ステフ・クラス、事故から1年、バスク地方へ帰還

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは！山田健一です。

今回は、ツール・ド・フランスを始めとするグランツールで活躍する選手たちの素顔に迫るべく、少し視点を変えて、苦難を乗り越えようとしている選手にフォーカスしたいと思います。

バスク一周に帰ってきたステフ・クラス、恐怖を乗り越えて

皆さんは、昨年のバスク一周で起きた大落車を覚えていますでしょうか？ヨナス・ヴィンゲゴー、Primoz Roglic、レムコ・エヴェネプールといったトップ選手たちが軒並みリタイアを余儀なくされた、あの悪夢のような事故です。その落車で、実は、トタルエネルジーのステフ・クラスもまた、深刻な怪我を負っていたのです。

死を覚悟した瞬間

右肺の挫傷、複数の肋骨骨折、そして二つの椎骨骨折。想像を絶する痛みと恐怖だったでしょう。クラス自身も「最初の30秒は息ができず、窒息するような感覚だった。もう終わりだと思った」と当時を振り返っています。コンクリートの溝に叩きつけられた衝撃は、彼に死を覚悟させたほどだったのです。

リベンジへの想い

しかし、驚くべきことに、ステフ・クラスは今年、再びバスク一周のスタートラインに立っています。彼は「ネガティブな瞬間を払拭するチャンスとして、リベンジの気持ちでバスクに戻ってきた」と語ります。あの悪夢のような事故から一年、恐怖心は残っていないのでしょうか？「もちろん、あの事故は頭の片隅にある。でも、毎日思い出すわけではない。バスクに戻ることで、ようやく一つの区切りをつけられるんだ」と彼は力強く答えます。

安全対策への提言

気になるのは、コースの安全対策についてです。最近のレースを見ていると、残念ながら、事故は減っているとは言えません。クラスも「バスク一周でも、下りの先にゴールが設定されている。以前から問題視されていたのに、毎年繰り返されている」と指摘します。一方で、彼は主催者だけを責めるのではなく、「選手自身も、より安全に走る責任がある」と強調します。

ツール・ド・フランスへの想い

昨年の怪我の影響で、ステフ・クラスはツール・ド・フランスへの出場を強行しました。しかし、それが結果的にオーバーワークとなり、帯状疱疹を発症。シーズン後半は苦しい戦いを強いられました。今年は万全の状態でシーズンを迎え、バスク一周ではトップ10入りを目標にしています。アルレニス・シエラ Nevadaでの高地トレーニングもこなし、コンディションは上向きだと言います。

ステフ・クラスの挑戦は、私たちに勇気を与えてくれます。恐怖を乗り越え、再び走り出す彼の姿は、まさに不屈の精神の象徴です。今年のツール・ド・フランスで、彼がどんな走りを見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。