ジロ2025 最終週：見逃せない決戦ステージ

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツール担当の山田健一です。

いよいよジロ・デ・イタリアも最終週に突入しました。2週間の激闘を終え、選手たちは束の間の休息日を過ごしましたが、ここからが本当の戦いです。現地メディア『ヴィーラーフリッツ』も強調するように、この最終週は「とてつもなく、とにかく、とてつもなく過酷」な山岳ステージが目白押し。総合優勝を巡る最終決戦の舞台が、いよいよ幕を開けるのです。

これまでのステージで、マッズ・ピーダスン、ジョシュア・ターリング、カスペル・ファンウーデン、カーデン・グローブス、フアン・アユソ、ルーク・プラップ、ワウト・ファンアールト、ダーン・ホーレ、リチャル・カラパス、オラフ・コーイ、カスパー・アスグリーン、カルロス・ベローナといった強豪たちが勝利を飾ってきましたが、最終週はクライマーたちの独壇場となるでしょう。マリア・ローザを巡るドラマは、ここから最高潮に達するはずです。

休息日明けの激震！ 第16ステージ：ピアッツォーラ・スル・ブレンタ〜サン・ヴァレンティーノ (203km)

休息日明け、選手たちは再び戦場へと赴きますが、その初戦がとてつもなく厳しいものとなるのは、ジロの常。この第16ステージは、今大会で最も獲得標高が高い、まさに「山岳祭り」と呼ぶにふさわしい一日です。5000m近い獲得標高は、アルプスに挑む覚悟を選手たちに突きつけます。

レースは67km地点のラ・フリッカ峠から本格的な登りに入り、そこからゴールまで平坦路はほぼ皆無という過酷さ。特に注目は、伝説のモンテ・ボンドーネの登坂路の一部でもあるカンドライ峠（10km、平均勾配7%）。そして、フィニッシュ手前には最大勾配14%に達する激坂を含む**サンタ・バルバラ峠（12.7km、平均勾配8.3%）が待ち受けます。さらに、そこから直接繋がるようにサン・ヴァレンティーノ峠（18.2km、平均勾配6.2%）**が立ちはだかります。平均勾配はそこまで高くありませんが、最大14%の急勾配が3段階に分かれて現れる「トラップ」のような峠です。総合上位を狙う選手たちにとっては、まさに「マネータイム」。ここでタイム差が開き、総合争いの構図が大きく変わる可能性を秘めています。

歴史が息づく激坂！ 第17ステージ：サン・ミケーレ・アッラディジェ〜ボルミオ (155km)

第17ステージもまた、過酷な山岳ステージです。この日の主役は、ジロの歴史に名を刻む伝説の峠、モルティローロ峠（12.6km、平均勾配7.6%）。スタート直後から地形は緩やかに上り始め、選手たちの脚をじわじわと削っていきます。

中盤には、過去12回ジロのコースに組み込まれ、1997年と2010年にはステージフィニッシュ地点にもなった**トナーレ峠（15.2km、平均勾配6%）**が登場。そして、このステージの真骨頂は、長い下りを終えた後に現れるモルティローロ峠です。平均勾配は7.6%ですが、終盤には最大16%もの「壁」が選手たちの行く手を阻みます。このモルティローロは、多くの名勝負が繰り広げられてきた舞台であり、登坂中に選手たちの表情が歪むほどに厳しい。ここでのアタックは、総合争いを決定づける一撃となるかもしれません。下りもテクニカルで、レ・モッテを経てボルミオへと向かう道のりも決して楽ではありません。

5つ星の難易度！ 第19ステージ：ビエッラ〜シャンポルク (166km)

RCSスポルトが今大会で唯一、第16ステージと第20ステージと共に「5つ星」の難易度を与えたのが、この第19ステージです。わずか166kmの距離に、なんと4950mもの獲得標高が詰め込まれており、その過酷さは想像を絶します。

スタート直後から疲弊した選手たちを待ち受けるのはクローチェ・セッラ峠（11.3km、平均勾配4.6%）。その後、50km地点からはいよいよ本格的な登坂が始まります。このステージには、15kmを超える長大な山岳が3つも配置されているのが特徴です。まずコル・ツェコーレ（16km、平均勾配7.7%）、続いて最大12%の勾配を持つ**サン・パンタレオン峠（16.5km、平均勾配7.2%）が選手たちを苦しめます。そして、サン・パンタレオン峠からの約20kmの下りを経て、最終盤にはフランス語の名前を持つジュウー峠（15.1km、平均勾配6.9%）**が立ちはだかります。このジュウー峠の頂上から、ゴール地点シャンポルクまではアンタニョー峠（9.4km、平均勾配4.6%）の登りを含む約6km。まさに息つく暇もない山岳の連続で、総合争いは極限状態に達するでしょう。

総合優勝の行方！ 第20ステージ：ヴェッレス〜セストリエーレ (205km)

最終日を前に行われる第20ステージは、クイーンステージこそ第16ステージに譲りますが、その重要性においては全く遜色ありません。今大会3度目となる山頂フィニッシュであり、ここが総合優勝の行方を決定づける最終舞台となる可能性が高いからです。

序盤の**コーリオ（6.5km、平均勾度3.7%）とコッレ・デル・リス（13.7km、平均勾配4.2%）は、この日のメインディッシュに比べれば「前菜」に過ぎません。真の戦いは後半に凝縮されています。特に恐ろしいのは、今大会のチーマ・コッピ（最高地点）であるフィネストレ峠（18.4km、平均勾配9.2%）**です。この峠の最後の8kmは、なんと未舗装路であり、しかも「とてつもなく急勾配」。砂埃舞うグラベルの激坂は、選手たちの肉体と精神の限界を試します。過去のジロでも、このフィネストレ峠でのアタックが総合優勝を決定づけた例は枚挙にいとまがありません。

フィネストレ峠からの約12kmのテクニカルな下りを終えると、最後は**セストリエーレへの16kmの登り（平均勾配3.8%）**が選手たちを待ち受けます。ここで、誰がマリア・ローザを身にまとうのか、その答えが明らかになるのです。

最終週のドラマを見逃すな！

ジロ・デ・イタリアの最終週は、常に予測不能なドラマが生まれる舞台です。ポール・マニエやミラン・フレティンのような若手から、ミケル・ランダのようなベテランまで、多くの選手たちがそれぞれの目標に向かって戦い続けています。先日行われたブエルタ・ア・ブルゴス・フェミナスではマーレン・ロイサーが、メルカンツール・クラシック・アルプ＝マリティームでは激しいアタック合戦が繰り広げられたと聞きますが、ジロの最終週はそれらを凌駕する興奮が待っているはずです。

この過酷な山岳連戦で、総合リーダーは揺るぎない力を見せるのか、それとも伏兵がサプライズを起こすのか。選手たちの表情や声のトーンから、その日の調子や戦略を読み解くのも、このレースの醍醐味です。ぜひ、歴史に残るであろう最終週の戦いを、最後まで見届けてください。興奮のクライマックスは、もうすぐそこです！