ジロ・デ・イタリアにストラーデ・ビアンケ名物グラベル登場

ジロ・デ・イタリアに「ストラーデ・ビアンケ」の悪魔がやってくる！

今年のジロ・デ・イタリアのコースが発表されたとき、私の目はあるステージのルートに釘付けになりました。それは第9ステージ、トスカーナ地方を舞台とするステージです。近年、ジロのオーガナイザーはグラベル区間を積極的に取り入れていますが、今回は特に強烈なセクションが登場します。そう、あの「ストラーデ・ビアンケ」でお馴染みの、選手たちを苦しめるグラベル区間が、ついにジロに組み込まれるのです。

最も注目すべきは、「San Martino in Grania」という名のグラベルセクション。この名前を聞いて、「おや？」と思った方もいるのではないでしょうか。まさに、春先のクラシックレースとして人気を博すストラーデ・ビアンケの、あの名物区間です。シエナ南東のクレテ・セネージと呼ばれる、独特の浸食地形が広がる美しい丘陵地帯に位置するこの道は、絵になる風景とは裏腹に、選手たちの体力を根こそぎ奪っていく悪魔のような存在なのです。

見た目とプロフィールのギャップに騙されるな

San Martino in Graniaは、その長さが約9.5キロメートル。一見すると、グランツールの一級山岳に比べれば大したことのない距離に見えるかもしれません。しかし、この区間の本当の恐ろしさは、距離ではなくその「プロフィールの質」にあります。

この約10キロメートルの間に、なんと290メートルもの獲得標高を稼ぐのです。しかも、これは一気に登るわけではありません。細かいアップダウンが絶え間なく続くのです。登りかと思えばすぐに下り、またすぐに急勾配の登りが現れる。最大勾配は12%にも達し、グラベルの上りでこの勾配は本当に脚に堪えます。平坦な区間が一切ない。これが、このSan Martino in Graniaがストラーデ・ビアンケで最高難易度の「5つ星」評価を受けている所以です。

ジロでの影響は計り知れない

ジロ・デ・イタリアの第9ステージでは、このSan Martino in Graniaはグラベル区間の3つ目として登場します。しかも、この区間を終えても、フィニッシュまではまだ約35キロメートルもの起伏に富んだトスカーナの道が続きます。

ストラーデ・ビアンケでは、このSan Martino in Graniaで集団がバラバラになり、有力選手たちが絞り込まれることが多々あります。ジロでも同様の展開が予想されます。常に変化する勾配と路面状況は、集団をあっという間に縦長にし、少しでも集中力を欠いたり、ラインを間違えたりすれば、落車やメカトラのリスクが跳ね上がります。まさに消耗戦。脚のある選手はここで一気に差をつけたいところでしょうが、無理をすれば後半に響く。駆け引きとリスクマネジメントが重要になります。

古くからサイクルロードレースの世界で語り継がれる格言があります。「そこでレースに勝つことはできないが、そこでレースを失うことはある」。まさにSan Martino in Graniaは、そんな区間なのです。ここで遅れをとれば、ジロの総合優勝争いから脱落する可能性も十分にあります。逆に、ここでアタックを決めてライバルにダメージを与えられれば、その後の展開を有利に進められるかもしれません。

第9ステージは、このSan Martino in Graniaを筆頭とするグラベル区間によって、間違いなく大会全体を左右する可能性を秘めた一日となるでしょう。果たして、どのチームが、どの選手が、この難所を攻略し、マリア・ローザへの望みを繋ぐのか。今から待ちきれませんね。