ジロ・ネクストジェン本日開幕：2006年生まれのフィンが注目株

ジロ・ネクストジェン、未来のスターを予見する「若き才能の登竜門」

本日、イタリアのローでU23世代の最高峰レース、ジロ・ネクストジェンが幕を開けました。このレースが持つ意味合いは、単なる若手育成イベントに留まりません。多くの若き才能がここをステップに、世界のトップステージへと羽ばたいていく、まさに「未来のスターを予見する登竜門」なのです。Uae Emiratesの主力選手であるフアン・アユソが「今の自分があるのは、このレースでの経験が最も大きな自信を与えてくれたからだ」と語っていることからも、その重要性がお分かりいただけるでしょう。彼は2021年にこの大会を制し、その後グランツールで大活躍を見せています。

記憶に新しいところでは、2020年の勝者であるトーマス・ピドコックがいますね。シクロクロスやMTBの世界王者でありながら、ロードでもパリ〜ルーベを制するなど、その多才ぶりを遺憾なく発揮しています。また、2023年の覇者ヨハネス・スターンミッテも、将来を嘱望されるノルウェーの若手として注目されています。彼らのように、このジロ・ネクストジェンで輝いた選手たちが、数年後にはジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスのメイン集団でマリア・ローザやマイヨ・ジョーヌを争う姿を想像すると、胸が高鳴りますね。今年は一体どんな才能が、私たちの心を揺さぶる走りを見せてくれるのでしょうか。

イタリアの期待を背負う18歳、ロレンツォ・マーク・フィンに注目！

今年のジロ・ネクストジェンで、地元イタリアが最も大きな期待を寄せるのが、18歳のロレンツォ・マーク・フィンです。昨年ジュニア世界チャンピオンに輝いた彼は、Red Bull Bora Hansgrohe Rookiesのキャプテンとして、総合優勝を狙う野心を胸にローのスタートラインに立ちます。ジェノヴァ出身のフィンは、この「ピンクのレース」に向けてアンドラで3週間の集中トレーニングを積んできました。Red Bull Bora Hansgroheの開発ディレクターであるジョン・ウェイクフィールドが彼に全幅の信頼を寄せていることからも、チームがいかにこの「アッズーロの才能」に賭けているかが伺えます。同じチームには、すでにトップチームでも実績を積み始めているジュリオ・ペリツァーリというもう一人のイタリアの希望もいるのですから、Red Bull Bora Hansgroheの若手育成プログラムには本当に驚かされます。

今シーズン、ロレンツォはU23カテゴリーとプロカテゴリーの両方で経験を積んできました。プロの舞台では、ロード代表監督マルコ・ヴィッラが就任後初めて指揮を執ったジロ・ディ・レッジョ・カラブリアで表彰台に上がるなど、その実力はすでに証明済みです。U23レースでは、フレッシュ・アルデンネーズで2位、ジロ・デル・ベルヴェデーレで優勝、パリオ・デル・レチョートで2位、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで5位と、安定して上位に食い込んでいます。ジロ・デ・イタリアでのプリモシュ・ログリッチとジェイ・ヒンドレーの無念なリタイアで失意に沈んだRed Bull Bora Hansgroheですが、このU23版のイタリアのステージレースで、ロレンツォ・マーク・フィンがチームに笑顔を取り戻してくれることを願ってやみません。

三つの山場が勝負を分ける！本命ヤルノ・ウィダーとの激闘

フィンにとって最大のライバルと目されているのが、ロットのベルギー人選手、ヤルノ・ウィダーです。彼は昨年のジロ・ネクストジェン覇者であり、今年の大会でも圧倒的な本命とされています。フィンとウィダーの直接対決は、今大会の三つのキーポイントで繰り広げられると私は見ています。まず本日行われるローでの8.4kmの個人タイムトライアル、そして火曜日の第3ステージ、マニヴァ峠への山頂フィニッシュ、最後に土曜日のクイーンステージ、平均勾配7.3%の11kmに及ぶプラート・ネヴォーゾへの激坂フィニッシュです。特にプラート・ネヴォーゾは、総合優勝の行方を決定づける最大の難所となるでしょう。

