ジロ・ネクスト・ジェン：アゴスティナッキオが勝利、イタリア勢が表彰台独占！

若きイタリアの才能が躍動！歴史的なトリプレッタ達成

6月20日、イタリアのピエモンテ州を舞台に行われたジロ・ネクストジェン第6ステージ、オヴァーダからアックイ・テルメまでの154km。この日、イタリアのサイクルロードレース界に希望の光が差し込みました。なんと、表彰台のトップ3をイタリア人選手が独占するという、歴史的な「トリプレッタ（三連覇）」が達成されたのです！

優勝したのはヴァッレ・ダオスタ州出身のフィリッポ・アゴスティナッキオ（23歳、Biesse-Carrera）。彼に続き、2位にはトレヴィーゾ出身のアレッサンドロ・ボルゴ（20歳、バーレーン・ヴィクトリアス・デベロップメント）、そして3位にはクーネオ出身のピエトロ・マッティオ（20歳、チーム ヴィスマ・リースアバイク・デベロップメント）が名を連ねました。まさに、イタリアサイクリング界の未来を担う若き才能たちが、国際舞台でその実力を示した瞬間だったと言えるでしょう。

特に注目すべきは、彼らがそれぞれ異なるバックグラウンドを持っていることです。アゴスティナッキオはシクロクロスでヨーロッパ選手権のメダルを獲得するなど、オフロードでも輝かしい実績を持つオールラウンダー。ボルゴは、デ・マルキやミランといったトップ選手を輩出してきた名門「サイクリング・チーム・フリウリ」出身で、今季はU23ヘント〜ウェヴェルヘムで勝利を飾るなど、クラシックレースでの適性を見せています。そして、マッティオはあの最強チーム、チーム ヴィスマ・リースアバイクの育成チームに所属し、U23パリ〜ルーベで5位に入るなど、石畳のスペシャリストとしての片鱗を見せています。彼らの多様な才能が結集したこのトリプレッタは、2023年のポヴェリアーノでのトリプレッタ（ロメーレ、デ・プレット、メーリス）を彷彿とさせ、イタリアの育成システムの充実ぶりを物語っていますね。

アゴスティナッキオの執念が生んだ勝利の涙

この歴史的勝利の中心にいたフィリッポ・アゴスティナッキオ。彼はゴールラインを通過した瞬間、感極まって大粒の涙を流しました。その涙には、彼のこれまでの苦悩と、勝利への執念が凝縮されていたように見えました。

レース後、アゴスティナッキオはこう語っています。「2日前には、もうリタイアしようかとさえ思っていました。暑さに本当に苦しんでいたんです。木曜日（第5ステージ）は歯を食いしばって、なんとか逃げ集団に追いつき、16位で終えることができました。その時、脚の調子は良いと感じていたし、今日はもうチャンスがないかもしれないと思っていました。だから、思い切ってアタックしました。特定のタイミングを選んだわけではなく、ただ『今だ』と感じた時に仕掛けたんです。上りで差をつけようとしましたが、ネスポリたちの方が強かった。だから、下りで全力を尽くしました。これが僕のロードレースでのキャリア初勝利なんです。最後の10kmは本当に感動的でした。僕は決して『勝ち続けるタイプ』ではないんです…弟とは違ってね。もしかしたら来年、弟がジロ・ネクストジェンに出場するかもしれません。彼は僕よりも強いと思いますよ」。

彼の言葉からは、プロの選手であっても、時に「もうダメだ」と感じる瞬間があること、そしてそこから這い上がって掴んだ勝利の重みが伝わってきます。弟との比較もまた、彼の人柄が垣間見えるエピソードですね。この勝利が、彼にとって大きなターニングポイントとなることは間違いないでしょう。

マリア・ローザ争いは最終局面へ！トゥックウェルのバースデープレゼントなるか？

一方、総合リーダーの証であるマリア・ローザは、イギリス人選手ルーク・トゥックウェル（20歳、レッドブル・ボーラ・ルーキーズ）が堅守しています。そして、明日は彼の21歳の誕生日。まさに、最高のバースデープレゼントを自ら掴み取ろうとしているのです。

トゥックウェルは語ります。「マリア・ローザは21歳の誕生日に最高のプレゼントになると思います。レース日程が発表された時、自分の誕生日がステージと重なるのを見て興奮しました…でも、リーダーのジャージを着てその日を迎えられるなんて信じられない気持ちです。今日は、逃げ集団が少し遅れて形成されるように仕向けたかったので、コントロールする手間が省けました。明日は本当に厳しい一日になるでしょうが、サイモン・ゲランスが2008年のツール・ド・フランスで、これからゴールする場所でステージ優勝していると知って、自信が湧いてきました…オーストラリア人にとって良い地形になるでしょう！ ジャイ・ヒンドレーからも昨晩、お祝いのメッセージをもらいました。彼らの遺志を継ぎたいと心から願っています」。

彼のコメントからは、オーストラリア人としての誇りと、先輩選手からの期待を感じ取ることができますね。現在、トゥックウェルは26秒差でスロベニアのヤコブ・オムルゼル（バーレーン・ヴィクトリアス・デベロップメント）を、36秒差でフィリッポ・トゥルコーニ（VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ）を抑えてトップに立っています。ベルギーのウィダーやフィン、ウィテン・フィリップセン、ノルウェーのノールハーゲンといった強豪も虎視眈々と逆転を狙っており、総合争いはまさに混沌としています。

運命のプラート・ネヴォーゾ、歴史が繰り返されるか

いよいよ、ジロ・ネクストジェンの総合優勝を決定づける最終盤に突入します。明日、第7ステージはブラからプラート・ネヴォーゾまでの163km。このステージは、標高差959m、平均勾配7.1%、距離13.3kmという厳しい上りフィニッシュが待ち受けています。特に最後の6kmは平均6.6%と、容赦なく選手たちを追い詰めるでしょう。

プラート・ネヴォーゾは、プロのジロ・デ・イタリアでも幾度となくドラマを生み出してきた歴史ある上りです。1996年にはトニコフが、2000年にはガルゼッリがここで勝利を手にしました。果たして、未来のグランツール覇者たちは、この歴史的な上りでどのような戦いを見せてくれるのでしょうか。若き選手たちの限界への挑戦、そして総合争いの行方から目が離せません。

そして最終日となる第8ステージは、ピネローロをスタート・ゴールとする126kmの起伏に富んだコースで、アタッカー向けの展開が予想されます。最後まで何が起こるか分からないのが、サイクルロードレースの醍醐味ですよね。

ジロ・ネクストジェンは、まさに未来のワウト・ファンアールトやヨナス・ヴィンゲゴー、タデイ・ポガチャル、そして日本の新城幸也選手のような選手たちが生まれる「登竜門」です。彼らの活躍が、数年後のグランツールでのドラマに繋がっていくことを想像すると、今から胸が高鳴ります。今後も、若き才能たちの成長を追いかけていきたいと思います。