何よりの「へぇ～」という発見になるでしょう。

ツール・ド・フランス、そしてその先の舞台へ

ツール・ド・スイスでのアラフィリップの走りは、ツール・ド・フランスでの彼の役割を大きく左右するでしょう。ステージ優勝を狙うパンチャーとしての役割か、それとも若手のエースを支えるベテランアシストとしてチームを牽引するのか。あるいは、再び総合争いに絡むようなサプライズを見せてくれるのか。「確かに！」と共感を呼ぶように、現時点では彼に対するファンの期待と懐疑的な見方が混在しているのが正直なところです。

しかし、私が長年この世界で見てきた経験から言えるのは、ジュリアン・アラフィリップという選手は、我々の予想を良い意味で裏切る天才だということです。彼のキャリアには常にドラマが伴い、その激しいアタックは観る者の心を揺さぶってきました。ツール・ド・スイスで彼がどのような走りを見せるのか、そしてフランス選手権でどのような結果を残すのか。その全てが、今夏のツール・ド・フランス、ひいてはその後の彼のキャリアを占う重要な指標となるはずです。「次も読みたい！」と皆さんに思っていただけるような、そんな劇的な展開を期待せずにはいられません。