カーデン・グローブス、2025ジロ開幕マリア・ローザに言及、ただし課題も

ジロ・デ・イタリア開幕前夜：カーデン・グローブスが語る初日マリア・ローザへの野心と、怪我からの復帰

いよいよ、ピンクの季節がやってきた。2025年のジロ・デ・イタリア開幕を翌日に控えたアルバニア、ティラナ。スタートリストを眺めながら、私は様々な選手の顔を思い浮かべている。そんな中、ひときわ気になる存在がいる。アルペシン・ドゥクーニンクの快速スプリンター、カーデン・グローブスだ。チームはエースの座を彼に託したが、その道のりは決して順風満帆ではなかった。現地で彼の言葉を聞き、その表情から読み取れるものは何だろうか。

怪我からの復帰、不安と自信の狭間で

グローブスは今シーズン、膝の怪我に悩まされ、春のクラシック戦線を棒に振った。3月末のヴォルタ・ア・カタルーニャでのリタイア以降、レースからは完全に遠ざかっている。これはスプリンターにとって、特に重要なレース勘を養う上で大きなハンディキャップとなりうる。

「調子は良いよ。高地でしっかりと準備できた」と彼は語る。言葉を選びながらも、その声には一定の手応えが感じられた。「でも、しばらくレースを走っていないんだ。怪我のせいでクラシックをスキップせざるを得なかったからね」。正直なところ、不安がないわけではないようだ。「このジロには多少の疑念を抱えながら臨むことになる。でも、ここにいられて嬉しい」。この「疑念」という言葉に、レース勘の欠如に対する懸念が滲み出ている。

だが、彼は高地合宿という現代ロードレースの「定石」を選んだ。そして、「過去の経験から、このアプローチは自分に合っていることが分かっている」と付け加えた。これは単なる流行に乗ったわけではなく、彼自身の体と相談した上での選択なのだろう。エース不在のチームを背負う責任感と、自身のコンディションへの不安。その狭間で、彼は静かに闘志を燃やしているように見えた。

予測不能なジロ、グローブスの経験値

ジロ・デ・イタリアは、グランツールの中でも特に予測不能な展開が多いレースとして知られている。コース設定、気候、そして選手のコンディションが複雑に絡み合い、思わぬサプライズが起こるのが常だ。グローブス自身もその点を強調する。

「ジロは常にシーズン最大のレースの一つだ。僕はここでステージ優勝も経験しているし、何度か表彰台にも上っている」。彼の言葉には、このレースに対する敬意と、過去の実績に裏打ちされた自信が垣間見える。アルペシン・ドゥクーニンクは、マチュー・ファンデルプールやヤスペル・フィリプセンといったスーパースターが不在だが、グローブスには彼らを補って余りあるだけの経験と実力がある。

「ジロのステージはしばしば予測不能だ。様々な選手が勝利を掴むチャンスがあるし、逃げが決まる可能性もある。素晴らしいレースになることを願っているよ」。彼はそう語ったが、その目は既に目の前の第1ステージを見据えている。チームのエースとして、まずは彼が結果を出すことが、チーム全体の士気を高める上で不可欠だからだ。

初日マリア・ローザへの現実的な可能性

さて、注目の第1ステージは、アルバニアの首都ティラナへと向かう丘陵コースだ。平坦な純粋スプリントとは異なり、アップダウンが勝負を分ける可能性がある。グローブスは、その速い脚に加えて、丘陵での走りに定評がある。だからこそ、この初日ステージでマリア・ローザ獲得の可能性が囁かれているのだ。

彼自身も、その可能性を否定しない。「可能だ」と彼は認める。しかし、すぐにただし書きを加えた。「小集団でのスプリントになるだろうと予想しているが、そればかりはまだ分からない。クライマーや総合勢のレース運び次第だろう」。なるほど、単にスプリンター同士の力勝負ではなく、総合勢が序盤から動く可能性も考慮に入れているわけだ。

このコースプロファイルを聞いて、日本のファンの中には、ワウト・ファンアールトやマッズ・ピーダスンといった選手を思い浮かべた人もいるのではないだろうか？ 彼らと同様に、グローブスもパンチャー寄りのスプリンターであり、丘陵への適性は高い。もし有力総合勢が牽制し合い、アタック合戦が繰り広げられた後に有力選手が絞られる展開になれば、まさに彼のようなタイプの選手にチャンスが巡ってくる。

アルペシン・ドゥクーニンクのメンバーリストを見ると、クインテン・ヘルマンスやファビオ・ファンデンボッセといった、グローブスをサポートできる力のある選手が揃っている。彼らがグローブスを理想的なポジションへ導けるかどうかも、初日の勝敗を分ける鍵となるだろう。

ピンクの夢、その行方は？

怪我からの復帰、レースから遠ざかっていたことへの不安、そして初日マリア・ローザへの静かな野心。カーデン・グローブスの言葉からは、様々な感情が読み取れた。アルペシン・ドゥクーニンクのエースとして、彼はプレッシャーを感じているだろう。しかし、ジロでの過去の成功体験が、彼を支えているはずだ。

ティラナのフィニッシュラインで、ピンクのジャージに袖を通すのは誰か？ グローブスはその有力候補の一人であることは間違いない。彼の走りはもちろん、アルペシン・ドゥクーニンクがどのような戦略で初日に臨むのか、そして他のチーム、例えばチーム ヴィスマ・リースアバイクや有力総合勢がどう動くのか。開幕前夜の緊張感は最高潮に達している。いよいよ始まるジロ・デ・イタリア2025、その最初の瞬間から目が離せない。