ダミアーノ・カルーゾ、最後のジロへ「地元は特別」

【山田健一コラム】ベテランが見据えるジロの厳しさと、歴史を塗り替える王者の選択

皆さん、こんにちは。グランツールを中心に取材を続ける山田健一です。

今回は、イタリアのベテラン、ダミアーノ・カルーゾへのインタビュー記事と、タデイ・ポガチャルの圧倒的な2024年シーズン、そして2025年のカレンダー変更に関する記事を読み解きながら、サイクルロードレース界の今、そしてこれからについて、私の視点からお話ししたいと思います。特に、最重要指示として、記事中に含まれる選手名やチーム名は、入力テキストの表記を一切変更せず、そのまま使用します。これは、現地で取材する上で、選手たちの名前を正確に、敬意を持って扱うことと同じくらい重要なことだと考えているからです。

ベテランの眼差し - ダミアーノ・カルーゾが語るジロ

まず、ベテランのダミアーノ・カルーゾが語るジロ・デ・イタリアについてです。彼は2021年のジロで総合2位に入り、ステージ優勝経験もある、まさに「ジロを知る男」。その彼が語る2024年のジロコースは、やはり厳しさが際立っていたようですね。序盤から挑戦的で、特にトスカーナの未舗装路「ストラーティ」を含むステージや、山岳、そしてタイムトライアル。そして終盤のアルプス山脈。彼はどこか特定のステージで決まるというより、「3週間のどこでも、勝ちも負けもあり得る」と語っています。これはグランツール取材を長く続ける私自身も、肌で感じることです。ちょっとした油断や、あるいは不運が、簡単に総合順位をひっくり返す。特にジロは、ツール・ド・フランスに比べて気候の変化が激しいことで知られています。「美しい春もあれば、悪天候に見舞われることもある」という彼の言葉は、まさにジロのリアリティを突いています。

イタリア人選手の優勝が2016年以来ないことについても触れていますね。彼が期待を寄せるのは、アントニオ・ティベーリ。彼はアントニオ・ティベーリがグランツールで勝てるレベルにあることを示しているとし、今年のジロでの現実的な目標はトップ3だと見ています。「私自身が2021年のジロでイタリア人として最後にグランツールの表彰台に上った」という言葉に、彼自身の誇りと、後進への期待が込められているのが分かります。一方で、彼が名前を挙げたイタリア人選手はアントニオ・ティベーリ一人だけだったというのは、現在のイタリアロードレース界の厳しさも示唆しているのかもしれません。

また、ミケル・ランダの好調についても言及しています。彼はミケル・ランダの「大ファンであり、友人」だそうで、新しいチームで刺激を見つけたことが好調の要因だと分析しています。「データと数字で、まだこのサイクル界で言うべきことがあることを証明した」という言葉は、彼が単なる感覚だけでなく、選手たちのパフォーマンスデータにも注目していることを示しています。

そして、彼にとってジロが特別なレースであること。「子供の頃、父とテレビで見て、プロになることを夢見たレース」「大人になってその夢を叶え、ステージ優勝し、表彰台にも上った」という言葉からは、ジロへの深い愛情と、自身のキャリアにおけるその存在の大きさが伝わってきます。母国イタリアで、イタリアの観客の声援を受けながら走る喜び。これは、他のどのレースとも比べられない、特別なモチベーションになるのでしょうね。

フアン・アユソへの評価と「ポガチャル問題」

スペインの専門家がフアン・アユソをジロの優勝候補に挙げていることについて、カルーゾは「正しい見方だ」と同意しています。彼はフアン・アユソを「非凡な才能」「例外的な数字を出している」「賢い青年」と高く評価し、ローマで表彰台に上ることは「ノーマルなこと」だとまで言っています。順位は分からないとしつつも、優勝候補の一人であることは間違いない、と断言しています。若くしてこれほどの評価を得るフアン・アユソ。彼の今後のキャリアからも目が離せません。

