ジロ2025 山岳ステージを彩る5人のクライマー

2025年ジロ・デ・イタリア 山岳を彩るクライマーたち ～山田健一の注目リスト～

皆さん、こんにちは。グランツール担当の山田健一です。

いよいよ、イタリアの地に熱狂が戻ってきます。2025年のジロ・デ・イタリア開幕が迫ってきました。今年のコースは、例年と比較すればクライマーにとって少し優しめ、なんて声も聞かれますが、いやいや、イタリアの山岳がそう簡単に牙を収めるはずがありません。ここぞという場面では、必ずやドラマが生まれるでしょう。

特に私が注目しているのは、総合争いの最前線に立つ選手たちとは一線を画し、山岳ステージでの勝利やマリア・アッズーラ（山岳賞ジャージ）獲得を狙うアタッカーたちです。彼らの積極的な走りが、レースに彩りを与え、観る者を熱狂させるのです。

今回は、そんな「山を彩る」であろうクライマーたちの中から、私が特に注目している5人の名前を挙げたいと思います。彼らの背景や、今大会での役割に思いを馳せながら、一緒にジロを楽しみませんか？

ベテランの円熟味と三大ツール制覇への執念 - ワウト・プールス

まず一人目は、ベテラン中のベテラン、ワウト・プールス（XDS・アスタナ チーム）です。先日行われたツール・オブ・ターキーでは見事な総合優勝を飾り、37歳にしてなお衰えを知らない強さを見せつけました。

彼の今大会での目標は、なんと言ってもジロでのステージ優勝でしょう。2023年にはツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでそれぞれステージ優勝を飾っており、ジロで勝てば、現役選手では数少ない三大ツール全制覇という偉業を達成することになります。

ワウト・プールスがこの歴史的快挙にどれほど飢えているか、想像に難くありません。XDS・アスタナ チームの一員として、彼はきっと山岳ステージで積極的にアタックを仕掛けてくるはずです。その経験と勝負勘は、若手にはない大きな武器。彼の「三大ツール制覇への執念」が、ピンク色の空の下で結実するのか、注目せずにはいられません。

XDS・アスタナ チームのジロ・デ・イタリア2025 出場予定選手（一部）

• ワウト・プールス
• ディエゴ・ウリッシ
• ニコラ・コンチ
• ロレンツォ・フォルトゥナート
• マックス・カンター
• アントン・クズミン
• ファウスト・マスナダ
• クリスティアン・スカローニ

イタリア期待の新星、ブレイクの予感 - ダヴィデ・ピガンゾーリ

対照的に、キャリアのまさに「始まり」にいるのが、22歳のイタリア人クライマー、ダヴィデ・ピガンゾーリ（チーム ポルティ・ビジットマルタ）です。プロ3年目を迎える彼は、昨シーズンのオ・グラン・カミーニョでデレク・ジーに次ぐ総合2位に入るなど、着実にその才能を開花させています。

彼の最大の魅力は、その若さゆえの伸びしろと、山岳でのアグレッシブさです。今大会では総合争いに絡むというよりは、自由に山岳ステージで勝利を狙う立場となるでしょう。これは彼にとって大きなチャンスです。

母国イタリアのステージレースで、地元の声援を浴びながら山を駆け上がるダヴィデ・ピガンゾーリの姿は、きっと多くのファンを魅了するはずです。彼のフレッシュなアタックが、ジロに新たな風を吹き込むことに期待しましょう。「このジロでブレイクするかもしれないイタリア人クライマーは誰か？」と聞かれたら、私は迷わず彼の名前を挙げますね。

チーム ポルティ・ビジットマルタのジロ・デ・イタリア2025 出場予定選手（一部）

• ダヴィデ・ピガンゾーリ
• ダヴィデ・バイス
• マッティア・バイス
• ジョヴァンニ・ロナルディ
• ミルコ・マエストリ
• フランシスコ・ムニョス Llana
• アンドレア・ピエトロボン
• アレッサンドロ・トネッリ

昨年の鮮烈な輝きを再び - ゲオルグ・シュタインハウザー

昨年のジロで、まさに「驚きの新人」として注目を集めたのが、ドイツの若きクライマー、ゲオルグ・シュタインハウザー（EFエデュケーション・イージーポスト）でした。特に最終週の山岳での走りは鮮烈で、ブロコン峠フィニッシュのステージでは、逃げから見事に勝利を掴み取りました。山岳賞でも3位に入る活躍でしたね。

2025年シーズンは、まだ昨年のジロで見せたような爆発的な走りを見せる機会は少ないかもしれませんが、彼が持つ山岳でのポテンシャルは間違いありません。EFエデュケーション・イージーポストは、エースのリチャル・カラパスを含め、アタックを厭わない選手が多いチームです。