しかし、この二人の対決だけに注目するのはあまりにも惜しい話です。出場者リストを見渡せば、他にも実力者がひしめいています。Lidl-Trekに所属するデンマークのアルバート・ウィゼンフィリプセンは、パリ〜ルーベU23での勝利という実績を引っ提げてこのジロ・ネクストジェンに参戦しています。石畳のクラシックで培ったパワーとテクニックが、イタリアの道でどのように活かされるのか、非常に楽しみな選手の一人です。彼らの他にも、虎視眈々と総合上位を狙うダークホースがきっと潜んでいるはずです。

「血統」が彩るネクストジェン、未来のレジェンド候補たち

今大会のもう一つの見どころは、名だたるレジェンドたちの「血統」を受け継ぐ若手選手たちが多数出場していることです。Lidl-Trekには、アルバート・ウィゼンフィリプセンと共に、ジョナサン・ミランの弟であるマッテオ・ミランが名を連ねています。ジョナサンは2021年の東京オリンピックでチームパシュート（4人チームでトラックを走る団体追い抜き）の金メダリストであり、2023年と2024年のジロ・デ・イタリアで計4勝を挙げたトップ選手です。弟マッテオも兄に続く活躍を見せるか、注目されます。

さらに、Jaycoの開発チームからはベン・ウィギンスが出場します。彼こそ、ツール・ド・フランス2012年覇者であり、オリンピックで5つの金メダルを獲得した伝説のブラッドリー・ウィギンスの息子なのです！ベンは2023年のジュニア世界選手権マディソンでデカトロン・AG2Rラモンディアール チームとして金メダルを獲得するなど、トラック競技ですでに素晴らしい実績を残しており、いよいよロードでの本格的な飛躍を目指しています。

71名のイタリア人選手の中には、Astanaのシモーネ・ザニーニもいます。21歳のヴァレーゼ出身のクライマーである彼は、1994年と2001年のジロ・デ・イタリアで2勝を挙げたステファノ・ザニーニの甥にあたります。そして、Xds Astanaの現スポーツディレクターであるステファノの甥はシモーネだけではありません。Vf Group Bardianiのフィリッポ・トゥルコーニもまた、ステファノの妻の兄弟の息子、つまり彼の甥なのです。二人の甥が同じレースを走るというのは、なかなか面白い巡り合わせですね。

そして、Biesse-Carreraの「ファンタスティック5」の一人、フィリッポ・アゴスティナッキオも要注目です。彼は2024年11月にスペインで開催されたヨーロッパシクロクロス選手権で2位に入り、さらに今年2月にフランスで行われた世界選手権ジュニアで優勝したマッティア・アゴスティナッキオの兄弟です。

このように、多くの「血統」ある選手たちが、それぞれの家族の期待とプレッシャーを背負いながら、このジロ・ネクストジェンでしのぎを削ります。彼らが単なる「誰かの息子（甥、兄弟）」で終わらず、自身の名で歴史に名を刻むことができるのか、その第一歩となる今大会の走りは必見です。

若き才能たちの輝きを、その目に焼き付けよう！

本日12時20分、最初の選手がタイムトライアルのスタートを切る瞬間から、ジロ・ネクストジェンは8日間、1029kmにわたる壮大な旅を始めます。このレースは、単に速い選手を見つけるだけでなく、困難な状況での判断力、チームとの連携、そして何よりも勝利への飽くなき執念といった、プロのロードレーサーに求められるあらゆる資質を試す場となります。

この大会で新たな若いチャンピオンが誕生し、数年後には、ジロ・デ・イタリアの「マリア・ローザ」という、はるかに重みのあるジャージを巡って戦う姿を、私たちはきっと目にすることになるでしょう。彼らのフレッシュな走り、そして未来への可能性に満ちた輝きを、ぜひ日本のサイクルロードレースファンの皆さんも、その目に焼き付けてください！