体調万全とはほど遠いファン・デル・ブレッヘン、フレッシュ・ワロンヌ出場は？

山田 健一がお届けする、サイクルロードレース最新情報です。

ワロンヌの矢 女王アンナ・ファンデルブレッヘン、8勝目への道に暗雲

サイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツールを中心に追いかける特派員の山田 健一です。いよいよアルデンヌクラシックの真打ち、ワロンヌの矢が迫ってきました。特に女子レースでは、このレースの歴史そのものとも言える女王、アンナ・ファンデルブレッヘンの存在が注目されます。彼女はこれまでワロンヌの矢で実に7回も優勝という、文字通り圧倒的な記録を打ち立てています。しかし、今年のレースを前に、彼女のコンディションに大きな懸念が持ち上がっています。前人未到の8勝目がかかる一戦ですが、果たして女王は万全の状態でスタートラインに立てるのでしょうか。

女王を襲った予期せぬ体調不良

事の発端は、先週末のアムステル・ゴールドレースでした。アンナ・ファンデルブレッヘンは、このリンブルフの丘陵クラシックでレース序盤に姿を消しました。彼女が途中棄権する姿は、多くのファンに衝撃を与えたはずです。チームマネージャーのダニー・スタム氏がレース後に語ったところによると、体調不良はアムステル・ゴールドレースの前から始まっていたようです。金曜日のブラバンツ・パイルで既に体調が優れず、土曜日には頭痛と喉の痛みを訴えていたとのこと。それでも、何かを乗り越えられるかもしれないという淡い期待を抱いてアムステル・ゴールドレースにスタートしたものの、それはすぐに無駄な希望であることが明らかになった、とスタム氏は説明しています。

肺の不調とチームへの献身

スタム氏とのその後のやり取りで、アンナ・ファンデルブレッヘンの体調不良がさらに深刻であることが分かりました。「彼女は全くフィットしていない」とスタム氏は認め、「肺にかなり問題がある」と具体的に症状を明かしました。これは穏やかではありません。肺の不調は、ロードレース、特にワロンヌの矢のような急勾配の壁を駆け上がるレースにおいては致命的になりかねません。

それでも、アムステル・ゴールドレースでの彼女の動きには、プロフェッショナルとしての矜持が見えました。スタム氏は「アムステル・ゴールドレースでの（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ.）、最初の1時間で他のチームメイトのために良い仕事ができたことは幸いだ」と語っています。体調が万全でない中でも、チームのために献身的に動こうとしたその姿勢は、まさにチャンピオンと呼ぶにふさわしいでしょう。しかし、残念ながら、レース終盤で勝負に絡むほどのフィットネスはなかった、という現実を突きつけられました。彼女自身、アムステル、ワロンヌの矢、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュというアルデンヌクラシック3連戦に向けて調整してきただけに、この状況には「全く喜んでいない」とスタム氏は心中を代弁しています。しかし、こればかりは受け入れるしかない、と。

8勝目への期待と現実的な見方

さて、最大の関心事は、ワロンヌの矢での8勝目達成の可能性です。スタム氏も正直に「彼女が勝つことができるか？ 正直に言って、そうは思わない」と厳しい見方を示しています。これは、チームマネージャーという立場でありながら、選手の現状を包み隠さず語るスタム氏らしいコメントと言えるでしょう。しかし、その直後に彼はこう付け加えています。「一方で、この手のチャンピオン相手には決して分からない」。この言葉に、長年トップレベルで戦ってきたアンナ・ファンデルブレッヘンに対する敬意と、わずかながらも奇跡への期待が込められているように感じます。

出場判断は当日朝 - シーズン全体を見据えて

ワロンヌの矢への出場可否、そして続くリエージュ〜バストーニュ〜リエージュへの影響は、まさに今、チーム内で検討されている最重要事項です。スタム氏は強調します。「最も重要なのは、アンナがシーズンの残りのレースに影響を与えるようなダメージを負わないことだ」。ワロンヌの矢での8勝という偉業は確かに魅力的ですが、それがシーズンの主要ターゲットであるジロ・デ・イタリア女子やツール・ド・フランス女子に悪影響を及ぼすようなことがあってはなりません。

出場するかどうかの判断は、なんとレース当日の水曜日の朝に行われるとのこと。「もし乗れる状態なら、何ができるか見てみよう。無理なら、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュに向けて彼女と話し合う」とスタム氏は語っています。単に勝てるかどうかだけでなく、「アムステルのように、チームのために重要になれるか」という点も判断基準になる可能性があるようです。女王が体調不良を押してまでチームのために走る姿は感動的ではありますが、ここは賢明な判断が求められる局面でしょう。

女王の決断は？ ワロンヌの矢の行方

アンナ・ファンデルブレッヘンのワロンヌの矢出場は、まさに直前まで予断を許さない状況です。もし彼女が欠場となれば、レース展開は大きく変わるでしょう。ワロンヌの矢のフィニッシュ地点、ミュール・ド・ユイは、彼女の独壇場でした。あの壁での彼女の圧倒的な強さを知っているだけに、もし女王が不在となれば、他の選手たちにもチャンスが生まれます。

果たして、アンナ・ファンデルブレッヘンはスタートラインに立つのでしょうか？ そして、もし立ったとして、あのミュール・ド・ユイで、かつての輝きを見せることはできるのでしょうか？ 女王の決断、そしてワロンヌの矢の行方から、目が離せませんね。