チームの戦略の中で、ゲオルグ・シュタインハウザーにもきっとチャンスは巡ってくるでしょう。昨年の経験を経て、さらに成長した彼の走りに期待が高まります。再びあの勇敢なアタックを見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ありません。

EFエデュケーション・イージーポストのジロ・デ・イタリア2025 出場予定選手（一部）

• リチャル・カラパス
• カスパー・アスグリーン
• ジェフェルソン・セペダ (EF Education-EasyPost)
• オウェイン・ドゥール
• Mikkel Froelich Honoré
• ダレン・ラファーティー
• James Callum Shaw
• ゲオルグ・シュタインハウザー

総合か、それともアタックか？イタリアン・クライマーの選択 - ジュリオ・チッコーネ

イタリアのファンが最も注目するクライマーの一人でしょう、ジュリオ・チッコーネ（リドル・トレック）。ツール・オブ・ジ・アルプスでの活躍も記憶に新しいですね。彼は本来、総合上位を狙える実力を持っていますが、時として波があるのも事実です。

もし序盤でタイムを失うようなことがあれば、彼は迷わず目標をステージ優勝やマリア・アッズーラ獲得に切り替えてくるはずです。そして、そうなった時のジュリオ・チッコーネは、本当に手がつけられないほど強いのです。

食らいつくような走りではなく、自らレースを積極的に動かす「コッピのような」アタックこそが、彼の真骨頂。リドル・トレックは強力なチームですが、彼が自由に動ける状況になった時、どんなドラマが生まれるのか。彼の「選択」が、ジロの山岳ステージの行方を大きく左右する可能性があります。

リドル・トレックのジロ・デ・イタリア2025 出場予定選手（一部）

• ジュリオ・チッコーネ
• ダーン・ホーレ
• パトリック・コンラッド
• セーアン・クラーウアナスン スザンヌ・アンデルセン
• ジャコポ・モスカ
• マッズ・ピーダスン
• マティアス・ヴァチェク
• カルロス・ベローナ Quintanilla

伝説のクライマー、一閃にかける - ナイロ・キンタナ

最後に挙げたいのは、グランツールの歴史に名を刻むコロンビアのレジェンド、ナイロ・キンタナ（モビスター チーム）です。かつてのような圧倒的な韋駄天クライマーではなくなったかもしれませんが、それでも彼は「特別な日」を演出する力を持っています。

昨年のジロ、リヴィーニョ峠への山頂フィニッシュステージでの走りを覚えている方も多いでしょう。あの時は、ピンク色のジャージを着たタデイ・ポガチャルが本気で追い上げなければ、彼がステージ優勝を飾っていたかもしれません。

モビスター チームのエースはEiner Rubio Reyesになると思われますが、チームの戦略次第で、ナイロ・キンタナにも必ずチャンスは巡ってきます。彼は自身のキャリアの集大成として、母国のファン、そして世界のファンに、もう一度あの頃のような輝きを見せたいと強く願っているはずです。経験に裏打ちされた勝負勘で、彼はジロの山岳で一閃を放つことができるのか。見守りたいと思います。

モビスター チームのジロ・デ・イタリア2025 出場予定選手（一部）

• ナイロ・キンタナ Rojas
• Orluis オールイス・アウラール Sanabria
• ヨン・バレネチェア Golzarri
• Jefferson Albeiro Cepeda (Movistar)
• ダヴィデ・フォルモロ
• ロレンツォ・ミレージ
• Einer Rubio Reyes
• アルベルト・トレス Barcelo

この他にも注目すべきクライマーは多数！

今回ご紹介した5人以外にも、山岳ステージで存在感を示すであろう選手はたくさんいます。例えば、コフィディスのセルヒオ・サミティエル、デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム AG2R La Mondialeのニコラ・プロドムやジョフレ・ブシャール、EFエデュケーション・イージーポストにはHugh Carthyやジェフェルソン・セペダ、モビスター チームにも別のジェフェルソン・セペダがいますね。イタリア勢では、チーム Jayco AlUlaのフィリッポ・ザナや、XDS・アスタナ チームのクリスティアン・スカローニなども面白い存在です。

彼らがどのようなアタックを見せ、チーム戦略の中でどんな役割を担うのか。ご紹介した選手たちの走り、そして彼らが所属するチーム（XDS・アスタナ チーム、チーム ポルティ・ビジットマルタ、EFエデュケーション・イージーポスト、リドル・トレック、モビスター チーム、コフィディス、デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム AG2R La Mondiale、チーム Jayco AlUlaなど）の動きにも注目しながら、2025年ジロ・デ・イタリアの山岳バトルを存分に楽しんでいきましょう！次に彼らがどんなドラマを見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。