そして、避けられない話題、タデイ・ポガチャルについてです。彼がレースを「退屈にしているか」という問いに対し、カルーゾは「そうは思わない」と答えています。「ポガチャルは単に自分の仕事をしているだけ。彼にとって勝つのは自然なことだ」という言葉は、王者の強さを端的に表現しています。彼はポガチャルがいるレースでは、90%の確率でポガチャルが勝つと見ていますが、観客にとっては「退屈」ではない例としてストラーデ・ビアンケを挙げています。落車しても立ち上がり、再びアタックする姿は、確かに観客に大きな感動を与えました。しかし、「選手にとってはもっと問題だ。集団にいる我々は、ポガチャルがいると、まず彼が勝つだろうと分かっている」という言葉には、王者と戦う選手たちの厳しい現実が滲み出ています。圧倒的な強さを持つ選手がいることは、レースの展開をある意味で予測可能にするかもしれませんが、同時に、その王者に挑む他の選手たちの戦いをより際立たせる側面もある。この「退屈さ」論争は、サイクルロードレースが常に抱える難しいテーマの一つですね。

イエローカード制度やスーパーリーグ構想についても聞かれていますが、カルーゾはイエローカードには実験として賛成しつつ、スーパーリーグについては「あまり知らない」「興味がない」と正直に答えています。ベテラン選手らしい、地に足の着いたコメントだと感じました。彼の今後のカレンダーは、ジロ、ブエルタ・ア・ブルゴス・ブルペレット・BH、ブエルタ・ア・エスパーニャ、そしてイル・ロンバルディア。そして気になるのが、2025年での引退を示唆していること。「今のところ考えは変わっていない」としつつも、「何か例外的なことがあれば変わるかも」と含みを持たせています。彼のような経験豊富なベテランが一人、また一人と去っていくのは寂しいものですが、彼が決めた道であれば応援したいですね。

歴史を塗り替えた男 - ポガチャル2024と未来

さて、記事の後半は、2024年シーズンにサイクルロードレース界の歴史を塗り替えた男、タデイ・ポガチャルについてです。彼の2024年ジロ・デ・イタリアでのパフォーマンスは、まさに圧倒的でした。初出場で総合優勝、しかも第2ステージのサントゥアリオ・ディ・オローパでマリアローザを獲得して以来、最終日まで一度も手放さなかった。ステージ勝利数も6勝（オローパ、ペルージャTT、プラティ・ディ・ティーヴォ、リヴィーニョ、モンテ・パーナ、モンテ・グラッパ）と群を抜いており、山岳賞も獲得。総合2位のダニエル・マルティネスに9分56秒、3位のゲラント・トーマスに10分以上の大差をつけた勝利は、1965年以降のジロで最大のタイム差だそうです。

さらに驚くべきは、彼が2024年にジロ、ツール・ド・フランス、そして世界選手権ロードを制し、「トリプルクラウン」を達成したこと。これはエディ・メルクスとステファン・ロシュしか成し遂げていない、まさに伝説級の偉業です。26歳にして、これほどの記録を積み上げているポガチャル。彼の強さは、もはや常識を超えていると言っても過言ではないでしょう。

そして、記事の最後で触れられているのが、2025年のカレンダー変更です。圧倒的な強さでジロを制した彼が、翌年のジロには出場せず、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに焦点を当てるというのです。これは、彼が新たな挑戦を求めていること、そして、単なる勝利だけでなく、サイクルロードレースの歴史にさらに深く名を刻むことを目指していることの表れでしょう。ジロにとっては、王者の不在は少し寂しいかもしれませんが、他の選手たちにとっては大きなチャンスとなります。そして、ツールやブエルタでは、彼に挑むライバルたちとの新たなドラマが生まれるはずです。

タデイ・ポガチャルの挑戦は続きます。そして、ダミアーノ・カルーゾのようなベテランが語る言葉には、レースの真髄や選手たちの思いが詰まっています。サイクルロードレースは、単に速さを競うだけでなく、選手たちの人生、戦略、そして歴史が intertwined（絡み合った）スポーツ。これからも、彼らの走りと言葉に耳を傾け、この奥深い世界を皆さんにお届けしていきたいと思います。